発表・掲載日:2004/05/25

車両総重量8t中大型DMEトラックなどのDME自動車研究開発成果


概要

 コープ低公害車開発株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:馬場昭夫)、独立行政法人産業技術総合研究所(本部:東京都千代田区 理事長:吉川弘之)、伊藤忠エネクス株式会社(本社:東京都目黒区、代表取締役社長:山田清實)、JFEホールディングス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:下垣内洋一)、三菱ガス化学株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小高英紀)、伊藤忠商事株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:丹羽宇一郎)、岩谷産業株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:牧野明次)、福山通運株式会社(本社:広島県福山市、代表取締役社長:小丸成洋)、株式会社コモテック(本社:埼玉県戸田市、代表取締役社長:小森正憲)、株式会社小野測器(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:小野雅道)は、硫黄酸化物やすすを全く発生せず、窒素酸化物の発生量も削減しやすい等環境負荷が小さく、クリーンなエネルギーであるDMEを燃料に用いたDME自動車に関する研究開発を進め、実証的な研究開発に取り組み、成果を得ております。

 本研究開発は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(旧石油公団)の公募事業「石油・天然ガス開発・利用促進型特別研究」に応募受託した以下の3テーマにより実施いたしております。

  • 「レトロフィット(注2)対応DME(注3)ディーゼル自動車の早期実用化研究開発」(平成13~14年)
  • 「中大型DME自動車の実用化研究開発」(平成14年~15年)
  • 「DME自動車の実用化フリート試験研究開発」(平成15~16年)
 注1) 車両総重量:空車重量+積載重量+人員(2名×55kg)の合計重量。一般的には車両総重量の半分が最大積載重量であり、車両総重量が8トンの場合は一般的には4トンというが、荷物室をどのようなもの(冷凍室、保冷室、ドライバン、平台などで重量が異なる)にするかによって、最大積載重量が異なる。本車両の場合、3,300kgとなる。
 注2) レトロフィット:使用過程車の改造
 注3) DME:ジメチルエーテル、物性がLPGに類似している化学品。化学式は『CH3OCH3』で、溶解性があり、現在は化粧品や殺虫剤などの噴射剤として利用されている。DMEは硫黄酸化物やすすを全く発生せず、窒素酸化物の発生量も削減しやすい等環境負荷が小さく、ディーゼル自動車燃料、発電用燃料、LPガス代替燃料等の幅広い用途に使用可能なクリーンエネルギーである。

1.主な取り組みと成果

(1)DME自動車開発がステップアップしました。

  1. 排気ガスがクリーンで(熱効率が良く)、高出力な車両総重量8t中大型DMEトラック(以下、中大型DMEトラックと略記)を開発しました。
    今回開発した中大型DMEトラックは、新短期規制車(注1)と比較し大幅な改善ができました。これによりDME自動車の排気ガスのクリーン性を実証しました。
    また、この中大型DMEトラックの出力は、軽油の同エンジンと比較し低速域から高速域まで高出力が可能となり、DME自動車の実用性を実証しました。
  2. DME自動車構造取扱基準の調査と検討を実施しました。
    今後のDME自動車普及に必要となる、「DME自動車構造取扱基準(自主検討案。)」を調査、検討し、国土交通省に原案を参照提出しました。今後、実際に保安対策会議(注2)が設立される場合の原案として生かされます。
注1) 新短期規制車:大気汚染防止法により定められた排ガス規制値をクリアした初年度登録車。
注2) 保安対策会議:国土交通省が自動車構造取扱基準を作成する場合は、この会議の発足により進められる。

