独立行政法人産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)と矢崎総業株式会社【代表取締役社長 矢崎 信二】(以下「矢崎総業」という)は、研究開発と人材育成を連携して行うことにより、開発した技術を産業技術として確立し、我が国の産業技術の振興を図ることを目的として、協力協定を締結することに合意し、平成20年7月24日に協定書の調印式を行いました。
この協定に基づき、産総研は矢崎総業を担当とする「ホームドクター型コーディネータ」(HD型CDR)を矢崎総業へ派遣します。HD型CDRは矢崎総業の技術開発ニーズを深掘りし、産総研の技術シーズ及び研究開発ポテンシャルとのマッチングを図ることで、数年後の実用化を目指す次世代自動車部品等に関する研究開発課題を企画・立案します。また、両者で連携課題の検討と進捗状況及び成果の管理を行うための「連絡会」を設置し、定期的に開催します。HD型CDRは、企画・立案した研究開発課題をこの「連絡会」及び矢崎総業内の技術審議会に提案し、承認された課題を共同研究あるいは産総研の受託研究として産総研が実施し、その成果として得られた知的財産権は両者で共有します。さらに、産総研が雇用したポスドク等をこれらの連携研究に従事させ、研究開発終了後に矢崎総業がこれらのポスドク等の雇用に進むように、産業技術人材育成を行います。
吉川 産総研理事長(左)、矢崎 矢崎総業代表取締役社長(右)
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産総研は、7年前の独立行政法人化以来、産業界との連携について様々な経験を重ねてきました。その結果、産業ニーズと産総研のポテンシャルをさらに効果的・効率的にマッチングさせるための新たなスキームの必要性を認識し、これについて模索していました。
一方、矢崎総業では自らの研究開発ポテンシャルを強化するために、産総研のシーズと自らの開発ポテンシャルとをうまくマッチングできる方策を検討し、今回のHD型CDRの配置を産総研に提案しました。
この提案が、産総研の模索に対する一つの回答となりうることから、試験的にこのような取り組みを矢崎総業と行うことで合意しました。とくにHD型CDRの取り組みは、産総研が配置するCDRが頻繁に矢崎総業に行き、企業の技術開発ニーズについて深く知り得る立場になることから、今回の協定締結の運びとなりました。
本協定に基づき、産総研はすでにHD型CDRを配置し、矢崎総業への派遣を開始しました。今後、このHD型CDRによる矢崎総業の技術開発ニーズの深掘りと産総研の技術シーズ及び研究開発ポテンシャルとのマッチングを早急に進め、年内に数件の連携研究の開始を目指します。
矢崎総業(株)は、カーメーカーの系列に属さない独立系自動車部品メーカーであり、自動車用組電線(ワイヤーハーネス)を主力に各種メーター等を製造している。ワイヤーハーネスのシェアは世界トップクラス。現在38カ国で事業を展開し、従業員は国内外合わせて20万人を超える。非上場企業であるが、売上規模は国内が約8,000億円、海外が約6,500億円(2007年6月現在)。1941年の創業以来、環境への取り組みには特に力を入れており、近年では廃ガラスリサイクル事業や木質バイオマス事業等に着手している。また、科学技術の振興を目的として、1982年に財団を設立し、以来毎年、研究助成金を贈り研究者を育成・支援している。