つくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点(TIA-nano)では、つくばの研究機関と産業界とが一体となってナノテクノロジー領域におけるオープンイノベーションの実践に取り組んでいます。
このたび、TIA-nanoの中核機関である国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)、国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)、国立大学法人 筑波大学(筑波大)、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK)に、新たに国立大学法人 東京大学(東大)が中核機関として参加することになりました。今後はこれら5機関を中核機関として世界的なナノテクノロジー領域の研究・教育拠点を形成し、我が国のイノベーション創出に貢献していきます。
TIA-nanoは、産総研、NIMS、筑波大、KEKの4機関が協力して構築したオープンイノベーションの場です。一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)も運営に加わり、内閣府、文部科学省、経済産業省の支援を得て、ナノテクノロジー分野の研究、人材育成を推進しています。
2009年の設立以来、33件の国家プロジェクトがTIA-nanoの場で実施され、200社の企業、1000名を超える企業研究者がそれらプロジェクトに参画してきました。大型の研究施設と企業が利用しやすい制度(出向制度、契約制度、設備稼働体制)を整備し、多くの企業と深く連携して研究開発を推進してきました。その中では、長く研究開発が行われてきたSiCパワーエレクトロニクスやカーボンナノチューブがようやく実用化に至り、企業が事業に着手しました。サマースクールを中心とする人材育成では、全国の学生、若手研究者がつくばに集える支援制度を整え、知的刺激の高い機会を提供してきました。
このたび、TIA-nano活動のさらなる推進のため、新たに東大が中核機関として参加することになりました。
東大は、本郷と駒場に柏のキャンパスを加えた三極構造構想の下、東大ビジョン2020を掲げ、学術成果を踏まえた価値創造、産学官民連携の協働拠点形成、これを担う人材の育成を目指しています。
基礎研究においては、東大とTIA-nano中核4機関とは既に個別に強い連携をしてきましたが、今後は、社会から大いに期待される「イノベーション創出」、「知の協創」に向けて、5機関が一体となって、オープンイノベーション拠点の拡充、産業界との連携研究に取り組んでいきます。
東大のTIA-nanoへの参加は、国や企業が求めるイノベーション創出の拠点、それを担うイノベーション人材育成の拠点としてのTIA-nanoの機能を格段に強化するものです。その地の利から、東大が提案する「つくば-柏-本郷イノベーションコリドー構想」の実現へとつながります。つくばエクスプレス(TX)沿線を「知の協創プラットフォーム」として有機的に結び付けることで、学術成果をイノベーションに変えて産業界まで届ける仕組みと、大学で育った学生を産業界で活躍できる人材へと育てていく連続的な仕組みができます。
東大にとって、TIA-nanoへ参加するメリットは、自ら保有する膨大な技術と教育した学生とを、TIA-nanoで構築されている企業連携システムを活用して、産業界へ届けられることであり、TIA-nanoにとってのメリットは、オープンイノベーションの場として提供できる技術ラインナップが充実し、企業にとっての魅力が大幅に拡大することです。
現在、東大を加えた中核5機関により、連携研究テーマを検討しており、今後、随時企業への参加を呼びかけていきます。具体的には、ナノバイオ計測や計算物質科学などの検討が進んでいます。
2016年4月より、共同の運営組織体を形成し、5機関で資金を出し合って先導的共同研究を行っていきます。また、東大と筑波大の教育プログラムを基に、イノベーション人材育成を開始します。その後は、5機関の多様な技術を融合させて、ナノバイオやIoTなどの大型研究プロジェクトの立案、企業連携、国際的な研究連携を企画・推進し、世界的なイノベーション拠点へと成長させていきます。