独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)は、つくばセンターに「ナノチューブ応用研究センター」【研究センター長:飯島 澄男】を4月1日に設立しました。
産総研ではこの7年来、ナノカーボン研究センターならびに界面ナノアーキテクトニクス研究センターにおいて、ナノチューブ材料(カーボンナノチューブ、有機ナノチューブ等)の製造技術、および世界最高性能計測・分析技術を独自に開発してきました。本研究センターでは、新産業創生で期待されるナノ構造体の代表であるナノチューブ構造に着目し、これまで産総研で開発してきたカーボンナノチューブと有機ナノチューブを主軸とし、高機能性を付加した上で、その用途開発を進めるほか、ナノチューブ材料の国際標準化にも貢献していきます。わが国の新たな産業育成に貢献するとともに、世界をリードするナノチューブ材料応用開発に関わる総合研究センターへ発展させます。
ナノテク素材は既存の材料にはない優れた特性を有するために高い期待が持たれています。とくに、カーボンナノチューブや有機ナノチューブ等のナノチューブ材料は高強度部材、薬剤の包接用材料等として社会・産業界から高い期待が寄せられていますが、低コスト化などが大きな課題となっていました。これまでに産総研では、ナノチューブ材料の大量生産技術の開発に世界に先駆けて成功しており、その結果、ナノチューブ材料の潜在的高機能性を発揮できる応用開発に対して、そのさらなる進展に注目が集まりつつあります。
産総研発足以来の7年間において、ナノカーボン研究センターにおいては、スーパーグロース法、流動気相成長法等の単層カーボンナノチューブの大量合成法の開発に成功し、電子材料応用等への産業化に向けて大きなブレークスルーをもたらしました。一方、界面ナノアーキテクトニクス研究センターにおいては、両親媒性分子などの自己集合を利用した有機ナノチューブの大量合成技術の開発に成功してから、ナノバイオ応用関連企業から大きな期待を集めています。産総研では、ナノチューブという特異的な構造の持つ潜在的なポテンシャルの高さに注目し、その能力を最大限に発揮する材料の開発、ならびにその応用領域を拡大することを目的として、異種材料の研究者の参画のもと新研究センターを設立することとなりました。
本研究センターでは、これまで産総研において開発してきたカーボンナノチューブと有機ナノチューブを主軸として、高機能性を付加し、それらの用途開発を進めるほか、ナノチューブ材料の国際標準化においてイニシアティブを発揮し、わが国の新たな産業育成に貢献する研究を行います。
具体的には、以下の研究開発を行います。
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ナノチューブ材料の実用化・産業化
ナノチューブ大量合成技術のさらなる高度化をベースとして、カーボンナノチューブでは電子材料、高強度構造材料等に向けた応用開発を、有機ナノチューブでは薬剤包接材料等に向けた応用開発を進めます。
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ナノチューブ複合材料の創製・実用化
カーボンナノチューブ、有機ナノチューブ、両材料の接点として、ナノチューブの化学加工や複合化をもとに、バイオ応用等をターゲットとする高機能性ナノチューブの開発を進めます。
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世界最高性能計測・分析技術の確立およびナノ物質コーティング応用
超高性能電子顕微鏡や光学的評価技術をベースとしたナノチューブ材料の計測・分析技術を確立するとともに、ナノ物質コーティング応用研究を進めます。
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ナノチューブ材料の標準化・リスク評価
本研究センターの高純度・高品質ナノチューブ、および高性能計測・分析技術を用いて、ナノ物質の国際標準化におけるイニシアティブを発揮します。また、リスク評価においては産総研内外と連携して取り組みます。
これらの研究開発により、わが国の新たな産業育成に貢献するとともに、世界をリードする炭素系から有機系までを網羅するナノチューブ材料の総合研究センターへの発展を目指します。
本研究センターでは、ナノチューブ材料を21世紀のわが国の基幹材料として進化させ、これらの材料の実用化・産業化において、世界に対し確固たる優位性を確保していきます。その上で、世界的共通課題であるエネルギー・環境問題、情報・通信分野、ライフサイエンス・医療分野などに大きく貢献するとともに、ナノチューブ材料の国際標準化にも貢献していきます。