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お知らせ記事2022/11/21

循環型社会実現に向けた技術のスペックロードマップを策定
-サーキュラー・エコノミーに必要な技術開発目標の設定を支援-

ポイント

  • 機能材料や主要元素資源の循環システム構築に向けて、要素技術の必要スペックを提示
  • 2022年現在の状況から2025年、2030年、2050年に到達すべき技術スペックロードマップを策定
  • 本ロードマップを冊子体にまとめ、希望者への配布を開始

図1

資源循環スペックロードマップの概要

 

概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)材料・化学領域は、機能材料や主要元素資源の循環システムの実現に求められる要素技術の必要スペックの達成に向けたロードマップを2021年度に策定し、このたび、その活動内容を冊子体にまとめ、希望者への配布を開始しました。

産総研では、2020年4月に材料・化学、エネルギー・環境、エレクトロニクス・製造、生命工学、計測標準、および地質調査の6領域を融合して資源循環利用技術研究ラボを設立し、サーキュラー・エコノミーへの注目度が日に日に高まる国内外の状況を受けて、機能材料の循環システムの構築に向けた「マテリアルリサイクル技術」「ケミカルリサイクル技術」、主要元素資源である「炭素・窒素・リン資源の循環技術」、市場創出・ビジネスモデル構築に向けた「循環システム評価技術」の開発に取り組んでいます。それらの開発を促進する目的で、2021年に資源循環利用技術研究ラボのメンバーでワーキングループを立ち上げ、循環型社会に求められる資源循環技術のスペックロードマップを策定しました。本ロードマップを冊子体にまとめて広く配布することより、日本が強みとする素材・製造産業分野におけるサーキュラー・エコノミーをけん引する原動力にしたいと考えています。

ロードマップ策定の社会的背景

温暖化ガスによる気候変動、プラスチックによる環境汚染、資源の偏在に伴うサプライチェーンに絡んだ資源制約、国内外の廃棄物規制への対応、エネルギー価格の高騰など、全地球規模での環境問題や地政学的な資源制約などが社会課題として認識されてきています。このような背景から、ゼロエミッションやサーキュラー・エコノミー構築など「持続可能な発展」のために資源循環技術の重要度が増しています。

これまでにも、カーボンリサイクルなど、資源循環に係る個別の要素技術については、国家プロジェクトなどでの目標値が明確に定められているものがありますが、いまだ基盤技術開発のための取り組みが必要であるため目標値の設定が困難な要素技術も多数存在し、関連技術の要求スペックの関係性や全体像については報告されていません。

 

ロードマップ策定の経緯

産総研は、2020年4月、材料・化学、エネルギー・環境、エレクトロニクス・製造、生命工学、計量標準、および地質調査の6領域を融合して資源循環利用技術研究ラボを設立し、資源の高度利用技術とシステム評価技術開発のための研究活動をスタートしました。加えて、最先端の技術動向の把握や革新的技術シーズの探索などを通じて、資源循環技術が社会状況、政策、規制などの変化に対応できているかを調査しました。これらの取り組みによって、資源循環技術における規制変化の把握とそれに対応した新たに取り組むべきテーマが明確になった一方、今後社会課題の解決に向けて、環境経済学や環境政策を考慮しつつ各テーマの要求スペックを整理する必要性が浮き彫りとなりました。

そこで、2021年度、資源循環利用技術における最終目標を達成するために必要な要素技術と、それぞれの開発目標値および達成時期を設定したスペックロードマップの策定に取り組みました。

 

