産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2007/07/25

広島大学と産業技術総合研究所が組織的連携・協力に関する協定を締結
-バイオマス利用を基軸とする循環型エネルギー・環境社会構築をめざして-

ポイント

  • アジアをターゲットとしたバイオマス利用展開を、バイオマスエネルギーの研究拠点としての産総研中国センターと、醸造工学の伝統に基づく高い研究ポテンシャルと社会科学も含めた幅広い研究領域を持つ人材育成拠点としての広島大学が連携の下に協力して実施
  • 環境・エネルギー、地質、ナノテクノロジー・材料、標準・計測などの先端・基礎領域においても、循環型エネルギー・環境社会を構築するために広く研究協力を実施
  • 学術・産業の振興と合わせて地域産業への貢献を視野に入れ研究開発を共同して推進

概要

 国立大学法人広島大学【学長 浅原利正】(以下「広島大学」という)と独立行政法人産業技術総合研究所【理事長 吉川弘之】(以下「産総研」という)は、本日、「バイオマス利用を基軸とした循環型エネルギー・環境社会構築における研究分野」に係る研究開発・人材育成等、相互協力が可能な事項について、両機関の連携・協力を促進することで、相互の研究開発能力及び人材等の総合力を発揮し、我が国の学術及び産業技術の振興に寄与するため、相互の連携・協力に関する協定を締結した。

 本協定は、バイオマス利用を明示的に示す形での組織的連携・協力協定である。特に、アジアをターゲットとしたバイオマス利用展開を、バイオマスエネルギーに関する国内最大の研究拠点である中国センター【所長 松永烈】をはじめとした産総研と、発酵・醸造工学の伝統に基づく高い研究ポテンシャルと社会科学も含めた幅広い研究領域を持つ人材育成拠点である広島大学が、連携の下に協力して実施する。

 また、バイオマス利用技術以外でも、環境修復技術、ものづくり技術など、環境・エネルギー、地質、ナノテクノロジー・材料、標準・計測などの先端・基礎領域において、循環型エネルギー・環境社会を構築するための研究分野に関して、広く研究協力を実施する。

 さらに、本協定に基づき両者は、相互の研究開発能力及び人材等を活かして先端・基礎分野の共同研究とその応用研究、新事業の創出、世界で活躍できる研究者の育成等総合力を遺憾なく発揮することにより、我が国の学術及び産業技術の飛躍的な発展に貢献することを目指す。また、これにより、地域産業の活性化と新事業の創出に貢献することも目標とする。

調印の写真
吉川 産総研理事長(左)、浅原 広島大学長(右)

経緯

 広島大学と産総研との間では、これまでも環境・エネルギー、地質、ナノテクノロジー・材料、標準・計測などの先端・基礎分野における研究協力を実施している。また、人材育成においては、平成13年度より広島大学大学院生物圏科学研究科と産総研との連携大学院制度を実施し、若手研究者や技術者の育成と学生に対する教育を推進してきている。

 また、広島大学バイオマスプロジェクト研究センター産総研バイオマス研究センターは、平成18年10月バイオマス利用におけるアジア展開を推進する目的で協力して活動することに合意し、共同でアジア・バイオマス・センターを設置、協力して外部研究資金を獲得するべく活動してきた。

協定の内容

 研究開発としては、バイオマス資源賦存量の多いアジア地域への展開を視野に入れたバイオマス利用の分野を中心として、循環型エネルギー・環境社会構築技術の分野において、共同で密接な取り組みを進めていく。

 具体的には、科学振興調整費テーマ「アジアの持続可能バイオマス利用技術開発」を産総研が中核となって受託し、産総研と広島大学で共同研究を開始している。また、人材育成については、バイオマス利用、瀬戸内海を中心とする環境修復技術、ものづくり技術等で、産業界の即戦力となる次世代の研究者や技術者の育成を行っていく。

今後の予定

 今回、協定の締結により、全国に展開する産総研の研究組織と広島大学の全学組織の相互協力がより一層促進し、両者間の研究協力による新たな産学官連携や、地域の技術特性を踏まえた世界最高水準の共同研究開発を行う予定である。また、広島大学の研究成果の実用化等、産業界への受け渡しが、産総研の第2種基礎研究の成果を活用することにより、よりスムーズになることが期待される。

用語の説明

◆バイオマス
木、草、家畜排泄物、生ゴミなど動植物から生まれる再生可能な有機物資源のこと。バイオマス利用の例は、製材所の残材から製造する自動車用液体燃料で、炭酸ガスの放出の無い再生可能な代替エネルギーとして注目されている。[参照元へ戻る]
◆循環型エネルギー・環境社会構築
物質の循環利用、エネルギーの有効利用を実現する社会で、地球の温暖化を防ぎ、環境汚染を低減するための技術開発により構築する。[参照元へ戻る]
◆発酵・醸造工学
微生物を用いて有機物をエタノールなどの有用物質に変換する工学。米から酵母菌を使って酒類を製造する技術も含まれる。[参照元へ戻る]
◆環境修復技術
瀬戸内海等の閉鎖性水域の汚染された環境を改善する技術、たとえば、水に含まれる溶存酸素量を増加させることにより水質を改善する技術、藻を生息させることによる土壌汚染を低減させる技術などがある。[参照元へ戻る]
◆広島大学バイオマスプロジェクト研究センター
広島大学のバイオマス関連研究者約10名により構成される学科横断的な組織で、発酵・醸造工学、超臨界技術利用、熱工学などを専門とする研究者の集合体で、バイオマス関連プロジェクトの企画と推進を目的としている。[参照元へ戻る]
◆産総研バイオマス研究センター
木質系バイオマスから、生物的・化学的な手法で自動車用液体燃料を製造することを集中的に研究開発する6年半の時限的な研究センター組織で、中国センターを拠点として活動し、ポスドク等を含め約70名で構成されている。[参照元へ戻る]
◆第2種基礎研究
確立された技術シーズが、実用化に至るまでのプロセスを加速することを目指す研究で、いわゆる技術開発の死の谷の越え方に、汎用的な方法論を見いだす研究。[参照元へ戻る]