発表・掲載日:2003/03/10

バイオガスを利用した小型高効率6kWガスエンジンコジェネを開発

-都市ガス用量産型ガスエンジンコジェネとの部品共有化により低コストで製造可能-

ポイント

  • バイオガス用小型高効率6 kWガスエンジンコジェネレーションシステムを開発
  • 都市ガス用量産型ガスエンジンコジェネとの部品共有化により低コストで製造可能
  • 畜産農家や下水処理場等の小規模バイオガスプラントへの普及が見込まれる

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)エネルギー利用研究部門【部門長 請川 孝治】バイオマス研究グループの 澤山 茂樹 主任研究員 と アイシン精機株式会社【取締役社長 豊田 幹司郎】(以下「アイシン精機」という)は共同で、アイシン精機製の小型で高効率な量産型都市ガス用6kWガスエンジンコジェネレーションシステムを改良し、畜産排泄物などの廃棄物系バイオマスから発生させたバイオガスと同等の低カロリーなモデルバイオガスを燃料として、6kWガスエンジンコジェネを運転することに成功した。

 本成果は、畜産農家や下水処理場等の小規模バイオガスプラントにおけるバイオガス利用の新しい受け皿として有望と考えられる。

ガスエンジンコジェネ仕様
エンジン形式 水冷立型4サイクル3気筒OHV
エンジン総排気量 952cc
外径寸法 幅1100mm×奥行660mm×高さ1500mm
質量 465kg
総合効率 86.0%(都市ガス利用時の参考値)
発電効率 26.5%(     〃     )
排熱回収効率 59.5%(     〃     )
バイオガス利用ガスエンジンコジェネレーションシステムの概要


研究の背景と経緯

 地球温暖化の問題や循環型社会形成への取り組みとして、メタン発酵(=嫌気性消化)技術が注目されている。メタン発酵技術を用いると、食品廃棄物、畜産排泄物、有機性汚泥などの廃棄物系バイオマスからバイオガス(メタン60~65%、二酸化炭素35~40%程度)と有機肥料を生産することができる。得られたバイオガスをエネルギー利用し、有機肥料を農地還元することで循環型システムを構築できる。そのため、近年食品廃棄物や畜産排泄物を対象としたバイオガスプラントの建設が盛んとなってきた。さらに、昨年打ち出された「バイオマス・ニッポン総合戦略」により、メタン発酵技術の普及促進が図られようとしている。

 メタン発酵の課題としては、発酵液の利用・処理や、バイオガスを有効利用するためのエネルギー効率と経済性があげられる。バイオガスを利用する技術としては、ガスエンジン、マイクロガスタービン、燃料電池が考えられるが、比較的規模が大きく小規模なものでも30kW程度まであり、くわえて、従来のバイオガス発電システムは、バイオガスに特化したシステムが多く、販売台数が限られていることで製造コストが高いという問題があった。

 そこで、産総研エネルギー利用研究部門とアイシン精機は、2002年2月にアイシン精機が都市ガス(又はプロパンガス)用に販売を開始した「 6 kWガスエンジンコジェネレーションシステム 」をベースに、バイオガスに対応できるコジェネシステムの共同研究開発を行ってきた。ベースとなるシステムは、小型でエネルギー効率が高く(都市ガス利用時で総合効率86%)、量産型で経済性に優れている。(ちなみに乳牛100頭規模の畜産農家では、6kWのコジェネで使用電力を賄えると試算されている。)但し、都市ガスに比べ、バイオガスはメタンの濃度が低い低カロリーガスであるため、従来の都市ガス用ガスエンジンではうまく運転できない。そこで、低カロリーなモデルバイオガスを用い、ガスエンジンの空燃比適合試験を行った。その結果、メタンガス濃度60%、二酸化炭素濃度40%でガスエンジンコジェネを運転することに成功した。本成果により、バイオガスを燃料としてガスエンジンコジェネを運転し、6kWの発電と排熱を利用可能なコジェネシステムの開発に目途が立った。

今後の予定

 2003年3月より、株式会社荏原製作所【代表取締役社長 依田 正稔】製オンサイト型メタン醗酵装置BisonBio cycle System On Site )を利用し、実際のバイオガスプラントでエネルギー効率やエンジンの耐久性、燃焼排ガス特性などについて実証試験を開始する。小規模バイオガスプラントの普及に沿って、小型高効率バイオガス利用コジェネシステムのニーズが高まると予想される。





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