国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、2019年11月15日に「産総研・筑波大 食薬資源工学 オープンイノベーションラボラトリ」(AIST-University of Tsukuba Open innovation laboratory for food and medicinal resource engineering; FoodMed-OIL)を国立大学法人 筑波大学【学長 永田 恭介】(以下「筑波大」という)と共同で筑波大 筑波キャンパス内に設立した。産総研のオープンイノベーションラボラトリ(OIL)は、産総研の第4期中長期計画(平成27年度~令和元年度)で掲げている「橋渡し」を推進していくための新たな研究組織の形態で、FoodMed-OILがその9件目となる。本OILでは、産総研が持つ物質変換技術と筑波大が持つ食薬資源利用学を融合し、入手容易な生物資源から人の健康に役立つ機能を持つ物質に効率よく変換する技術の開発ならびにその物質の医薬品や機能性食品としての応用を目指す。
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FoodMed-OILの概念図 |
平均寿命が延びる中、医療費削減は喫緊の課題となっており、国の方針も「治療から予防・改善」といったコンセプトにシフトしている。また、いったん疾病にかかったとしても、QOL(Quality of Life)を維持・向上させながら暮らせる社会が求められている。そのような中、近年、人の健康に役立つ天然物由来の機能性成分が医薬品や機能性食品として注目されている。しかし、その多くは希少な生物資源に由来するものであるため、コストや供給量が見合わないだけでなく、多くの生理活性機能が未知のまま見過ごされてきた。
このような食薬資源研究の分野において、筑波大では多様なバイオアッセイ技術ならびに臨床試験研究を通じ、さまざまな食薬資源成分が持つ生理活性機能を科学的エビデンスに基づいて多数解明してきた。また、産総研ではさまざまな物質をより有用な物質に変換する触媒技術を、化学品製造技術の要また持続可能な開発目標 (SDGs)を達成するためのキーテクノロジーと位置付け、その一環として植物中に含まれる成分を原料として有用な物質を合成するための実用触媒の開発に取り組んできた。
今般、産総研と筑波大は新たな産総研の拠点(FoodMed-OIL)を筑波大筑波キャンパスに設置し、筑波大が有する食薬資源研究のポテンシャルと産総研が有する物質変換技術のポテンシャルを融合する。それにより、従来では入手困難だった食薬資源中の希少成分をより安価な原料から十分な量を供給することが可能になり、その希少成分自身やその誘導体が発現する新たな生理活性機能を発見・解明することが期待できる。有望な候補物質については、臨床研究により医学的エビデンスを加え、医薬品や機能性食品として社会実装することを目指す。