住友電気工業株式会社(社長:松本 正義、以下 住友電工)と国立研究開発法人 産業技術総合研究所(理事長:中鉢 良治、以下 産総研)は、6月1日に、産総研情報技術研究部門内に「住友電工‐産総研 サイバーセキュリティ連携研究室」を設立しました。同研究部門の研究拠点の一つである関西センターを拠点とし、産総研としては、関西地区で初めての企業の名称を冠した連携研究室となります。
本連携研究室は、加速的・集中的研究開発を実現するために今年4月に制定された産総研連携研究室制度を活用したもので、産総研のもつ優れたセキュリティ技術を住友電工の主力製品であるインフラ・産業システム・交通関連機器に実装し、セキュリティ強化の研究開発を進めることにより、これら製品の信頼性を高め、更なる社会の安定に貢献していくことを目指します。
近年、サイバー攻撃の増加・巧妙化は激しくなる一方であり、ネットワークにつながる製品に要求されるセキュリティ技術・品質の確立やサイバーセキュリティに通じた専門技術者・開発者の育成が急務となっています。
住友電工は、モビリティ・エネルギー・コミュニケーション分野といった先進社会の維持・安定に不可欠な領域の製品を多く製造しています。様々な物がインターネットに接続されるIoT(Internet of Things)の進展に伴いこれらの製品群がネットワークと繋がる際にも高いセキュリティ品質を維持することは、社会的な責務であると考えています。
産総研情報技術研究部門では、IoTセキュリティに関する世界トップクラスの研究開発を行っています。これまでネットワークに接続されていなかった機器がネットワークに接続されることにより引き起こされる様々な問題について、その解決策となる基本技術を提案してきました。
今回の両者の連携は、住友電工が、産総研の技術を活用する最適なフィールドとして、同社の保有する多岐に渡る製品群を提供することによって、研究成果の実用化を加速し、早期に強固な社会基盤を構築することを目指すものです。この目標を達成するうえで、連携研究室において両者の人材が緊密に交流することは、サイバーセキュリティの人材育成につながると考えます。
住友電工の各事業領域(情報通信、自動車、環境エネルギー、エレクトロニクス、産業素材)におけるネットワークに接続される電子製品群を対象に、サイバー攻撃への対策技術について研究を行います。特に、産総研の保有する暗号技術、組込みシステム高信頼化技術等を適用したIoTセキュリティ技術を中心的な技術と位置付け、まずは、住友電工の主力製品である自動車・交通関連のセキュリティや、自社の工場生産設備のセキュリティを対象に実証実験を行い、技術課題を抽出し、実用化に向けた開発を進めていきます。
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サイバーセキュリティ対策が必要な想定対象製品 |
また、これらの研究を通して、製造業におけるセキュア開発プロセス全体の高信頼化を図ると共に、国内で逼迫しているセキュリティ人材の育成にも力をいれていきたいと考えています。
名称:住友電工‐産総研 サイバーセキュリティ連携研究室
設置場所:産総研関西センター(大阪府池田市)
研究体制:連携研究室長:森 彰 (産総研 情報技術研究部門 ソフトウェアアナリティクス研究グループ長兼務)
人員:15名程度
研究題目:IoT製品のセキュリティ技術に関する研究
共同研究の内容と目標:IoT環境における製品や製造工程へのサイバー攻撃を防ぐための保護・検知・復旧に関する技術の研究を行う。コネクテッドカーやスマートファクトリーなどの具体事例を対象とした実証実験を通じて、サイバー攻撃を防ぐ技術を開発し、事業への応用が可能な手法を確立する。