発表・掲載日:2001/09/12

高速ネットワーク経由でスパコン稼働

-グリッド技術をスーパーコンピュータ上に世界で初めて搭載-

ポイント

  • スーパーコンピュータの高速ネットワークへの接続の問題点を克服
  • セキュリティ、情報管理機能の優れたネットワークソフトウェアGLOBUSの改良に成功
  • つくばWANの一部開通で全面接続運用への路を拓いた

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)情報処理研究部門【部門長 大蒔 和仁】は、日本電気株式会社【代表取締役社長 西垣 浩司】(以下「NEC」という)との共同研究により改良した『GLOBUS( ソフトウェア )』を用いて、世界で初めて高速ネットワークを経由して、スーパーコンピュータを稼働することに成功した。

 今回の成果は、通信・放送機構 つくば情報通信研究開発支援センター【センター長 古賀 達蔵】(以下「ギガビットラボ」という)のスーパーコンピュータと、産総研のコンピュータを、高速ネットワークである『つくばWAN』に接続し、ギガビットラボのスーパーコンピュータを、産総研のコンピュータから稼働させることにより達成した。

 次世代インターネット技術として、ネットワークに接続された様々な情報資源(コンピュータ、データベース、実験装置、個人携帯端末等)を誰でも、どこからでも、いつでも自由自在に利用するための技術は『グリッド』と呼ばれ世界中で活発な研究開発が行われているが、今回の成功は、スーパーコンピュータがグリッドの構成要素となり、自在に利用できるための課題を克服したことに意義がある。

 今後は、つくばWANに接続される予定の他のスーパーコンピュ-タや、世界中のネットワークに接続された情報資源との相互接続を行う予定。



研究の背景と経緯

  • 次世代インターネット技術として、ネットワークに接続された様々な情報資源(コンピュータ、データベース、実験装置、個人携帯端末等)を誰でも、どこからでも、いつでも自在に利用するための技術をグリッドと呼び、ここ数年、欧米を中心に活発な研究開発が行われています。
  • これまでスーパーコンピュータは、高速な計算能力をグリッドの世界にもたらすことが期待されていましたが、これを保有する機関が少なかったこと、高速なネットワークに接続されたスーパーコンピュータが少なかったこと、グリッド用のソフトウェアを搭載することが許されなかったことにより、対応が遅れていました。このたび、産総研とNECの共同研究により、ギガビットラボに設置されたNEC製のスーパーコンピュータの使用許可を得て、世界で初めてグリッドに対応することに成功しました。
  • この成功は、産総研とギガビットラボ間で開通したつくばWANを用いた実験により動作を確認しました。

ネットワーク構成イメージ図

技術的に困難であった点

 スーパーコンピュータは、これまでGLOBUSが対象としていたワークステーションやパソコンとは異なるオペレーティングシステム(OS)を搭載しているため、ソフトウェアを単に移し替えることができませんでした。この差異を解消するためには、スーパーコンピュータの基本ソフトウェアであるグリッドに関する深い理解と、オペレーティングシステムに関する深い理解が必要であり、産総研とNECが役割を分担することで、ひとつひとつ移植に関して問題点を解決してきました。

今後への期待

  • GLOBUSは世界で標準的なソフトウェアのため、これを搭載することで、他のワークステーション、パソコンやスーパーコンピュータ相互の通信が簡単に可能となり、仮想的には超大規模なスーパーコンピュータを簡単に出現させることが出来ます。
  • 今回の成功は、スーパーコンピュータがグリッドの構成要素となり、自在に利用できるための課題を克服した点で注目されています。今後は、つくばWANに接続される他のスーパーコンピュータや世界中のネットワークに接続された情報資源との相互接続を目指していきます。
  • スーパーコンピュータが標準的なソフトウェアを搭載することにより、ワークステーションやパソコンと同じように誰でもが容易に利用することが可能となります。これにより、スーパーコンピュータを持っていないユーザも計算処理の一部を高性能なスーパーコンピュータで実行することが容易に出来るようになります。


用語の説明

◆グリッド
 次世代インターネット技術として、ネットワークに接続された様々な情報資源(コンピュータ、データベース、実験装置、個人携帯端末等)を誰でも、どこからでも、いつでも自由自在に利用するための技術のこと。グリッドは元来、電力網から借用した言葉で、我々がドライヤを使う際にはコンセントの後ろのネットワークや発電所の位置、方法等を知らなくてもサービスを利用できるのと同じように、インターネットを利用する際にもネットワークの裏側にあるサーバの所在や機種やネットワークの経路等を知らなくても計算サービスやデータベースサービスなどを得られるようにするという目標の類似性から来た言葉である。[参照元へ戻る]
◆GLOBUS
米国アルゴンヌ国立研究所及び南カルフォルニア大学が中心となって開発されているグリッドの標準ソフトウェア。セキュリティ、情報管理機能が優れている。スーパーコンピュータへの搭載は、今回が世界初である。[参照元へ戻る]
◆つくばWAN
筑波研究学都市内の研究機関を超高速(10Gbps)のアクセスリンクで結ぶネットワークで、筑波研究学園都市内に点在するスーパーコンピュータ、大規模データベース、高度なシミュレーションソフトウェアを先駆的に活用し、共同研究を行うことを目的としている。
 平成12年度末から建設中で、平成13年度末に8機関(物質・材料研究機構、産業技術総合研究所、農林水産技術会議事務局、国立環境研究所、通信・放送機構つくば情報通信研究開発支援センター、NTTアクセスサービスシステム研究所、防災科学技術研究所、研究交流センター)を結ぶネットワークが完成する予定。平成14年度以降は、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構等の参加が予定されている。[参照元へ戻る]



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