独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)計測・計量標準分野【研究統括 三木 幸信】およびナノテクノロジー・材料・製造分野【研究統括 金山 敏彦】、株式会社島津製作所【代表取締役社長 中本 晃】(以下「島津」という)、日本電子株式会社【代表取締役社長 栗原 権右衛門】(以下「日本電子」という)、および株式会社リガク【代表取締役社長 志村 晶】(以下「リガク」という)は、「ナノ材料の産業利用を支える計測ソリューション開発コンソーシアム」(Consortium for Measurement Solutions for Industrial Use of Nanomaterials (COMS-NANO))(以下「ナノ計測ソリューションコンソ」という)を2013年6月1日に発足させ、ナノ材料の粒径、特性評価手法・装置の開発を目指す共同研究に取り組む。
粉体や微粒子については、より機能化された材料や微細化されたナノ材料の開発が世界的にも精力的に行われている。一方、ナノ材料の生体などへの影響を懸念する声もあり、欧州ではナノ材料の流通に対する届け出制を導入する国が出始めている。
ナノメートルレベルの材料を計測・評価するためには、電子顕微鏡による直接観察、光散乱・回折、X線散乱を利用した計測手法、あるいは比表面積測定法などの間接的な評価手法がある。しかし、現状では粒径およびその分布、組成や不純物に関する計測手法の国際的な標準は整備されていない。
ナノ計測ソリューションコンソは、日本企業が得意とするナノ材料の計測技術を融合・統合することで、ナノ材料の計測装置の開発とその国際標準化を推進し、日本のナノ材料の国際展開に寄与する。
|
ナノ材料の産業利用におけるナノ計測ソリューションコンソの体制 |
2000年の米国クリントン大統領による国家ナノテクノロジーイニシアティブ宣言を契機として、世界的にナノ材料の研究開発が加速してきた。また、それ以前からもカーボンブラックやシリカ(酸化ケイ素:SiO2)、酸化チタン(TiO2)などは、機能性材料として塗料、インク、タイヤ用ゴム充てん剤、化粧品などに大量に用いられてきた。
ナノテクノロジーがサイエンスの領域にとどまらずテクノロジーとして利用されるに伴って、その革新性や将来における不確実性から、ナノテクノロジーの社会受容性向上への配慮が必要となってきている。人が摂取する、あるいは環境に飛散する可能性があるナノ材料に関しては、予防原則の観点からその取り扱いを規制する必要があるという意見もあり、フランスでは2013年1月よりナノ材料の流通に対する届出制度が開始されている。
ナノ材料の産業化を促進するためにも、その計測手法の確立が待たれている。すでに、欧州指令M/461として、ナノ材料の物理化学的特性評価に向けた検討が行われているが、その手法の整備や標準化は始まったばかりである。
これまで産総研は、島津、日本電子およびリガクとそれぞれ個別に、ナノ材料の取り扱いやナノメートルレベルの計測技術に関する共同研究を進めてきた。これらはそれぞれの企業が得意とする計測技術の高度化を目指すものであったが、取り扱いや計測技術は企業ごとに異なっていた。ナノ計測ソリューションコンソでは、それらの計測技術を融合・統合し、さまざまなナノ材料の取り扱いや計測のための手法を共通化・標準化することで、多様な形態と特性を示すナノ材料の産業利用を促進する。
○組織
運営委員会、知的財産委員会、事務局および各種ワーキンググループ
○事業内容
産総研、島津、日本電子およびリガクは、ナノ材料の物理化学特性の計測・評価という技術領域において、ものづくり企業の課題に応えるソリューションプラットフォームを構築し、我が国の計測分析技術力を強化することを目的とする共同研究を開始する。欧州において導入が始まっているナノ材料規制への対応を可能とする、ナノ材料の特性評価手法・装置の開発を目指す。
○参加機関(五十音順)
独立行政法人 産業技術総合研究所、株式会社島津製作所、日本電子株式会社、株式会社リガク (計4機関)
分析機器メーカーにとどまらず、関連する素材、材料、化学メーカー、製造装置メーカー、分析サービス提供会社や大学・公的研究機関とも連携することにより、ニーズに即した研究開発プロジェクトを組織し遂行する。開発にあたっては、国際整合性や標準化、認証など基盤の強化による付加価値の創成、およびナノ材料から粉体材料までを視野に入れた安全・安心を確保できる特性評価手法・装置の創出を目指す。
なお、2013年9月4日に幕張メッセ国際展示場(千葉県千葉市)で開催されるJASIS2013(旧分析展/科学機器展)において、「ナノ材料計測技術」に関するワークショップを開催し、研究開発の進展と今後の展開について議論する予定である。