産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2019/12/23

産総研がデンマークKAOSPILOTとの連携確認書に署名
-世界で最も刺激的なビジネススクールとの人材育成連携-

ポイント

  • 1年間の試行を経て2019年より産総研デザインスクールが本格始動
  • 世界で最も刺激的なビジネススクール KAOSPILOT との人材育成に関する連携確認書に署名
  • 技術を社会につなげる人材育成に関するカリキュラムと評価システムを共同で開発

概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」)とデンマークのKAOSPILOT【校長 Christer Windeløv-Lidzélius】は、VUCAの時代における、新技術の社会実装を可能とする人材育成のカリキュラム・評価システムを共同で開発していくため連携確認書に署名しました。

産総研デザインスクールとKAOSPILOTでは、それぞれの人材育成に関する研究、現場での新たなカリキュラム開発、将来の人材評価システムの開発に関し、相互に支援しながら両者で各スクールにおける人材育成の目的に合ったカリキュラム・評価システムを改良していく予定です。本事業において、産総研デザインスクールはKAOSPILOTの専門家を招聘する予定です。

本連携確認書の主目的は、日本の最先端技術の社会実装を行うため、社会システムをデザインできる能力に重点を置き、人材育成および評価手法を開発することです。本人材育成は、主に産総研柏センターとKAOSPILOTでそれぞれ行われる予定です。

署名した際の記念写真
図1 KAOSPLOT校長 Christer Windeløv-Lidzélius(左)、産総研 理事 加藤一実(中央)、産総研 柏センター所長 廣島洋(右)

事業の社会的背景

VUCAの時代と言われるように、社会が複雑化している現在、技術を社会実装するためには、単純に良い技術を作れば良い、というものではなく、将来の社会のあるべき姿を想定しながら、本当のニーズとそれを解決するための技術シーズを探索することが求められています。

日本は特に、「技術で勝ってビジネスで負ける」、と言われるように、技術的に世界に先駆けた開発が行われていますが、技術を社会に送り出すための社会実装の技術と人材が弱いとされ、「成長戦略実行計画」(令和元年6月)にもデザイン能力人材育成の重要性が記載、経済産業省は“デザイン政策”を推進、“高度デザイン人材育成研究会”などを立ち上げています。


事業の経緯

産総研は、社会における本当の課題は何か、その解決のために必要な技術をどのように社会に実装すればよいか、経済性や社会的影響まで含めて俯瞰し、理学、工学、経済学、社会学、法律学などの各分野の多様なステークホルダーと合意形成しながらビッグピクチャーを共創し、社会の中で社会とともに社会のために社会的課題解決を実践できる人材育成を目的とし、産総研柏センターに産総研デザインスクール事業室を設置しデザインスクールを立ち上げました。


事業の内容

本事業の主目的は、日本の最先端技術の社会実装を行うため、社会システムをデザインできる能力に重点を置き、人材育成および評価手法を開発することです。

産総研デザインスクールでは、企業からのスクール生が十数名程度、産総研の主に研究者十数名程度が、お互いの垣根を越え、8月から8か月程度、毎週1日程度、産総研柏センターに集まり、未来洞察手法、システム思考、デザイン思考、アート思考などのカリキュラムを行います。また、デザインスクール事業は、柏の葉という地域の住民、法人などと一体になりながら共創する場を提供しており、KAOSIPILOTはもとより、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)、東京大学、一橋大学などの講師陣からなるカリキュラムを提供しています。


今後の予定

KAOSPILOTとの連携強化により、カリキュラムの充実化と育成度の評価手法の確立を図ります。これにより、求める人材の育成を加速し、この人材を介した技術の社会実装を実現します。


用語の説明

◆KAOSPILOT
1991年、デンマークに設立されたKAOSPILOTは、従来の枠にとらわれない新しい学校として、北欧のみならず世界中から20代から30代の若年層が集まり、クリエイティブ・アセット(創造的な資産)を高めるために独自のカリキュラムが行われています。これまでに約900名の卒業生を輩出し、「チェンジメーカーを育成するビジネススクール」として名を馳せるようになりました。[参照元へ戻る]
◆VUCA
VUCA(ブーカ)とは、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性を表す4つの英単語の頭文字(Volatility、 Uncertainty、Complexity、Ambiguity)から取った言葉で、現代の社会状況を表現しています。[参照元へ戻る]
◆産総研デザインスクール
産総研は、「これからの社会で本当に必要とされること(共通善)を探究し、未来社会を創造する“共創型次世代リーダー”を育成する場」、として「産総研デザインスクール」を1年間の試行を経て2019年より産総研柏センターにデザインスクール事業室を設置し本格始動しました。ここでは、主に以下の能力に注目した人材育成カリキュラムを提供します。
  1. 深く自己を理解し、確固たる自分の軸を立てること(俯瞰力)
  2. 豊かな対話を通して、他者や社会に深く共感し理解すること(共創力)
  3. 社会に対して新たな価値を共創し、世界を牽引できること(実践力)[参照元へ戻る]
◆柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)
UDCKは、東京大学、千葉大学、柏市、三井不動産、柏商工会議所、田中地域ふるさと協議会、首都圏新都市鉄道の7つの「構成団体」により、共同で運営されています。これに、関係公共団体や各種専門企業を「協力団体」として加え、フラットかつ柔軟な連携により、さまざまな取り組みを行っています。[参照元へ戻る]