2021/04/20
第53回 市村賞 市村地球環境学術賞 貢献賞を受賞
2021年4月19日(月)、第53回市村賞の贈呈式が帝国ホテル東京にて行われ、マルチマテリアル研究部門 福島 学 グループ長、材料・化学領域 吉澤 友一 領域長補佐が、市村地球環境学術賞 貢献賞を受賞しました。
市村地球環境学術賞は、大学ならびに研究機関で行われた研究のうち、地球温暖化対策に関する技術分野において顕著な業績のあった技術研究者またはグループに贈呈されています。
受賞者(左から福島グループ長、吉澤領域長補佐)
受賞テーマ
未利用熱を極限まで削減する高耐熱・高強度セラミック断熱材
受賞者
- 材料・化学領域 マルチマテリアル研究部門 セラミック組織制御グループ長 福島 学
- 材料・化学領域 領域長補佐 吉澤 友一
研究業績の概要
セメント・ガラス・セラミックス産業において、800℃以上の高温で使用される焼成炉(バッチ炉)に投入される熱エネルギーのうち、製品加熱に用いられるエネルギーは1~数%程度で、残りは使用されない熱(未利用熱)として廃棄されている。この分野で重要な役割を果たすセラミックス断熱材は繊維質断熱材と各種レンガが挙げられるが、前者は低強度で飛散しやすく発がん性も指摘され、後者は気孔率を最大70%程度までしか増大できず、製造時の大量の炭酸ガス放出も課題となっていた。我々はこの解決のため、高断熱性・高耐熱性・高強度を実現する断熱材の先進製造プロセス技術であるゲル化凍結法を開発し、実用化に至るまでの一連研究を成し遂げた。
開発法は「最高99%の水分を保水する高分子ゲルに微量のセラミックス粉末を分散させ、これを凍結してゲル内に気孔源となる氷が形成され、氷結晶を取り除いた乾燥ゲルを焼成」することで世界最高気孔率98%のセラミックス断熱材を製造する手法(図1)である。氷が気孔源となるため従来法に比べ炭酸ガス放出を圧倒的に低減でき、ゲル体の凍結を一方向にすれば軸方向に配向した気孔構造を凝固点効果作用がある添加物を併用すれば「氷成長とその停滞現象」により閉塞気孔を有する断熱材を得る事が出来る(図1)。
本手法により85%超の気孔率、0.25W/mK以下の熱伝導率、10MPa以上の高圧縮強度、1500℃での耐熱性を有する断熱材を開発した。開発材は、図2に示すように相対密度0.11以下の超高気孔率では世界最高レベルの高い機械的強度を示した。加えて開発材の再加熱収縮率は1%未満、再加熱・水中投下試験後の強度低下も小さく卓越した耐熱性を示した。
現在企業連携を通して本断熱材を施工した焼成炉を開発しており、2023年目標で従来炉と比較して排熱量50%削減を目指している。これは焼成炉における化石燃料使用量削減に直結するため地球温暖化対策に大変有望である。
(公益財団法人市村清新技術財団ホームページ(http://www.sgkz.or.jp/)より)
図1 ゲル化凍結法概略図と組織写真
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図2 開発材と従来材の特性比較
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