科学技術振興機構(JST)、医薬基盤研究所(NIBIO)、農業生物資源研究所(NIAS)、産業技術総合研究所(AIST)は、内閣府総合科学技術会議の議論を受けて平成23年12月12日(月)に文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省が取り組む生命科学系データベースの統合化の方針や成果を紹介する合同ポータルサイト「integbio.jp」(インテグバイオ)を共同で開設しました。
生命科学におけるデータベースは、例えばiPS細胞作製の成功には遺伝子データベースの情報が不可欠であったように、研究のインフラとして世界中で活発に開発、利用されています。その結果、現在では多数のデータベースが乱立しており、それを使いやすくするための統合化が重要な課題となっています。日本でも、生命科学に関係した各省で統合化に向けた取り組みが平成18年頃から始まりました。当初は各省で独自に進めていたデータベースの統合化をオールジャパンの体制で進めるために、内閣府の主導のもと各省の協力体制を構築して、平成23年度からは4つのステップ(カタログ、横断検索、アーカイブ、再構築)に沿って進めています。
最初のステップ「カタログ」は、データベース単位のリンク集です。しかしリンクだけでは、ユーザーはデータベースごとに検索しなければなりません。「横断検索」は、複数のデータベースの中身を一括してキーワード検索するものです。これにより、ユーザーは1つの窓口から入ってデータベースを検索できるようになります。「アーカイブ」は、データベースのフォーマットの統一と権利関係の整理などにより、データベースのダウンロードと再利用を可能にするものです。「再構築」は、複数のデータベースが有機的に組み合わされることによって、「横断検索」よりもさらに高度な検索、例えば「ヒトのあるタンパク質に結合する低分子を花粉に含む植物」のような検索をユーザーが行えるものです。この「再構築」では、情報技術や計算機資源、データを整理する手間などの問題に加えて、データベースを改変する権限の有無も問題となるため、これらを1つずつ解決していく必要があります。
合同ポータルサイトでは、4省が協調・連携して取り組んでいる「カタログ」、「横断検索」、「アーカイブ」の方針と成果についてまとめています。また、データベースの統合化に関するシンポジウムや講習会、展示会の情報を発信して、この取り組みに対する研究コミュニティーの関心や理解が深まるよう努めていきます。これにより、今まで4省で独自に進められてきたデータベースへの取り組みが1つにまとまり促進されると期待されます。
ポータルサイトURL:http://integbio.jp/
1.背景
現代の情報社会でデータベースは、住所録から銀行の取引まであらゆる分野で作られ、積極的に活用されています。生命科学においても、データベースは研究に不可欠なインフラとして世界中で活発に開発、利用されています。その結果、現在では多数のデータベースが乱立しており、それを使いやすくするための統合化が重要な課題となっています。日本では、第3期科学技術基本計画(平成18年3月28日閣議決定)に基づいて総合科学技術会議が策定した、ライフサイエンス分野の推進戦略における戦略重点技術の1つとして「世界最高水準のライフサイエンス基盤整備」が掲げられました。また、科学技術連携施策群「生命科学の基礎・基盤」補完的課題「生命科学データベース統合に関する調査研究」注1)の報告を受けて、生命科学に関係した文部科学省、農林水産省、経済産業省では、統合化に向けた取り組み注2)が、平成18年頃から平成22年度まで実施されました。これらの取り組みは、当初は各省で独自に進めていました。しかし、データベースの統合化をオールジャパンの体制で進めるために、内閣府総合科学技術会議のもとに統合データベースタスクフォース(座長:五條堀 孝 国立遺伝学研究所 副所長)が設置され、平成21年5月に報告書がまとめられました。そこで示された方針をもとに、省の協力体制を構築して、平成23年度より4つのステップ(カタログ、横断検索、アーカイブ、再構築)を統合データベースタスクフォース報告書に示されたロードマップに沿って進めています(図1)。
2.内容
今回、JSTバイオサイエンスデータベースセンター、NIBIOバイオインフォマティクスプロジェクト、NIAS農業生物先端ゲノム研究センター、およびAISTバイオメディシナル情報研究センターは、4省の生命科学系データベース合同ポータルサイトを開設しました。合同ポータルサイトでは、4省が協調・連携して取り組んでいる「カタログ」、「横断検索」、「アーカイブ」の方針と成果についてまとめています(図2)。
その他にもデータベースの統合化に関するシンポジウムや講習会、展示会などを、イベントカレンダーを用いて紹介しています。このような公開イベントの情報を発信して、データベースの統合化に対する研究コミュニティーの関心や理解が深まるよう努めていきます。
3.今後の展開
今後もJSTバイオサイエンスデータベースセンター、NIBIOバイオインフォマティクスプロジェクト、NIAS農業生物先端ゲノム研究センター、AISTバイオメディシナル情報研究センターは、内閣府総合科学技術会議の示す方針に従い、合同ポータルサイトの内容を充実させ、4省が協調・連携して取り組んでいる「カタログ」、「横断検索」、「アーカイブ」をさらに進めます。このような連携により、将来的には「再構築」が達成され、日本のデータベースが統合化されいっそう使いやすくなることが期待されます。本ポータルサイトは、平成23年度に開始した、JST「ライフサイエンスデータベース統合推進事業」、農林水産省「画期的な農畜産物作出のためのゲノム情報データベースの整備」、経済産業省「ライフサイエンスデータベースプロジェクト」の支援を受けています。
なお、平成23年5月に総合科学技術会議統合データベース推進タスクフォース(座長:郷 通子 長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部 特別客員教授)が開催され、その場において、今後も総合科学技術会議において平成26年度以降のデータベース統合の推進のあり方について検討することが確認されています。
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図1:データベース統合化の4つのステップ |
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図2:4省の生命科学系データベース合同ポータルサイトのトップページ |