産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2018/03/07

インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブと産業技術総合研究所が包括連携協定を締結
-スマート製造の実現に向けた連携・協力の推進-

ポイント

  • 産業技術総合研究所の技術とインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブのユースケースの融合によりスマート製造の研究を推進
  • スマート製造の実現に向けた国際標準化活動で連携
  • 官民一体となった国家プロジェクトを推進

概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)と、一般社団法人 インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ【理事長 西岡 靖之】(以下「IVI」という)とは、スマート製造の実現に向けた連携・協力に関する協定(以下「本協定」という)を平成30年3月5日に締結しました。

産総研は、さまざまな機器を連携させる「つながる工場」の構築を産総研 臨海副都心センターで進めているところです。本協定に基づき、産総研とIVIは、この「つながる工場」を中心的な拠点として、IoT(Internet of Things)を活用したスマート製造の推進に向けた連携・協力活動を進めます。200社を超えるIVI参画企業によるさまざまなユースケースに対して、「つながる工場」を利用して産総研シーズ技術を適用します。そして、個別の要素技術を連携させることによって、課題解決や価値創出を実現するための研究開発を推進します。また、これらの活動の中から得られた成果をもとに、スマート製造展開のために標準化が必要とされる技術を特定し、その規格策定と国際標準化活動を進めます。

本協定の締結により、官民一体となって、スマート製造の実現に向けた国家プロジェクトの推進や国際標準化活動の活性化を図り、わが国の産業振興に寄与することを目指します。

経緯

ドイツ提唱のIndustry 4.0、米国のIIC(Industrial Internet Consortium)などの活動が進む中、日本でもIoTを活用したスマート製造を実現するための活動が展開されています。産総研では、さまざまな機器を連携させる「つながる工場」を産総研 臨海副都心センターに構築し、スマート製造実現へ向けた実験環境として活用するための施設整備を進めています。これと並行して、異なる機器や設備の間でデータを共有するためのルールを定める国際標準化活動にも主導的に取り組んでいます。

また、IVIは、日本の製造業のゆるやかな連携を基本的な考えとして持ち、参画する各企業が抱えている課題の中で、単独で解決することが困難な問題を複数企業が共同で解決するためのサポートを実施しています。標準化に関する活動についても、スマート製造における構成要素や標準化のあり方をモデル化したインダストリアル・バリューチェーン・リファレンス・アーキテクチャー(IVRA)の発信などを進めています。そして、産総研とIVIは、それぞれのメンバーが互いの活動に参加するなど、個人レベルでの情報交換や意見交換、連携活動を行ってきました。

このような背景のもと、組織としての連携体制を構築することによって、研究開発、産業界における課題解決、そして国際標準化活動をより一層推進するために、本協定を締結することとなりました。産総研とIVIは、官民一体となって、わが国におけるスマート製造の実現に向けて寄与することを目指します。

具体的な連携・協力内容

  1. 「つながる工場」を利用して、産総研が持つ加工、計測、ロボット、情報、知識処理などの技術を、IVIが有する多様なユースケースに適用することで、異なる技術の連携から新たな価値を生み出すスマート製造の研究開発を推進します。
  2. 「つながる工場」を利用したユースケースの実証実験に基づいて、標準化すべき協調領域と秘匿すべき競争領域を整理し、協調領域に関わる技術や規格の国際標準提案を行います。
  3. これらの研究開発をベースとして、コネクテッドインダストリーズ(Connected Industriesを実現するための国家プロジェクト事業への共同提案を行います。

用語の説明

◆スマート製造
一般には、現実世界をセンサーなどの計測機器を通じてサイバー空間に取り込み、サイバー空間におけるシミュレーションや分析による解析結果、予測などを現実世界へとフィードバックすることで製造における効率、品質、生産性、信頼性の向上、リードタイムの短縮などにより、新たな付加価値を生むことを企図するものとされます。しかしながら、その定義については国際的にも議論がなされている最中で、まだ明確には定められていません。[参照元へ戻る]
◆インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)
IVIは、日本機械学会で2014年に組織された「インターネットを活用した『つながる工場』における生産技術と生産管理のイノベーション研究分科会」を母体として発足し、2016年に一般社団法人化しました。参加企業が構成する複数のワーキンググループが、それぞれが設定した課題について解決策を議論し、システム設計・試作を行うという、ボトムアップアプローチを採っています。現在、200社を超える企業が参画しています。[参照元へ戻る]
◆インダストリアル・バリューチェーン・リファレンス・アーキテクチャー(IVRA)
IVIが考案した、スマート製造の考え方やあり方を示すモデルです。製造業全体を、サプライチェーン、エンジニアリングチェーンそして企業内階層からなる三つの軸で俯瞰(ふかん)的に捉えます。そして、人や工場を含む資産、PDCA活動、品質や原価などの管理という三つの視点からなるSmart Manufacturing Unit(SMU)をスマート製造の最小構成単位として定め、スマート製造を、SMU間のモノ、情報、データ、価値のやり取りとして表現します。[参照元へ戻る]
インダストリアル・バリューチェーン・リファレンス・アーキテクチャー(IVRA)の図
インダストリアル・バリューチェーン・リファレンス・アーキテクチャー(IVRA)
◆コネクテッドインダストリーズ(Connected Industries
2017年、わが国の産業がめざす姿として経済産業省が発表した概念で、さまざまなつながりにより新たな価値が創出される産業社会を指します。「人と機械・システムが対立するのではなく、協調する新しいデジタル社会の実現」、「協力と協働を通じた課題解決」、「人間中心の考えを貫き、デジタル技術の進展に即した人材育成の積極推進」を三つの柱としています。[参照元へ戻る]