鹿島建設株式会社【代表取締役社長 中村 満義】(以下「鹿島」という)と独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)グリッド研究センター【センター長 関口 智嗣】は、鹿島内の技術計算用コンピュータの効率的かつ高度な利用を促進するために、産総研が開発したGridASPTMの導入と利用技術に関する共同研究を2006年4月から開始しました。
本共同研究は、鹿島が2005年9月に「秋葉原クロスフィールド」内に設置した研究拠点「秋葉原サテライトラボ」における産学連携により実現したものです。
本格的なグリット環境を企業内に実現したのは、建設業界では初となります。また、産総研の開発したGridASPを企業内グリッドポータルへ適用した初めての事例となります。
鹿島では、スーパーコンピュータなどを利用して超高層建物や土木構造物に関する技術的な解析を行っています。近年、制震構造、免震構造の建物が多くなるとともに、環境に配慮した自然換気システムの積極導入などもあり、コンピュータによる解析は、年々その重要性が増しています。また、解析内容も複雑化、大規模化が進んでいます。
そのような中、非常に大きなコンピュータ・パワーを必要とする計算が多くなり、社内の技術計算用コンピュータ資源(計算資源やディスク資源など)を効率的に利用するグリット環境の構築が強く求められるようになっています。
一方、産総研では、スーパーコンピュータなどの様々なリソースを仮想化するグリッド技術の研究開発と産業界における実用化に積極的に取り組んでいます。特に、ビジネス分野における技術計算の実行サービスを、リソース提供者、アプリケーション提供者およびそれらとユーザを結ぶポータル事業者が連携し、ユーティリティサービスとして実現するビジネスモデルGridASPを提案してきました。
このたび鹿島の技術計算環境にGridASPを導入して、企業内グリッドポータルを構築し本格的なグリット環境を鹿島内に実現します。この共同研究では、企業内グリッドポータルを通じてコンピュータ資源の利用性の向上と解析環境整備を目指す計画で、GridASPにおけるリソース提供者、アプリケーション提供者及びそれらとユーザを結ぶポータル事業者の三層構造を、それぞれコンピュータ管理者、ソフトウェア開発者及びIT担当者という形で一企業内に当てはめ運用します。構築に当たっては産総研が開発したGridASP Toolkitを使用し、鹿島が現在保有するコンピュータ群(日立製作所製SR11000、HA8000およびNEC製SX-8)でグリッド環境を形成した後、当面はHA8000を対象としたグリッドポータルを構築します。
これにより、社内の技術計算用コンピュータ資源(計算資源やディスク資源など)を効率的に利用できる環境が整備され、大量化・複雑化・大規模化する超高層建物や土木構造物に関する解析業務に対応することができます。また、解析状況の確認などが分かりやすく表示されるようになり、ユーザ利用性が飛躍的に向上します。
今後、鹿島では、さらに解析技術の高度化を図るとともに、本研究で得られた環境において、技術計算用コンピュータ資源をより効率的に運用していくモデルを構築していく考えです。また、投資の極小化と業務効率の最大化を図るために、今後は企業外コンピュータ資源の活用も視野に入れていきます。
また、産総研では、今回鹿島内に導入されたグリッドポータルの運用状況や効果に関する情報に基づき、
GridASP Toolkitによる企業内グリッドポータルのモデルや構築手法の改善を進める予定です。また、企業内グリッドポータルと企業外コンピュータ資源へアクセスするポータルとの融合を進め、より柔軟な解析環境の提供を目指します。