独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)と、独立行政法人 物質・材料研究機構【理事長 岸 輝雄】(以下「物材機構」という)、および国立大学法人 筑波大学【学長 山田 信博】(以下「筑波大学」という)は、つくば市に世界的なナノテクノロジー研究開発拠点を形成することで合意し、日本経済団体連合会産業技術委員会【共同委員長 中鉢 良治】(以下「日本経団連」という)の参加を得て、推進組織として「つくばナノテクノロジー拠点運営最高会議」を設置する。
経済産業省と文部科学省の平成20年度および21年度補正予算約360億円により、ナノテクノロジー研究開発の中核となる施設が、つくばにある産総研と物材機構内に整備される。これまで、産総研、物材機構、筑波大学は、各々ナノテクノロジーの要素技術の研究開発に取り組んできた。新たな中核施設の整備と連携により、企業が要望する異分野技術を融合した実証研究が可能となる。
「つくばナノテクノロジー拠点運営最高会議」では、中核施設を効果的に活用できるよう、産業界の研究開発需要の把握、材料研究とデバイス研究との密接な連携、国内主要大学の参加する大学院を中心とする研究開発人材の育成を検討していく。
つくばナノテクノロジー拠点の整備により、日本のナノテクノロジー研究の成果をいち早く産業化し、市場への提供できるように支援して行きたい。
左から、中鉢 日本経団連産業技術委員会共同委員長、山田 筑波大学学長、野間口 産総研理事長、岸 物材機構理事長
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産総研、物材機構、筑波大学の三者は、平成14年3月に「研究交流の推進に係る協定」に調印し、個別研究テーマの共同研究や、大学院学生を中心とする教育を連携して推進してきた。
産総研は、経済産業省所管の研究所として、産業競争力の向上を目指して科学的基礎研究と製品との間にある死の谷を橋渡しする「本格研究」を実施し、異分野の技術や概念の架け橋となり実用技術につなげるイノベーションハブの役割を果たすことにより、産業技術の発展に尽くしてきた。特にカーボンナノチューブの研究において中心的な役割を果たしてきた。
物材機構は、文部科学省所管の研究所として、ナノテクノロジーを活用した持続社会形成のための物質・材料科学を実施し、基礎的・基盤的研究開発、成果の普及と活用の促進、施設及び設備の共用、研究者・技術者の養成という4つのミッションを国際的に果たしてきた。特に、一昨年、「世界トップレベル研究拠点」の一つとして物材機構が採択され、「国際ナノアーキテクトニクス研究拠点」(MANA)として活動を推進してきている。
筑波大学は、先端的・独創的な知の創出と個性輝く人材の育成を通じて世界に貢献することを使命とし、特に、筑波研究学園都市の充実した研究環境を活かし、卓越した研究成果と有為な人材を産み出す新たな教育研究拠点の創出を目指している。数理物質科学研究科を中心に平成4年度から産総研、物材機構等との間で連携大学院を開始し、物材機構並びに産総研とはそれぞれナノサイエンス、ナノエレクトロニクスに関する共同研究を組織的に進め、連携研究強化を図っている。
産業界の声として、産業競争力懇談会【会長・代表幹事 勝俣 恒久】がナノエレクトロニクス分野の研究開発のあり方を議論し、「基幹産業創出のためのナノエレクトロニクス研究拠点設置の提案」として政策提言している。日本経団連においても、本年2月9日に提言「日本版ニューディールの推進を求める」をとりまとめ、重点プロジェクト事例として「ナノエレクトロニクス研究拠点形成プロジェクト」を取り上げた。
ナノテクノロジー分野において、これまで日本は強い技術力を保持してきたが、近年の主要国における中核拠点を基盤とした国家レベルのナノテクノロジー戦略には見習うべき点が多数ある。四半世紀にわたる投資により研究施設と技術とが蓄積されてきたつくばは、拠点形成により大きく飛躍できる要素を備えている。これまでの三者の協力関係が、研究開発拠点の形成により一段と加速されることが期待できる。
2010年度からの本格活動に向け、拠点施設の詳細設計と整備を行うとともに、拠点を活用したナノテクノロジー研究開発に参画する企業と大学を募る。この拠点を利用した研究開発によって、日本全体のナノテクノロジーの産業化を図ると同時に、その成果を国民に還元していきたい。