独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)は、産学官連携の一層の推進とその成果の活用促進を通じてイノベーションの推進を加速するため、企業との共同研究で創出された共有の知的財産権(以下「共有知財」という)の取扱について、一部変更を行うこととしました。この変更は平成19年9月1日より適用いたします。
主な変更点は、共有知財の自己実施に関し不実施補償料を請求するという従前の原則を、次の条件を満たす場合においては、不実施補償料を請求しないこととする点です。
1)共同研究によって創出された共有知財であること。
2)実施の際、非独占で、かつ自己実施であること。
3)共同研究の実施に際し、企業から一定額以上の研究資金の提供があること(「一定額」については下表参照)もしくは国が推進する研究開発プロジェクトの下での共同研究であること。
ただし、上記3)以外の共同研究であっても、創出された共有知財の不実施補償料の支払い方法に、いくつかの選択肢を設けました。また、別途、権利の移動により、知財の単独での権利化も可能にしました。
これにより、共同研究相手企業による研究成果の事業化が促進され、イノベーション創出が加速されることが期待されます。
なお、共有知財の独占実施の場合は、従前どおりの不実施補償料を請求します。
表 共同研究により創出される共有知財の取り扱い
現在、産学官連携を基軸とした知的創造立国への取り組みの必要性が叫ばれ、共同研究の効果を高めるための様々な立法措置や公的資金による支援が行われています。こうした動きに呼応して、産総研もイノベーション推進の主体となる企業との広範な連携と、連携の成果である共有知財の活用が重要であるとの認識のもと、企業との連携による共同研究を推進してきたところです。
一方、産総研は平成13年6月に策定した「産総研技術移転ポリシー」の中で、「産総研は、知的財産権について不実施機関であり、自らの知的財産権を実用化・事業化することはないので、実施をする者から実施料を原則徴収することにより、利益の還元を図る。」と定め、共有相手方か第三者かを問わず、すべての知的財産権の実施者に対して実施料を請求するものとし、共同研究の成果である共有知財についても、共有相手方にいわゆる不実施補償料を請求することを原則として参りました。
しかしながら、共同研究先企業からは、特に契約内容の調整局面において、共有知財のより柔軟な取扱いが要望されていました。
そこで、産総研はイノベーション推進の主体となる産学官連携の一層の推進と、産学官連携の成果の活用を加速するため、共同研究の成果として創出される共有知財の取扱に関して見直し、その活用方針を緩和することといたしました。
今回の見直しでは、企業との連携強化によるイノベーション推進の視点、および相応の対価を獲得する視点を設け、両者を矛盾なく両立させるための新しい仕組みについて検討しました。
その結果、産総研が企業と共同研究契約を締結する際に、次のいずれかの条件を満たす場合には、その成果として創出された共有知財を共有相手企業が非独占的に自己実施しても、産総研は不実施補償料を請求しない取り決めとすることとしました。
1)企業から一定額以上の研究資金の提供があること(「一定額」については表を参照)
2)国が推進する研究開発プロジェクトの下での共同研究であること
なお、上記1)の研究資金は、共同研究により強い特許を創出するために十分な研究推進体制を構築するため、との趣旨で受領するものです。
また、上記以外の共同研究であっても、創出された共有知財の不実施補償料の支払い方法に、いくつかの選択肢を設けました。
さらに、共有知財の出願に際し、権利の移動により、単独での権利化を可能としました。
なお、本制度の運用は、平成19年9月1日から開始します。
|
図 共同研究によって創出された知財の取り扱いのフローチャート |
今回の共有知財の取扱方針の緩和によって、共同研究契約がより迅速に締結されることとなり、企業と産総研の連携が容易になると期待されます。その結果、共同研究によって得られた研究成果の産業界への移転が促進されるだけではなく、企業との連携が強化されることで、産総研の研究成果の社会への還元と、これらによるイノベーション推進が加速されることが期待されます。
また、社会ニーズに対応する知財の創出の活性化が期待されることから、産総研が提唱する
本格研究の発展が促進されるものと期待されます。