国立大学法人東北大学(以下、東北大学)、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)、公立大学法人滋賀県立大学(以下、滋賀県立大学)、および株式会社ブリヂストン(以下、ブリヂストン)は、プラスチックの一種であるポリオレフィンのマテリアルリサイクル技術確立に向けた共同研究を開始しました。
本プロジェクトでは、ポリオレフィンを電子顕微鏡観察で「観る」、分子構造を解析して「解く」、様々な手法で最適な性質の材料を合成し「操る」技術を用いて、繰り返しリサイクルできる新しい資源循環型ポリオレフィン材料の開発指針の確立を目指します。
研究の背景
現在、国内で発生している廃プラスチックのうち有効利用されているのは717万トンで、そのマテリアルリサイクル率は22%にとどまっています。なお廃プラスチックの原料の割合はポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィンが半分以上を占めている状況です。(注2)
また、廃プラスチックは様々な化合物(不純物)が混合して構成されていますが、それらの分離は極めて難しいため現状は混在した状態で再生されています。一方で、再生されたプラスチックは不純物と結合する力が弱く、混ざった状態でリサイクルすると脆く壊れやすくなってしまうため、再生品としての利用範囲が限られている状況です。今後さらにプラスチックのマテリアルリサイクルを加速させるためには、不純物を分離せずに混在させた状態で、強度の高い再生素材を生み出す技術が求められています。
今回の取り組み
このような状況に対し、廃プラスチックの構成比率が高いポリエチレンとポリプロピレンの界面(境界面)に、ブリヂストンが開発した日本発の高分子ESB(高機能性エチレン系熱可塑性エラストマー)(注3)を接着させることで、その界面が強靭化され、接合性が飛躍的に向上することが新たに判明しています。今回の研究では、ESBによるポリオレフィン特性の変化メカニズムを分子レベルで解明し、ESBの最適な分子設計を行うことで、ポリエチレンとポリプロピレンを使用した再生素材の強度を高めるとともに、その品質向上と高付加価値化を図ります。これにより、プラスチックの効果的なマテリアルリサイクルの実現に向けた可能性を検討します。
図1. ESBにより接合されたポリエチレンとポリプロピレン(左)とそのイメージ図(右)
図2. 研究チーム構成と役割分担
本プロジェクトは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が運営する、2024年度戦略的創造研究推進事業(CREST)の研究領域「材料創製および循環プロセスの革新的融合基盤技術の創出とその学理構築」において採択されました。
研究テーマ:「ポリオレフィン循環社会のための界面強靭化技術の開発」
研究代表者:東北大学 多元物質科学研究所 教授 陣内浩司
研究期間:2024年10月1日~2030年3月31日
東北大学がポリオレフィンのナノレベルでの電子顕微鏡観察により結合が強靭化する原因を「観る」、産総研はESBがポリオフィレンの界面に接着する理由を分子構造から解析する「解く」、滋賀県立大学がESBを最適に使いこなし、ブリヂストンが最適な性質のESBを合成する「操る」役割を担います。この「観る」「解く」「操る」のサイクルを回し互いにフィードバックし合うことで、繰り返しマテリアルリサイクルができる新しい資源循環型ポリオレフィン材料の開発指針の確立を目指します。
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
ブランディング・広報部 報道室
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