三菱重工業株式会社【取締役社長 西岡 喬】(以下「三菱重工」)は、人間型ロボットをプラントの保守点検に応用することを目指し、ICタグナビゲーションと自律遠隔融合制御によるプラントの巡回点検システムの開発を行っている。
プラントの巡回点検には、2つの大きな課題がある。プラントには、階段、床の段差、配管、狭隘部など多様な移動環境がある。そのため、次に何があり、何をしなくてはならないかをロボットが理解して、これらをスムーズに実行していくことが必要になる。また、点検順路にない計器の確認など、フレキシブルに対応できることも非常に重要である。もちろん、広いプラントであるため、フレキシブルに対応した後は、元の巡回ルートに容易に復帰できることは必須である。
三菱重工は、これらの課題に対して、ICタグを利用した誘導と点検のナビゲーションと、人によるロボットの遠隔操作を融合し適用することを提案し、その開発を行っている。
このナビゲーションは、次に読むタグの場所などの移動情報と、階段の段数、高さなどの環境情報を記載したICタグを利用する。例えば、床などに設置したタグを読むことで、その場所でロボットがどんな移動や点検をするのか理解して行動できる。これを利用すると、点検順路にない計器の確認などにロボットを遠隔操作で自由に動かしても、近くにあるタグを探して読みさえすれば、次にどう行動するのかが分かるので、元のルートに容易に復帰し引き続き自律的な巡回をすることが可能となる。
今回は、HRP-1による連続した一連の巡回点検デモを行った。まず、通路上の配管を踏み越え、通路端まで移動した後、左折し、1段の段差を降りた後、3段の階段を昇る。踊り場では、設置された圧力計の画像を監視室に送り、オペレータが圧力を確認する。続いて2段の階段を降り、狭隘部を想定した横歩きで点検場所に到達し、携帯型の点検工具で温度を計る。その後、HRP-1は順路を移動して、初めの位置へと戻って来る【下図参照】。
プラントモックアップ外観
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移動と作業の状況
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2002年度には、モックアップを用いて、人間型ロボットの入室から出室までの誘導・移動のナビゲーションアルゴリズムの自律制御(タグ・ナビゲーション)と、遠隔制御を融合した検証を行う予定。すなわち、プラントの保守点検における課題の一つである、点検順路にない計器の確認などへの対応を考え、自律から遠隔および遠隔から自律への復旧を簡便に行える機能を検討し、実装により検証する予定である。