ロードマップの内容

本ロードマップは、資源循環型社会の構築に向けた新しい価値を実現するための開発目標の策定に貢献することを目的としています。有限である資源の採取をできる限り減らし、資源の持続可能性を強く意識しつつ循環させながら利用していくマテリアルリサイクルやケミカルリサイクル技術の開発は、プラスチック、繊維、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、バッテリーなどの機能材料の循環システムを構築するために重要となります。また、化石燃料や鉱物資源を原料とした材料の生産や輸送などの産業分野・生活分野から生じる二酸化炭素や窒素酸化物および生活排水などは、炭素(C)、窒素(N)、リン(P)の主要元素を含む潜在的な有価物であり、脱炭素社会の構築や主要元素の環境・資源制約および有効利用の観点からも分離・回収・変換といった循環システムの構築を目指した技術開発は重要です。環境的側面、経済的側面および社会的側面から、環境政策・環境経済学、ライフサイクルアセスメント(LCA)を活用した環境経済の確立は、資源循環型社会の実現のためには不可欠です。

このような状況を鑑み、資源循環型社会の構築に向けた社会課題と課題解決のための対応策についてロジックツリー(図1)を作成しました。ここで、赤字で記載した解決手段については、資源循環利用技術研究ラボで実際に取り組んでいます。これら課題解決のための手段について技術の網羅的な洗い出しを行い、2022年(現状)の状況から2025年、2030年、2050年に向けて到達すべき技術スペックロードマップを策定しました。マテリアルリサイクルの観点では、欧州や米国において推進する動きが見られる「リマニュファクチャリングプロセス技術」、アルミニウム合金やマグネシム合金などの「軽金属のアップグレードリサイクル技術」、航空機などに普及拡大が進みつつあるCFRPの「再生炭素繊維プラスチック(ReCFRP)高機能化プロセス技術」についてのスペックロードマップを作成しました。一方、ケミカルリサイクルの見地からは、プラスチックの再利用化に向けて「プラスチックケミカルリサイクル技術」について提示しています。また、主要元素資源の循環システムの構築として、カーボンニュートラルの実現に向けた「炭素循環技術」、地球環境のプラネタリー・バウンダリーを超え、排出量の削減と有効利用が喫緊の課題である窒素についての「窒素循環技術」、工業的にも生体にも必須であるが、原料供給の海外依存度が極めて高くかつ国際価格が高騰しているリンに関しては「リン循環技術」、さらには循環経済を構築するために検討が必要なLCAなどの「資源循環のためのシステム設計・評価技術」についてのスペックロードマップを提示しています。

図2

図1資源循環型社会の実現に向けた社会課題と課題解決に向けた対応策
(赤字は資源循環利用技術ラボで実際に取り組む課題)

今後の予定

本ロードマップについては、今後のさまざまなプロジェクトの開発目標の設定などに活用していきます。資源循環技術の進展や社会状況、政策、規制などの変化に伴って、継続的な改訂も進めていく予定です。

ロードマップの開示請求

本ロードマップの冊子体の配布を希望される方は、下記URLに進み、送付先等の必要事項を記載の上、お申し込みください。
ここをクリック

 

用語の説明

◆サーキュラー・エコノミー
従来の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動。[参照元へ戻る]
◆炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
炭素繊維で樹脂を強化した複合材料。繊維強化プラスチックの一種であり、高強度かつ軽量であることから、高い比強度や剛性が求められる幅広い用途で用いられる。[参照元へ戻る]
◆ライフサイクルアセスメント(LCA)
ある製品の製造や廃棄・リサイクルに至るライフサイクル全体の環境負荷を定量的に評価するための算定手法。[参照元へ戻る]
◆リマニュファクチャリング
一度使用した製品を、回収して解体、修復、組み立て、検査をして再度製品に戻す技術。[参照元へ戻る]
◆アップグレードリサイクル
リサイクル前よりも強度性能や品質、信頼性が向上するリサイクルプロセス。[参照元へ戻る]
◆プラネタリー・バウンダリー
人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を定義する概念。[参照元へ戻る]
 

本件問い合わせ先

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
材料・化学領域研究企画室
〒305-8565 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第1
TEL 029-862-6031
E-mail:mc-liaison-ml*aist.go.jp(*を@に変更して使用してください。)