産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2013/10/03

日印共同研究ラボラトリーの設立について
-健康・医療産業のイノベーションを目指して-

ポイント

  • 産総研(日本)とDBT(インド)の包括研究協力覚書の下、共同研究ラボラトリーを産総研つくばセンター内に設立
  • 日印両国の強みを生かして健康・医療分野に関わる共同研究開発と研究者交流を推進する研究拠点を形成
  • がんを対象とした創薬分子探索および生体イメージングの基盤技術の開発を目指す

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、インド科学技術省バイオテクノロジー庁(Department of Biotechnology)【長官 Krishnaswamy VijayRaghavan(クリシナスワミ ヴィジェラガワン)】(以下「DBT」という)と、健康・医療産業のイノベーションを目的とした共同研究ラボラトリー(以下「共同ラボ」という)を産総研つくばセンター内に設立する。DBTがこのような共同ラボを日本国内に設置するのは初めてとなる。

 DBTは、インドにおけるバイオテクノロジー政策を担当し、主に生物工学およびその生産製造に関するプロジェクトの選定と支援、また、大学、研究所の生物工学分野の若手研究者の養成を支援している。共同ラボ設立は、産総研とDBT双方の強みを生かした健康・医療分野におけるさらなる研究協力の推進と若手研究者の人材育成を含めた研究者交流を目的とする。共同ラボの運営は、バイオメディカル研究部門【研究部門長 近江谷 克裕】細胞増殖制御研究グループ【研究グループ長 ワダワ レヌー(Wadhwa Renu)】が中心となって進める。DBTからは、共同ラボでの研究開発に対して3年間の資金提供があり、また今後、インドのDBT内にも共同ラボを設立することで合意している。

共同ラボのロゴマークと共同ラボ室内の様子の写真
(左)共同ラボのロゴマーク (右)共同ラボ室内の様子

経緯

 2006年12月の「日印戦略的グローバル・パートナーシップ」に向けた日本とインドの共同声明に基づき、2007年2月12日、産総研とDBTは包括研究協力覚書を締結した。この覚書の下、2008年1月の第1回DBT-産総研ワークショップで二国間研究協力プロジェクトに合意し、健康・医療分野における研究協力を推進するとともに、過去5年間で4回のワークショップを両国で開催した。2013年4月にさらなる研究協力の推進を目指して共同ラボの設置を産総研がDBTへ提案し、今回、合意へと至った。

研究の内容

 共同ラボはライフ・イノベーションを実現するための「先進的・総合的な創薬技術、医療技術の開発」を目指し、産総研が強みとする生理活性物質の探索技術および生体イメージング技術と、DBTが強みとする生理活性物質の実験動物評価技術およびIT創薬技術を生かした研究体制を構築する。さらに相互の人材、知財の活用、および人材交流を通じ、新規がん治療法の開発を目指す。これらの共同研究を進めることで、インドと日本双方の健康・医療産業の連携・強化につながることが期待できる。

 共同ラボではDBTの持つインドの生物資源を基盤とし、産総研の持つ創薬分子探索技術により抗がん剤候補分子を特定する。併せて、産総研の持つ薬効を解析する生体イメージングの基盤技術を活用し、抗がん剤候補分子の薬効メカニズムを細胞レベルで明らかにする。さらにインド側の実験動物評価技術およびIT創薬技術を駆使し、抗がん剤として最適化を図る。

 年度計画としては、1年目に主にインドの生物資源ライブラリーを構築し、併せてがん細胞を用いて抗がん分子の探索を実施する。2年目には、イメージング技術を駆使し抗がん剤候補分子の生理活性や薬効メカニズムを解析する。3年目以降は、引き続き抗がん分子の探索と候補分子の薬効の解析を継続するとともに、インド国内に設立される共同ラボを活用し抗がん剤分子の実験動物評価実験も実施する。併せて、インド国内のIT創薬技術を活用し抗がん剤候補分子の最適化を行う。その後、インドや日本の製薬企業などに積極的に抗がん剤候補分子およびその探索法について技術移転を図る。

 共同ラボにはバイオメディカル研究部門細胞増殖制御研究グループ以外に脳遺伝子研究グループ【研究グループ長 戸井 基道】、健康維持機能物質開発研究グループ【研究グループ長 大西 芳秋】が参加、インド側より共同ラボへ派遣される研究員とともに研究を実施する。一方、2014年度以降、インド側に共同ラボを設立する予定で、常時数名の産総研研究者を派遣し研究を推進する。