独立行政法人産業技術総合研究所シナジーマテリアル研究センターとファインセラミックス技術研究組合シナジーセラミックス研究所とは、共同で進めている経済産業省のプロジェクト「シナジーセラミックス」において、世界最高のNOxの直接分解効率を有する材料の開発に成功した。これまでに開発された自動車排ガス中のNOx浄化触媒では、共存する酸素分子が触媒表面に優先吸着してNOxの分解を妨げることが大きな問題であった。今回、触媒表面の構造を制御して酸素分子に対するNOxの選択吸着性を高めたことと、触媒表面に吸着した酸素分子を電気化学セルにより電気的に除去することにより高効率のNOx分解を実現した。触媒表面のNOx選択吸着性向上は、表面のイオン伝導・電子伝導の経路と多孔体の空孔形態を、同時にナノ~ミクロスケールで制御(高次構造制御)したことにより実現したものである。この開発材料はNOx直接分解としては従来困難と考えられてきたレベルを達成しており、NOx直接分解の実用化を実現すると共に、間欠的に余分な燃料噴射を必要とした従来方式に比べて省エネ化およびCO2削減にも大きな効果を示すと期待される。また、「シナジーセラミックス」の開発目標である自立連続的な環境浄化材料システム(酸素除去に必要な電気エネルギーを高温排ガスから得ることにより外部エネルギーの供給なしに機能する浄化材料システム)実現へ大きく進展するとともに、今後、その基本コンセプトの幅広い応用が期待できる。