独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)霧島火山緊急調査対策本部【本部長 栗本 史雄】は、霧島山新燃岳で噴出した軽石を現地調査で採取し、その組成を分析した結果、SiO2量約57%の輝石安山岩マグマが今回の噴火を引き起こしていることを明らかにした。
今回噴出しているマグマは、前回の大規模な噴火を起こした1716-17年噴火のマグマと類似したものである。
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写真1 霧島山新燃岳1月26日夕~27日朝に噴出した軽石。
右下の3粒を化学組成分析に用いた。
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2008年8月22日に水蒸気噴火が発生した霧島山新燃岳では、その後も小規模な水蒸気噴火を繰り返していたが、2011年1月19日にマグマ水蒸気噴火が発生、26日午後からはより規模の大きな噴火を続け、周辺地域に多量の火山灰が降下するなど被害が深刻化しつつある。産総研では諸機関と協力し、噴火活動推移把握のための調査を継続している。
産総研では、霧島山新燃岳噴火に対して現地調査チームを派遣し、2011年1月26日夕~27日朝にかけて噴出・降下した軽石を採取した(写真1)。試料の採取に当たっては、関係自治体、気象庁現地調査チームのご協力を頂いた。これらの軽石は、現在継続している新燃岳の噴火を引き起こしているマグマが固結したものである。採取した試料は、産総研地質調査総合センター(茨城県つくば市)で分析を開始している。
解析の結果、これらの軽石は、輝石安山岩質の軽石であり、その全岩化学組成はSiO2 = 約57%であることが判明した。
同時に、江戸時代の大規模な噴火である1716-17年噴火の噴出物の解析を行った結果、1716-17 年噴出物の組成は、より広いバリエーションを持つものの、基本的には今回の26日夕~27日の噴出物の組成とよく似た特徴を持つことが明らかになった(図)。
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図 2011年1月26-27日に噴出した軽石(赤印)の組成。1716-17年の噴出物の組成(青印)を合わせて示す。1716-17年噴出物にはややSiO2含有量の高い軽石が少量含まれるが、その大部分は今回の軽石の組成とほぼ同じである。
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産総研では、気象庁等の関係諸機関との協力のもと、引き続き現地調査及び噴出物の解析を行い、噴火活動の把握と推移予測に向けた地質情報の発信をする予定である。