独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)は、バイオインフォマティクスを用いた創薬支援技術を中心とした産業技術開発のために、平成19年4月1日付けで産総研・臨海副都心センターに「生命情報工学研究センター」【研究センター長 浅井 潔】を設立しました。
産総研では平成13年度から臨海副都心センターを中心に、コンピュータを用いたゲノム情報解析やタンパク質立体構造予測などのバイオインフォマティクス研究を進めてきました。本研究センターでは、これらの研究を継承・発展させることで、より実用的な技術の開発を目指しており、コンピュータ上で分子設計や副作用予測などを効率よく行う創薬支援技術などを研究・開発します。
また、産総研・臨海副都心センターで推進してきた産学官連携を引き続き重視し、企業・大学との共同研究を発展させるとともに、我が国の産業競争力の強化のために不可欠な、この分野の人材の養成・拡充にも取り組みます。
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図:生命情報工学研究センターが推進する、バイオインフォマティクス情報基盤統合
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ヒトゲノム配列や生体高分子など生命情報に関する膨大なデータが蓄積するようになり、これらのデータ中から真に重要な情報を読み解き、整理整頓する技術が必要になりました。その必要性に応えると同時に、コンピュータによるシミュレーションによって様々な生命現象を分子レベルで理解、予測することを目指して、バイオインフォマティクスが発展してきました。
バイオインフォマティクスは、様々な生命情報の解析に応用されているだけでなく、創薬支援にも役立つと期待されています。例えば、薬の候補となる化合物の選抜や副作用の確認は、多額の費用のかかる実験室での実験に多くを頼っています。コンピュータ上でこれらの実験結果を予測できれば、候補化合物の絞り込みや副作用予測が可能となります。その結果、実験が効率化され、大幅な研究費用の節減につながると考えられます。
生命情報工学研究センターでは、産総研が蓄積してきたバイオインフォマティクス技術を継承・発展させ、生化学などの解析から得られた様々な結果からコンピュータを用いて生体反応における規則性や法則性などを見いだすための新たな情報処理技術の開発を行い、薬剤と生体分子との複合体の構造や機能予測、遺伝子の発現制御機構の解明、細胞内における生体反応ネットワークの動態予測等を解析します。これら開発過程で作成したソフトウェアやデータベースとセンター外のソフトウェアやデータベースを最新の情報処理技術を用いて統合化し、創薬の分子設計や副作用予測などを効率よく行える創薬支援や生体物質の機能を知るための知的基盤を構築するバイオインフォマティクス情報基盤統合を推進します。
また、産総研・臨海副都心センターで推進してきた産学官連携を引き続き重視し、企業・大学との共同研究を発展させるとともに、この分野の人材の養成・拡充にも取り組みます。これらの活動を通じて、本研究センターは我が国の産業競争力強化に貢献します。
生命情報工学研究センターは独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施している「細胞アレイ等による遺伝子機能の解析技術開発」、「化合物等を活用した生物システム制御基盤技術開発」および「機能性RNAプロジェクト」に参加します。
バイオインフォマティクスを用いた創薬支援技術を開発し、ヒトゲノム情報を利用したテーラーメイド医療の実現に貢献します。