独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)循環バイオマス研究ラボ【ラボ長 佐々木 義之】は、財団法人石炭利用総合センター【理事長 安藤 勝良】(以下「CCUJ」という)と共同でバイオマスのCO2吸収ガス化の実証に取り組み、10kg/日規模の連続装置で木材からCO2を含まないクリーンガスの生産に成功(水素濃度83%、メタン15%、生成量0.5Nm3/時)。連続処理に目処をつけることで本技術の実用化に道を拓く。
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これまでラボ規模のバッチ試験では成功していたものの、連続化が課題であった。
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CO2を含まないクリーンガスの連続生産は世界初。水素濃度80%以上も世界初。
今後、安定運転、長時間運転、最適化などに取り組み、実用化の目処を得る予定。
地球温暖化等の問題に対し、循環型社会、将来の水素社会に対応するため、再生可能資源であるバイオマスからの水素生産技術の開発が重要。CO2吸収ガス化はカルシウムをCO2吸収剤として用いた水蒸気ガス化であり、水素を主成分とするクリーンガスが生産できる技術として期待される。生物的手法と異なり、様々なバイオマスに適応可能であり反応速度も速い。海外(ドイツなど)でも同様な手法が開発されているが、CO2を完全に吸収できないため、水素濃度が70~80%以下であった。
CO2吸収ガス化は産総研とCCUJが共同で見出した日本の技術であり、石炭利用CO2回収型水素製造技術(HyPr-RING)の開発を進めてきた。平成14年度から経済産業省の補助金を得て「バイオマスからのクリーンガス生産」プロジェクトを開始し、10kg/日規模のベンチスケール連続装置を設計、試作した。これまでラボ規模でのバッチ試験では成功していたが、実用化のためには連続化が課題であった。今回、本装置を用いての連続運転を行い、CO2を含まないクリーンガスの連続生産に成功。プロジェクトには広島大学、中国電力株式会社も参加している。
プロジェクトの目的は、(1)ベンチスケール連続装置の製作、運転を行い、実用化の技術的目処を得ること、(2)プロセス設計、経済性評価と共に社会システムの検討を行い、実用化における経済的目処を得ることである。(1)は主に産総研とCCUJが担当し、(2)は主に広島大学と中国電力が担当。
今後さらに、安定運転、長時間運転、最適化などに取り組む予定。水素社会になれば、例えば製材工場の横にバイオマスからの水素ステーションをつくることが可能になる。