産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2004/12/22

産総研と東大が協力協定を締結

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)と国立大学法人 東京大学【総長 佐々木 毅】(以下「東大」という)とは、両機関の連携・協力を促進し、相互の研究開発能力および人材等を活かして総合力を発揮することを目的に、12月22日に協力協定に署名することとなった。本協定に基づき共同研究や人事交流など多角的な連携協力事業の展開を予定するが、特に、学術研究と教育を担う東大と産業技術の研究開発をミッションとする産総研が、それぞれの機能と持ち味そして資源を活かして相互補完的にまた相乗的に作用し合うことによって、人類社会に顕在化する様々な問題の解決や新しい産業創出により大きく貢献することが期待される。

 両機関の協力形態は、我が国唯一の産業技術研究機関である産総研と大学法人との今後の協力関係のモデルとなるものであり、機関それぞれ固有のポテンシャルを他機関の機能と組み合わせることによって相互に発展を図ることを可能とするモデルとして、今後全国に波及することが予想される。

 今回の協定により、両機関においてすでに行われている研究協力の組織的・体系的な加速と新規の共同研究課題の発掘に取り組むこととなるが、従来の協力関係に見られなかった新しいチャレンジを行う。

 現時点で具体化している構想は以下の1、2のとおり。 

  1. 研究協力の合同拠点を形成

    (1)バイオインフォマティクス
     産総研臨海副都心センターに東大のバイオインフォマティクスの研究チームが拠点を設置し、また逆に産総研のバイオインフォマティクスの研究チームが東大キャンパスに拠点を設けることで両機関の研究者の随時交流を実現する。また、こうした双方向合同拠点における理論研究と産業技術研究の融合を通じて、内外の人材集積をはかり、国際拠点への発展を目指す。

    (2)情報通信
     秋葉原再開発構想によって実現する情報拠点ビル(秋葉原ダイビル、平成17年3月オープン予定)に東大情報系研究組織と産総研情報系研究組織が入居し、交流拠点を形成する。また、同ビルには情報通信系企業の入居も予定されており、次世代の戦略的ソフトウェア技術等の産学官連携研究拠点として機能する。同ビルには産学官連携のための専用的な施設も用意されることから、情報通信研究の交流を随時、多様に行う一大拠点となる。
     
  2. 研究開発人材を養成し、多様な活躍の「場」を形成

     産業技術研究機関である産総研と学術研究と教育を担う東大がコンカレントに研究で結びつき、その接点に若手の研究人材(ポスドク*中心)を配置することによって、高度な研究能力をもった、かつ実践的な研究リーダーを養成することができる。さらに上述の拠点研究活動に産業界の若手研究人材も参加して文字通りの産学官協力を展開し、産学官共同の「場」で養成される新しい研究人材の蓄積を図る。このような「場」を通じて実践的な能力を身につけた研究人材は、産業界へ転出して新規事業創造に従事することや、アカデミーの「場」で実践的な能力を活かした科学技術の体系的創成を行うこと、あるいは産総研でリーダーとなって産学官連携プロジェクトを立案、牽引するとともに、色々な共同研究の「場」等において、産総研および民間の実践的な若手研究者の育成にも当たるといった多様な活躍の「場」を選択することが可能となる。世界に通用するこうした研究人材は国の重要な資産であり、今回の協力協定は、その育成と活用の好循環の形成につながるものと考える。
     
  3. その他の計画

     産総研と東大は、活力ある持続可能社会実現を目指した長期エネルギービジョンおよび研究開発シナリオの策定と、それに基づく連携研究等について計画中である。

*ポスドク:「ポスドク」とは、ポストドクターの略で、博士課程を修了している、常勤雇用される前の若手の研究者のこと。多くは大学・公的研究機関などで非常勤職員として雇用され、我が国の研究活動を支えている。