国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は、アーユルヴェーダを含むインド伝統医学を統括するAYUSH省の直轄研究機関である全インドアーユルヴェーダ研究所(All India Institute of Ayurveda, AIIA)と、アーユルヴェーダに関し、現代科学の視点で評価するため、2022年10月6日に研究協力覚書を締結しました。本覚書の下で、 AIIAを中心とするインド国内研究機関と産総研が協力し、アーユルヴェーダで扱われる植物の生理活性の解明に関する研究を進めます。インドAYUSH省は補完・代替医療としてのアーユルヴェーダを所掌する組織であり、AIIAはその管轄下でアーユルヴェーダに関する研究の中核を担う研究機関です。産総研の強みである計測分析技術をアーユルヴェーダの科学的原理の探求に用いることで、独創的な研究成果が得られることが期待されます。特にストレスの改善や老化の予防に有効な物質の探索と評価に焦点を当てた研究を進め、高齢化社会が急速に進む中、安価で安全な天然物由来成分の抽出や薬効・機能の解明を目指します。
アーユルヴェーダは、3,000年以上前にインドで生まれた自然由来の薬効があると考えられる物質を用いた体系的な医療知識のことであり、さまざまな病気の治療や健康を管理する方法を教えています。アーユルヴェーダを含むインド伝統医学を統括するAYUSH省は、インドにおける古来の伝統的な補完・代替医療システムの教育、研究、普及を目的としているインド政府の機関であり、AIIAはその直轄の研究機関として、インド国内でアーユルヴェーダ研究を進めています。一方、産総研生命工学領域は、2013年に日印共同研究ラボラトリー(DAILAB、ワダワ レヌーラボ長、細胞分子工学研究部門)を設置するなど、インド政府関連機関との連携研究および人材育成、人的交流を継続してきました。一例として、DAILABでは「アーユルヴェーダの女王」と呼ばれる植物であるアシュワガンダの生理活性について、分子生物学的アプローチに基づく多数の研究成果を発表してきました。今回AYUSH省は、これまでの産総研の日印連携研究の成果に着目し、新しいアーユルヴェーダ植物の研究に関してAIIAを中心とするインド国内研究機関と産総研が協力し進めることについて議論を重ね、研究協力覚書の締結に至りました。
アーユルヴェーダで扱われる植物などの自然由来物質の中には、ストレスや老化、がんなどに効能があるとされているものも多く含まれています。しかし、生理活性を有する物質の同定やその作用メカニズム解明については、その多くが研究途上の段階です。本研究協力覚書に基づき、今後はアーユルヴェーダに関する研究として、日印で協力して天然由来の安価で安全な有用物質の科学的根拠の裏付けを行うことにより、高齢化社会が急速に進む中、健康寿命の延伸や疾患克服に貢献する新たな医薬品や機能性食品などを提供することを目指しています。
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