発表・掲載日:2002/04/10

(4)人間型ロボットによる建設機械の代行運転の実現

-遠隔操作により着座からレバー操作までの運転操作-


新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「人間協調・共存型ロボットシステムの研究開発(HRP)」中間成果 発表

ポイント

  • 乗り込み、着座等の全身動作が指示できる全身動作教示技術。
  • 腕と脚の同時動作やバランス制御が行える全身動作基本制御技術。
  • 衝撃や自然環境等からロボットを保護する保護技術。
  • 運搬時に20kg以下に分割できる可搬型遠隔操作装置。

概要

 川崎重工業株式会社【取締役社長 田_ 雅元】(以下「川崎重工」という)は、東急建設株式会社【代表取締役社長 井原 國芳】(以下「東急建設」という)、京都大学【総長 長尾 真】、独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)と共同で、人間型ロボットHRP-1S遠隔操作し、着座して運転を行うタイプの建設機械の代行運転操作を実現した。

 危険な場所でロボットに建設・運搬機械を代行運転させるためには、乗り込み動作と運転動作の両方を、ロボットを遠隔操作することで実現する必要がある。そのためには、ロボットの全身の動きをどうやって指示するか(全身動作教示技術)、転倒防止等を行いながらロボットの全身をどうやって動かすか(全身動作基本制御技術)、ロボットを着座の衝撃や風雪等の自然環境からどう保護するか(保護技術)、どうやって現場で遠隔操作を行うか(可搬型遠隔操作装置開発)などの技術開発が必要である。

 共同開発の分担は、全身動作教示技術の開発が川崎重工と京都大学、全身動作基本制御技術の開発が川崎重工と産総研、保護技術の開発が東急建設、可搬型遠隔操作装置の開発が川崎重工である。

 今回は、HRP-1Sが建設機械の実物運転台上に起立した状態から始め、着座して走行レバーとアーム操作レバーを操作する一連の運転操作を、可搬型遠隔操作装置から操作するデモを行った【下図参照】。


運転操作するHRP-1Sの写真
  
可搬型遠隔操作装置の写真
可搬型遠隔操作装置


今後の予定

 開発中の各技術を完成させ、2003年3月末には、屋外で実物の建設機械を使い、ロボットが乗り込み、着座した後、走行・掘削を行う代行運転を実現する予定である。


用語の説明

◆バランス制御
ロボットは2足で立ち歩行するため、上体や腕の動きで転倒する場合がある。いつでもロボットを転倒させようとするモーメントを計算し、大きくならないように上体を動かし、バランスをとる制御。[参照元へ戻る]
◆HRP-1S
ロボットプラットフォームは本田技研株式会社、ソフトウエアは産総研が開発。ロボットの全関節の動作指令を与えることができるため、高度な動作を行うことが可能。[参照元へ戻る]
◆遠隔操作
人が離れた場所からロボットを操作する技術。人が同じ形の腕(マスタ)を動かし、ロボット(スレーブ)がその通りに動くマスタスレーブが基本技術だが、位置や姿勢だけを指示する、ロボットが動きにくい指示を避ける、バランス制御を同時に行う等の操作しやすい工夫を行っている。[参照元へ戻る]
◆代行運転
人が乗って操作する機械にロボットが代わりに乗り、人は離れた場所から遠隔操作することで、ロボットが機械の運転を代行する。特殊な自動機械を必要としないため、災害復旧や工事中の危険発生時などに緊急に対応できる。高齢者が操作すれば少子高齢化対策にも有効。[参照元へ戻る]
 
2002年4月10日 発表「働く人間型ロボット」ページへ



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