発表・掲載日:2003/05/14

新原理クラスター源SCCSでサイズの揃った機能性クラスタービームの生成に成功

-新たなナノ制御成膜技術としての期待-

「シリコンナノブロックの立体的秩序の構築に道を拓く」補足資料B


 独立行政法人産業技術総合研究所 産官学連携部門 クラスタープロセス連携研究体 研究体長 岩田康嗣らは、レーザー蒸発型の新原理クラスター源「時空間的閉じ込め型クラスター源 SCCS」を開発し、従来よりもサイズの揃ったシリコンクラスタービームの生成に成功した。得られたシリコンクラスターのサイズはSi23を中心としてサイズ分布△N/N<5%である。産業分野に応用して短時間、低コストでクラスターによる成膜をするためには、サイズの揃ったクラスタービームが不可欠である。生成したシリコンクラスタービームをアモルファス炭素薄膜上に蒸着すると、粒径2-3nmに揃ったシリコン粒子が薄膜上に観察された。クラスタービームの蒸着によって粒子同士が融合して巨大粒子に成長することなく、粒径の揃った孤立粒子が観察されたことから、クラスタービームを用いたナノ構造制御成膜技術の開発が現実的になった。本研究は、東京大学大学院 工学系研究科 教授 澤田 嗣郎ら、日立造船株式会社 技術研究所 小村 明夫らとの共同研究の一環として行われた。


研究背景

 クラスターは、安定したサイズ制御可能なナノ粒子であるので、従来のCVD(chemical vapor deposition)装置に変わる薄膜生成方法として注目されている。クラスター成膜装置では従来よりも1桁以上の高精度化が期待される。しかし、従来のクラスター生成では、生成されるクラスターのサイズ、構造の拡がりが大きいので、特定サイズのクラスターを取り出す必要があるので、蒸着密度が小さくなる欠点があった。クラスター成膜技術を産業分野で実用化するためには、サイズの揃ったクラスタービームを高強度で生成する事が不可欠である。これまで、我々研究グループでは、新原理の時空間閉じ込め型クラスター源 SCCS(Spatiotemporal Confined Cluster Source)を製作し、クラスター成長領域の時空間的閉じ込めに成功している。

SCCSでサイズの揃ったシリコンクラスタービームの生成に成功

 生成クラスターのサイズ分布を図1に示す。今回、産業分野への応用が期待できるシリコンクラスターを生成した。Si23が46%、Si19が14%、Si21が12%というサイズ分布で、サイズ分散は5%以下であり、従来のクラスター源で生成されるクラスターのサイズ分布とは著しく異なる。

 時空間閉じ込め型クラスター源 SCCSでクラスターを生成する事によって、ナノ構造を制御した薄膜生成プロセスが可能になると期待される。

サイズの揃ったシリコンクラスターの生成に成功の図
図1 サイズの揃ったシリコンクラスターの生成に成功
 生成したシリコンクラスターのサイズ分布を5%以下に抑えた。

シリコンクラスターの蒸着

 SCCSで生成したクラスターをアモルファスカーボン薄膜に蒸着すると、粒径2-3nmに揃ったシリコン粒子が薄膜上に観察された。クラスタービームの蒸着によって粒子同士が融合して巨大粒子に成長することなく、粒径の揃った孤立粒子が観察された。

 この結果から、クラスタービームを用いたナノ構造制御成膜技術、すなわち、同じサイズのクラスターを並べてナノ構造秩序を構築していく成膜方法の開発が現実的になった。





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