独立行政法人防災科学技術研究所(研究代表機関、理事長:岡田義光)と独立行政法人産業技術総合研究所(理事長:野間口有) は、科学技術振興調整費重要課題解決型研究「統合化地下構造データベースの構築」の一環として、ボーリングデータの電子化促進を目指した6つのソフトウェアからなるボーリングデータ処理システム(
Windows対応)を公開しました。下記のサイトから6つのソフトウェアをダウンロードすることができます。
独立行政法人防災科学技術研究所
( URL:http://www.geo-stn.bosai.go.jp/software/boring/index.html )
(1)ボーリング柱状図表示システム
(2)ボーリングデータ品質確認システム
独立行政法人産業技術総合研究所
( URL:https://gbank.gsj.jp/kantosubsurfacegeoDB/download/top.html )
(3)ボーリング柱状図入力システム
(4)ボーリング柱状図土質名変換システム
(5)ボーリングデータバージョン変換システム
(6)ボーリング柱状図解析システム
独立行政法人防災科学技術研究所(研究代表機関、理事長: 岡田義光)と独立行政法人産業技術総合研究所(理事長:野間口有) は、科学技術振興調整費重要課題解決型研究「統合化地下構造データベースの構築」の一環として、公共的な役割をもつ国土の地下地質・地盤情報であるボーリングデータの電子化と利活用の促進を目指したデータ処理システムを公開しました。
ボーリングデータは建築・土木事業において不可欠な地盤情報であり、ボーリング調査により、毎年、大量のデータが生成されています。また、国土の地下地質・地盤情報として極めて有用なため、地震防災の観点からも、ボーリングデータが公共に役立つ財産として利用可能な状態で保存されることが重要です。
しかし、現状のボーリングデータは、別々の機関に紙資料の形で分散して保存されている場合が多く、法律的な保護の仕組みもないため散逸の恐れがあります。ボーリングデータの主な保有機関は地方自治体ですが、ボーリングデータの保存やその公開に取り組んでいる地方自治体はそれほど多くありません。その原因には、自治体の予算や人員が乏しいという背景に加えて、ボーリングデータを電子化し、それを利用するために必要な一連の機能を有する無料または安価なソフトウェアがないことがあげられます。現在、ボーリングデータの電子ファイル形式は、国土交通省の「地質・土質調査成果電子納品要領(案)」にあるボーリング交換用データ(※2)(XML形式(※3))の形式が国内標準として広く利用されています。そこで、防災科学技術研究所と産業技術総合研究所では、紙資料のボーリングデータをボーリング交換用データの形式で電子化し、それを利用するためのボーリングデータ処理システムを開発しました。
平成19年度に地方自治体に実施したアンケート調査によると、多くの地方自治体ではボーリングデータが整理されておらず、データを整理していると回答した地方自治体においてもその大部分は紙資料での整理で、電子化を進めている地方自治体は非常に少ないことがわかりました。地方自治体では、紙資料を保管するスペースに余裕がないため、常に利用できるように整理しておくことはとても困難です。また、公文書には保存期間が定められていることから、その保存期間が経過すると利用されない紙資料は廃棄されかねません。これらの問題を解決するためには、紙資料が廃棄される前に、ボーリングデータを電子化して保存することが必須です。
地方自治体でボーリングデータの電子化が進まない理由として、紙資料のボーリングデータを電子化するための設備や人材を確保できないことが指摘されています。また、地方自治体が発注する事業において地質・土質調査成果を納品させる際、必要な設備や人材が十分でない中小の地質調査会社には電子納品を課しにくいという問題があります。これらの問題は、容易に入手、利用できるボーリングデータ処理システムを公開・普及することで、解決されるものと期待されます。
防災科学技術研究所は、ボーリング交換用データから各種様式のボーリング柱状図(
※4)を表示する「ボーリング柱状図表示システム」、ボーリング交換用データの形式が正しいかどうかチェックする「ボーリングデータ品質確認システム」の開発を担当しました。
また、産業技術総合研究所は、ボーリング交換用データを作成する「ボーリング柱状図入力システム」、ボーリング柱状図の土質名の規格化とコード化を行う「ボーリング柱状図土質名変換システム」、ボーリング柱状図の断面図表示と地下地質・地盤構造モデルの解析を行う「ボーリング柱状図解析システム」の開発を担当しました。
なお、ボーリング交換用データのバージョンを最新のバージョンに変換する「ボーリングデータバージョン変換システム」については、防災科学技術研究所と産業技術総合研究所が共同で開発しました。
【システムの構成】
○ 入力・編集機能
ボーリング柱状図入力システム(産業技術総合研究所)
ボーリング柱状図土質名変換システム(産業技術総合研究所)
ボーリングデータバージョン変換システム(防災科学技術研究所、産業技術総合研究所)
○ 品質確認機能
ボーリングデータ品質確認システム(防災科学技術研究所)
○ 表示・解析機能
ボーリング柱状図表示システム(防災科学技術研究所)
ボーリング柱状図解析システム(産業技術総合研究所)
(1)ボーリング柱状図入力システムの表示例
ボーリング柱状図の情報をボーリング交換用データの形式で電子化できるソフトウェアです。入力・編集に便利な各種の支援機能がついています。
(2)ボーリング柱状図土質名変換システムの表示例
ボーリング柱状図の土質名について、国交省の「地質・土質調査成果電子納品要領(案)」で定義された名称と一致または一番近い名称になるように変換し、それに対応したコードを追記します。
(3)ボーリングデータバージョン変換システムの表示例
ボーリング交換用データのバージョン変換を行うソフトウェアです。
(4)ボーリングデータ品質確認システムの表示例
ボーリング交換用データの形式が正しいかどうかをチェックすることができるソフトウェアです。編集機能によりエラー箇所の修正や保存をすることもできます。
(5)ボーリング柱状図表示システムの表示例
ボーリング交換用データから各種様式のボーリング柱状図表示ができるソフトウェアです。表示様式の編集機能、印刷やPDFへの出力機能もあります。
(6)ボーリング柱状図解析システムの表示例
登録した各ボーリング柱状図の位置を平面図に表示し、任意の断面線の作成とそれに沿った地質断面図の作成、地層境界の区分と対比(地質的解釈)を行うことができるソフトウェアです。地形断面の描写や数値地形図を読み込む機能などがあります。
ボーリングデータの入力・編集・品質・表示・処理の基本ツールであるボーリングデータ処理システムの公開により、地方自治体等のボーリングデータの電子化・公開・流通を促進させるとともに、ボーリングデータを利用した地質・地盤工学・地震動分野における研究やそれに関係するビジネスの進展が期待されます。
また、こうした状況は、相乗効果により、高密度で質の高いボーリングデータの公開やそれらボーリングデータに基づいた高精度な地盤モデルが公開されることになり、地震防災をはじめ都市地盤整備や環境保全対策に役立つものと期待されます。