無色のガラスに、X線や紫外線を照射することによって、着色ガラスとして使用可能な濃さで、また安定な着色を得る方法を開発しました。このガラスは、300-550℃程度の温度での加熱、あるいは、再溶融により無色ガラスに戻すことができるので、無色ガラスとしてリサイクルが可能であり、着色ガラスのリサイクルの問題解決に貢献するものと期待されます。
リユース、リサイクルに適した着色ガラスを開発するために、無色のガラスに光を照射することによって着色し、また、加熱によって脱色し無色ガラスに戻すことが可能なガラス材料の開発と、容易に着脱色が可能な手法の開発を行っている。
本研究開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「地球環境産業技術研究開発関連事業」の一環として、当機構より委託を受けて、大阪精巧硝子株式会社、セントラル硝子株式会社、産業技術総合研究所生活環境系環境ガラス研究グループが共同で推進しています。
X線、紫外線等の光照射によって着色し、300-550℃程度の加熱により脱色。着脱色は、何回も繰り返すことが可能。
着色の原理
1)光照射によるカラーセンターによる着色(茶系統の発色)
2)銀超微粒子による着色(黄系統の発色、但しフルカラー着色の可能性あり)
3)イオン価数の変化による着色(紫系統の発色)
循環型社会の構築に向けてあらゆる分野における資源のリサイクルとそのための技術開発が重要な課題となっています。
ガラスの分野では、年間約178万t出荷(平成10年度)されているガラスびんのうち、半数以上の約93万tは着色びんですが、着色びんは、それ自体リサイクルされにくく、また、着色びん混入のため本来リサイクルされるべき無色びんもリサイクルされずに廃棄されるなどリサイクルの障害にもなっています。また、板ガラス(主として建築用、自動車用)においては、年間37万t程度の着色板ガラスが生産されており、消費者の嗜好の変化から増々着色板ガラスの生産量は増加する傾向にあります。従って、今後、板ガラスにおけるリサイクルのシステムを構築する上で、着色板ガラスのリサイクルは大きな問題となることが予想されます。
本研究開発では、無色のガラスを光照射により着色し、更に熱により脱色して無色ガラスとしてリユース、リサイクルすることが可能な着色ガラスを開発し、また、そのようなガラスを容易に着脱色できる手法を開発することによって、リサイクルにおける着色ガラスの問題を除き、ガラスにおけるリサイクル率の向上に資すことを目標としています。
現在は、3系統の色しか実現しておりませんが、本技術を実用化するためには、多色化が重要なポイントとなります。リサイクルの観点から、ガラスの基本組成は、市中でも最も一般的に使用されている、ソーダライムシリケートを基本とし、また、着色に必要な添加成分の種類、数、添加量は、かなり制限されると考えられます。このような技術的な制約のもとで、多色化を実現することが今後の大きな課題となります。