(2)フリート試験(走行試験)により実用性、耐久性を実証します。

  1. これまで試作されていたDME自動車のフリート走行実験を推進中です。
    トラック2台(JFE1台、産総研、三菱など1台(注1))、バス2台(いすゞ中型1台、三菱福祉マイクロ1台(注2))の試験走行により、DME自動車の燃料効率、実用性、耐久性が実証されつつあります。
  2. 今回開発した中大型DMEトラック(注3)の長距離フリート走行を開始します。
    この中大型DMEトラックは一充填の航続距離が600kmと、軽油と同等です。新潟-つくば(距離:約400km)、新潟-横浜(約400km)の長距離フリート試験を実施し、耐久性・実用性を実証していきます。
  3. 今秋、神奈川県京浜臨海部DME自動車普及モデル事業実行委員会(注4)と共同して、事業用DME自動車のモデルとして、さらに実用性の高いDMEトラック(注5)(1台)を導入し、実際の業務に使用予定です。
注1) 三菱トラック、注2)三菱福祉マイクロバス:これらのバスは、大臣特認(自動車取扱基準を持たない特殊車両がナンバー取得時に必要な国土交通省大臣の特別認可のこと)を取得し、走行中。
注3) 中大型DMEトラック:今後大臣特認を申請。
注4) 神奈川県京浜臨海部DME自動車普及モデル事業実行委員会:2002年「構造改革特別区域計画」の「DME普及モデル特区」として国から認定を受け、現在実行委員会にて本事業を推進中。神奈川県京浜臨海部は、DMEに関連する産業が集積しており、今後DME自動車の普及による地域産業活性化や、大気環境改善を目的として活動している。
注5) いすゞ中央研究所で本事業により製作する車両総重量6トン予定の新車両。


(3)実用的なDME自動車用インフラを開発・設置しました。

  1. 自動車用DME燃料の充填スタンドを4ケ所に設置中です。
    つくば市、横浜市には設置を終了し、新潟市、川崎市に本年設置予定です。
  2. DME自動車用燃料供給用としてローリー開発を行っています。
    DME充填スタンドやDME自動車燃料タンクに充填するための両用専用ローリーを開発中です。

2.エコカーワールド2004へDME車を2台出展します。

 今回開発された中大型DMEトラックと、現在川崎市で走行している中型DMEバスの2台を「エコカーワールド2004(低公害車フェア」に出展します。
「エコカーワールド2004(低公害車フェア) http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=4941

  1. 月日:6月5日(土)12:00~17:00 ~6日(日)10:00~16:00
  2. 場所:横浜市みなとみらい21赤レンガ倉庫 広場
       http://www.yokohama-akarenga.jp/
  3. 主催:環境省、独立行政法人 環境再生保全機構、横浜市

 DME自動車は、環境特性・実用性において高いポテンシャルを有しております。今後、DME自動車を導入、普及させることが早急に可能となるよう、総合的に活動を進めていきます。

DME自動車実用化研究開発の取り組み概要及び各社の役割

 DME自動車実用化研究開発は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(旧石油公団)公募事業「石油・天然ガス開発・利用促進型特別研究」に応募し、受託した3つのプロジェクトによって、進められてまいりました。

1.DME自動車実用化研究開発に取り組む背景と目的

 近年、ディーゼル車の環境対策が急務とされており、現状の解決策として、

  1. 軽油燃料の低硫黄化
  2. ディーゼルエンジン本体の改良
  3. 高度な後処理技術開発(注1)

以上3点の対策があげられます。しかしながら全てを解決するには、相当な技術とコストが必要となります。

 その代替措置として、高効率な内燃機関ディーゼルエンジンの利用と排気ガスをよりクリーンにする目的から、軽油と同じくセタン価(注2)の高いDME燃料の利用を研究し、実証試験を進めてきました。

注1) 後処理技術開発:ディーゼルエンジンの排気ガスクリーン化のため、エンジンからマフラーにかけて取り付ける装置技術(三元触媒、酸化触媒、DPF等)は開発途上であり、現状LPG・CNGと同程度にするには困難である。
注2) セタン価:着火性を表す指数。ディーゼルエンジンには、セタン価の高い(45から60)軽油・DMEなどが適する。

2.DME自動車開発の目標

 以上の背景からDME自動車実用化に取り組んできましたが、主な目標として

  1. ディーゼルエンジンに適したDME燃料の最適化(エンジンに馴染む添加剤の開発と混合比率)
  2. エンジンの最適化及び総合研究
  3. レトロフィット改造による車両設計製作
  4. DME自動車普及への施策(インフラの整備)

を掲げ、平成13年度より3つのプロジェクトを継投しつつ、これまで実施してまいりました。

3.実施プロジェクト内容

(1)「レトロフィット対応DMEディーゼル自動車の早期実用化研究開発」(平成13~14年)

