首都大学東京(学長: 原島 文雄)、(独)物質・材料研究機構(理事長: 潮田 資勝)、(独)産業技術総合研究所(理事長: 野間口 有)、電気通信大学(学長: 梶谷 誠)の研究チームは、ビスマス(Bi)と硫黄(S)を主成分とした新しい層状超伝導物質系(Bi4O4S3およびLaO1-xFxBiS2)を発見した。
共通の特徴として、ビスマスと硫黄が二次元的に結合したBiS2層(超伝導状態が発現する層)とブロック層が交互に積層した結晶構造を持つ。さらに、比較的高い超伝導転移温度Tc = 10.6 Kを観測している。このような層状構造は銅酸化物高温超伝導物質系や鉄系超伝導物質系と非常に類似しており、今後BiS2超伝導層を基本とした新たな物質が開拓され、高温超伝導機構解明の一つの鍵となることが期待される。
層状化合物は、二次元的な層状(シート状)の結晶構造を持つ物質である。異なる種類の層を積層させることで、様々な物質をデザインすることができる。さらに、二次元的な結晶構造は低次元的な電子状態を生じさせるため、高温超伝導(1)などの特異な量子現象の舞台としてさかんに研究されてきた。最も高い超伝導転移温度(Tc)(2)を持つ銅酸化物高温超伝導物質系では、銅と酸素が作るCuO2面が共通の層状構造として存在し、高温超伝導発現の鍵となった。同様に、2008年に発見された鉄系超伝導物質系では鉄とヒ素が結合したFe2As2層が高温超伝導発現の鍵となった。これらの高温超伝導体は“超伝導状態が発現する層”と“ブロック層(3)”が積層した結晶構造を持っている。
なお、この研究開発は、(独)科学技術振興機構の戦略的国際共同研究プログラム「日本-EU共同研究」および(独)日本学術振興会の科学研究費補助金の助成を受けて行われた。
今回、我々はビスマス(Bi)と硫黄(S)を主成分とした新しい層状超伝導物質系(Bi4O4S3およびLaO1-xFxBiS2)を発見した。粉末X線回折実験とリートベルト解析(4)の結果、共通の特徴として、ビスマスと硫黄が二次元的に結合したBiS2層(超伝導状態が発現する層)とブロック層が交互に積層した結晶構造を持つことが明らかになった(図1)。
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図1.
Bi4O4S3およびLaOBiS2の結晶構造。実際のBi4O4S3結晶構造はSO4サイトが50 %欠損していると予想される。 |
今回発見した超伝導物質系は、Bi3+の絶縁体(5)(母相)に電子キャリアが入ることにより金属的な伝導を示すようになり、低温で超伝導転移を示す。LaOBiS2(母相)は絶縁体だが、OサイトのF部分置換により電子キャリアがBiS2層にドープされ、超伝導状態が発現する。Bi4O4S3系ではSO4イオンの部分欠損により、電子キャリアがBiS2層にドープされている。バンド計算(6)の結果、BiS2層のBi-6p軌道の電子が超伝導発現に大きく寄与していることが示された。超伝導転移温度は、Bi4O4S3が約5 K(7)、LaO0.5F0.5BiS2が約10.6 K(図2)であり、ブロック層の構造を変化させることで上昇する。
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図2.
LaO0.5F0.5BiS2の電気抵抗率の温度依存性(磁場中:0 T - 5 T)。0 Tの条件においては10.6 K以下で超伝導状態発現に伴う電気抵抗率の減少が観測され、約8 Kでゼロ抵抗状態が実現している。
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BiS2超伝導層を基本とした新超伝導物質が多く発見され、さらに高い超伝導転移温度を持つ物質の発見が期待される。また、BiS2層における超伝導発現メカニズムを解明することにより、今後の超伝導物質探索に新たな指針を与えるとともに、高温超伝導機構のさらなる解明が期待される。