株式会社KDDI研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:浅見 徹)と、独立行政法人 産業技術総合研究所(東京本部:東京都千代田区、理事長:吉川 弘之)デジタルヒューマン研究センターは、ユーザの気分や状況も含めて総合的に嗜好を推定する方式を開発し、最適なコンテンツを推薦するシステムのプロトタイプの共同開発を行いました。
例えば映画鑑賞の場合、家族と観るか恋人と観るか、気分が良いか沈んでいるか等、気分や状況に応じてユーザの嗜好は変化します。しかし、これまでのユーザの履歴情報やプロフィールに基づく方法では、嗜好の状況依存性を反映することができないため、ユーザがどんな状況でも同じ結果となってしまいます。一方、場所などの状況に基づいて推薦候補を絞りこむ方法もありますが、嗜好の個人差を反映できないために、どのユーザにも同じコンテンツが推薦されてしまいます。
そこで、KDDI研究所と産業技術総合研究所が共同で、ユーザのプロフィール、利用履歴、気分や状況などの相互関係をベイジアンネット(参考)で表現し、ユーザの嗜好を推定する新たな方式を開発しました。なお、プロトタイプシステムの実装では、産業技術総合研究所が開発したベイジアンネット構築用ソフトウェアおよびノウハウを活用し、KDDI研究所が個人差と状況の両方に応じた最適なコンテンツや商品の推薦を行うシステムを実現しました。
これにより、恋人と映画館で手に汗握るなどの条件でその人にぴったり合った映画が推薦されます。
今後はさまざまな商品やユーザプロフィール、および状況での推薦精度の確認や大規模ユーザを想定した処理性能の向上を進め、実用化する予定です。
(参考)ベイジアンネットは、データ間の相互関係をグラフィックで表現したモデルで、1)データ間の複雑な関係を表現できる、2)データの不足や偏りに強い、という特長を持っています。下図はベイジアンネットによる映画嗜好モデルの例で、ユーザのプロフィール、状況、コンテンツ情報、ユーザのコンテンツに対する感じ方、ユーザがコンテンツを好む確率の間の相互関係を表現しています。推薦を行う際には、その時点で観測できるデータ(性別:男性、誰と:一人で)からユーザのコンテンツを好む確率を予測しますが、ベイジアンネットの特長によりユーザに関する情報が部分的にしか得られない場合にも推薦を行うことが可能です。