  • 岩谷産業(株)は全体を統括し、燃料としての潤滑性を評価する試験機を製作し、市販の潤滑性向上剤の評価を実施した結果、DMEはある程度の潤滑性向上剤を混入させることにより、軽油と同等の潤滑性を保つことを検証しました。
  • 産業技術総合研究所は、(株)コモテックと共同で分配型噴射ポンプ(注1)の改造を行い、広い負荷範囲(注2)でDMEを燃料とするエンジンで運転が可能であることを確認しました。
  • 排ガス性状としては、NOx(注3)を除く新短期規制(注4)数値の1/2をクリアしました。PM(粒子状物質)(注5)はほぼ0を達成しました。
注1) 分配型噴射ポンプ:一本のプランジャで複数の気筒に燃料を分配して噴射するエンジンの噴射形式。
注2) 負荷範囲:荷物の積載時や坂道など、エンジンに負荷をかけている環境範囲のこと
注3) NOx:窒素酸化物 高濃度で人体の呼吸器に悪影響を与え、光化学スモッグの発生の元になる。
注4) 新短期規制:大気汚染防止法の中で取り締まられている初年度登録車に対する排ガス規制。
注5) PM(Particulate matter):粒子状物質 主にエンジンなど内燃機関から排出する粒子状物質。大気中に長時間滞留し、高濃度で肺や気管に沈着して呼吸器に悪い影響を与えるほか、発がん性の恐れがある物質。

(2)「中大型DME自動車の実用化研究開発」(平成14年~15年)

  • コープ低公害車開発(株)は全体を統括し、「DME自動車構造取扱基準(自主検討案)」を作成し、国土交通省へ参考提出しました。
  • 産業技術総合研究所は技術統括を行い、3種類のディーゼルエンジンの噴射ポンプ形式の中で、中大型トラックに現状で最も適用されている列型噴射ポンプ(注1)の改造とエンジン評価試験に取り組み、DME改造エンジンが軽油使用時と同等のパワー、トルクを出力することを確認しました。また、引き続き「DME自動車の実用化フリート試験研究開発」(走行試験)において、DMEエンジンの排ガス清浄化技術の完成を目指して研究開発、実証試験を行っています。
  • JFEホールディングス(株)は、DME容器車載、配管、電気配線及び制御装置などの車両設計を担当し、DME中大型トラックを完成しました。航続距離を伸ばす為(一充填600km)の工夫も行いました。
  • 三菱ガス化学(株)、伊藤忠商事(株)は、潤滑性を改善する潤滑性向上剤の研究開発に取り組み、その評価方法を確立し、開発した潤滑性向上剤をおよそ100ppm未満の単位でDME燃料に添加すれば、DME燃料として最も有効に機能することを検証いたしました。
  • 岩谷産業(株)は、ポンプフリーを実現した落下式DMEスタンド(注2)を製作しました。
  • 伊藤忠エネクス(株)は低公害自動車の需要を市場調査し、普及可能な燃料の定義及び条件を明らかにしました。また、普及条件をクリアできるDME自動車への改造対象車両を算出、将来普及をおよそ150万台(平成18年度時点では80万台)あると予測しました。
注1) 列型噴射ポンプ:エンジン気筒数と同数のプランジャを持ち、シンプルで大型エンジンに適用される噴射ポンプ。
注2) 落下式DMEスタンド:3mの高さにDME貯槽を上げ、3mの高さの落下エネルギー利用による充填方式スタンド。

(3)「DME自動車の実用化フリート試験研究開発」(平成15~16年、実施中)

  • コープ低公害車開発(株)は全体を統括し、ディーゼルエンジンの開発動向を調査し、併せて、引き続き「DME自動車構造取扱基準(自主検討案)」の整備を進めています。
  • 産業技術総合研究所は技術統括を行うと同時に、JFEホールディングス(株)とDME自動車の実用化研究開発の実用化レベルの走行試験として、これまでに改造されたDME自動車を長距離走行させ、実用上の諸課題を明確にし、解決策を策定しています。
  • 福山通運(株)は、DMEトラック実証走行試験を行い、運輸企業から見たDME自動車を評価しています。
  • (株)小野測器は、DME自動車の排気ガスなどを評価するための車上計測DME燃費計測器を開発しました。
  • 伊藤忠エネクス(株)は普及型DMEスタンドを研究開発し、また、移動型充填システムとしてDME自動車専用ローリー車の開発を進めています。
  • 伊藤忠商事(株)と三菱ガス化学(株)は、これまで研究開発を進めてきた潤滑性向上剤とDMEのブレンディング装置の設計開発に取り組み、今年度の完成を目指し研究中です。

車両総重量8トンDME中大型トラックと落下式DME充填スタンド写真

手前が、車両総重量8トンDME中大型トラック、後方に見えるのが、落下式DME充填スタンド



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