2008/04/18
3機関が先端的安全・安心技術に係る研究協力協定を締結
-NIMS-AIST-JAXA の連携で非破壊信頼性評価の研究を開始-
概要
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独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄「以下NIMS」)、独立行政法人産業技術総合研究所(理事長:吉川 弘之「以下AIST」)、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(理事長:立川 敬二「以下JAXA」)は、先端科学技術分野や社会の安全・安心に必要不可欠な材料や構造物等の非破壊信頼性評価分野において、わが国の科学技術及び産業界の振興に資することを目的としたNIMS、AIST、JAXAの3機関による非破壊信頼性評価に関する研究協力協定を締結する。これにより、3機関の研究能力および人材、最先端設備等を活用、連携協力することにより、相乗効果を高める。
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NIMS、AIST、JAXAは、従来から物質材料の開発・信頼性評価やロケット、プラント等構造物の非破壊検査分野において研究開発を行ってきた。今回の研究協力協定締結により、JAXAが研究開発するロケット等を対象とした高度信頼性が要求されるような非破壊信頼性評価手法をNIMSが保有する物質・材料評価技術、AISTが保有する先端計測技術と構造物の検査技術を基礎技術として融合させ、従来にはなかった材料-構造-システムと一体化した応用技術の開発を目指す。
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今回の連携協力は単に3機関による共同研究開発にとどまらず、3機関共同で「材料や構造物等の非破壊信頼性評価の分野」の現状を調査分析し、定期的に研究会・フォーラムを開催することにより、宇宙航空等の先端分野に限らず、産業社会のインフラストラクチャーであるプラント設備や橋梁等の建築物等の検査の在り方への提言を行う。これにより、鋼構造物等の非破壊検査技術、信頼性評価技術の開発等を我が国の科学技術および産業の発展、さらには国内・国際シンポジウムを共催して広く大学・産業界との連携協力を目指す。今回の研究協力協定締結が新たな分野融合の技術交流を生み、大学との連携を通じた次世代を担う人材育成、企業との連携を通じた新産業の創製等に大きく貢献するものと期待される。
連携協力の概要
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実施概要
NIMS、AIST、JAXAは、より効果的、かつ適正に連携・協力を推進するために3機関による研究協力協議会を設置し、非破壊信頼性評価分野に関して以下の内容を実施する。
1)共同研究
2)調査分析・研究会・フォーラム等の定期開催
3)国内・国際シンポジウムの共催(毎年)
4)検査・評価技術への提言と規格提案
5)装置開発
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共同研究
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宇宙輸送システムの非破壊信頼性評価
固体ロケットモーターの品質保証方法および液体ロケットエンジンの寿命評価方法を開発する。
非破壊信頼性評価技術は、JAXA事業、特に固体ロケットモーターの信頼性向上に必要不可欠な技術として貢献してきたが、ロケットの高性能化やコスト削減要求に伴い、その変化に対応できる技術研究が必要となってきた。
JAXAにおける固体ロケットモーターの品質保証のため、非接触超音波により欠陥位置を検出し、欠陥の大きさを評価する手法を3機関共同で開発する。
また、液体エンジンにおける寿命評価方法として、エンジンにおける回転部材の運転状況について、レーザー超音波1)によるヘルスモニタリング手法2)をJAXAおよびAISTで開発し、さらには、燃焼室の損傷をレーザー超音波を用いて評価する手法をJAXAおよびNIMSで開発する。
上記プログラムに加え、検査方法等の得られた成果を規格にまとめて公開することで、産業界においても幅広く利用できるようにする。
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先端光計測技術による複合材料・接合部の劣化・損傷評価
レーザー超音波やテラヘルツ波3)といった先端光計測技術を用いて、ロケットや航空機の機体等にも用いられているFRP(繊維強化プラスチックス)構造物及びジェットエンジンやガスタービンに用いられている耐熱コーティング、並びに発電設備や化学プラントで用いられている高温鋼構造物を対象として、欠陥や劣化・損傷を非接触で検出する手法を開発する。
JAXAで用いられる材料を対象に、それらの使用条件における損傷形態の解析をJAXAおよびNIMSで行い、計測方法の研究開発をAIST及びNIMSで行う。
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調査分析・研究会・フォーラム、シンポジウム等の定期開催
NIMS、AIST、JAXAにおいて大学、企業とのネットワークを作り、非破壊による信頼性評価に関する調査分析・研究会を年4回程度開催し、その成果を各機関が開催するフォーラムや学協会の講演会等の中で発表する。また、国内外の著名人を集めたシンポジウムを3機関共催で毎年開催する見込みであり、本年7月にはつくば市で第1回のシンポジウムを行う予定である。
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検査・評価技術への提言と規格提案・装置開発
宇宙航空等の先端分野のみならず広く産業社会のインフラストラクチャーであるプラント設備や橋梁等の建築物等の検査の在り方についても非破壊による信頼性評価の視点から提言を行う。
レーザーを用いたAE4)、振動、超音波やテラヘルツ波といった先端光計測技術を用いた非破壊信頼性評価に関する研究成果を、広く産業界で利用可能にするために、測定方法から評価方法を含む各学協会の国内規格やJIS規格、ISOなどの国際規格にまとめ、提案する。また、規格作成とともに検査装置の開発も行う。
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期間
平成20年4月18日から平成22年3月31日までとし、その後は、3機関の協議により、1年単位で延長される。
用語の説明
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1)レーザー超音波
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レーザーを用いた非接触の超音波探傷法。試験片にレーザー照射して超音波を発生させ、その伝播挙動から材料内の欠陥の存在や、特性変化を評価する。発生させた超音波を再びレーザー技術により検出することで、完全な非接触評価ができる。[参照元へ戻る]
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2)ヘルスモニタリング
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エンジンが損傷無く正常に運転していることを、動作中に確認しながら運転すること。 [参照元へ戻る]
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3)テラヘルツ波
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電磁波と光波の中間領域の周波数帯域(周波数100GHzから10THz:波長30μmから3mm)の電磁波で、従来は遠赤外線からミリメートル波と呼ばれていた領域。近年、空港でのX線に代わる薬物検査やスペースシャトルの耐熱タイルの剥離検査などの非破壊検査に応用が始まっている。[参照元へ戻る]
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4)AE
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アコースティック・エミッション(音響放出)の略。材料が微視的に壊れたときに発生する超音波帯域の振動を検出して、発生位置や大きさ、割れの種類を評価する手法。その原理は地震波と同様である。[参照元へ戻る]
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