独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)が整備をすすめていた、産官学共用のナノプロセシング施設「AIST-NPF(Nano-Processing Facility)」が、このほど産総研つくばセンター・つくば中央第2つくばOSL【つくば市梅園1-1-1】内(延床面積1200m2)に完成し、産総研内外の研究者による施設利用が6月より開始された。
AIST-NPFは、ナノテクノロジーの基盤研究の加速とその応用開発を追求するための共用研究開発施設で、産総研の研究者や産総研の受託プロジェクトの支援を行うのみならず、民間企業に微細加工のアウトソーシング先としての新たなオプションを提供し、ベンチャー企業のアイデア実証支援、ナノテクノロジーに関わる人材育成のためのスクールの開催等を実施している。
AIST-NPFは、平成13年度より運用を開始しているが、この度、産総研つくばセンター・つくば中央第4より、つくば中央第2つくばOSLに移転し、施設の整備、設置装置の大幅な拡充を行ったもので、最先端のナノテクノロジー関連の装置類を備え、産総研内外の研究者がバリアフリーで利用できる産官学共用ナノプロセシング施設としては国内最大規模の施設となる。
AIST-NPFの設置目的は、電子工学、光工学、分子工学、計測工学、環境・バイオ・テクノロジー関連の研究者が、次世代電子デバイス、超高密度情報記録素子、分子デバイス、各種センサーなどの研究開発を通じて、各研究者の創意を融合し、21世紀に期待されるナノテクノロジー応用製品に結びつけ、新規産業の開拓を行うことである。既に、現在200名を超す産総研内外の研究者が、AIST-NPFを利用している。
AIST-NPFは、600m2のクリーンルームを有しており、露光装置、成膜装置、微細加工装置、デバイス評価装置、形状分析装置などが設置されている。微細加工のプロセスにより3種類のクリーン度の異なる部屋に分かれており、最もクリーン度の高いクラス100では、紫外線を用いた露光装置によるリソグラフィを行い、クラス1000のクリーンルームには2台の電子ビーム描画装置やマスクレス露光装置によるリソグラフィを行う。クラス10000のクリーンルームでは、微細加工や、顕微鏡や分析装置による計測評価を行う。
また、産総研では、AIST-NPFを拠点として文部科学省の委託事業「ナノテクノロジー総合支援プロジェクト(平成14~18年度)」の「ナノレベルでの極微細加工・造形支援」の一環として「ナノプロセシング・パートナーシップ・プログラム」を実施中である。ナノテクノロジー総合支援プロジェクトは、我が国におけるナノテクノロジーを戦略的に推進し、最先端の設備・施設の外部研究者への利用機会拡大、国内外の最新情報提供などにより、産官学の幅広いナノテクノロジー研究者のニーズに応え、総合的に研究活動を支援することが目的である。この中で、ナノプロセシング・パートナーシップ・プログラムは、産総研外のあらゆるナノテクノロジー研究者に、極微細加工・造形支援をバリアフリーで提供することを目的としており、ナノプロセシング・パートナーシップ・プログラムの支援を受けて、産総研外のユーザーが、自らAIST-NPFの装置を操作して試料作製や測定・評価を行うことができる。また、微細加工のアウトソーシング先として産官学のR & Dに新たなオプションの提供や、ベンチャー企業のアイデア実証に対する支援、トレーニングやスクールなど様々な人材育成活動を実施している。
産官学共用のナノプロセシング施設「AIST-NPF」の完成とともに、施設の整備、設置装置の大幅な拡充を行っており、これまで以上に高度な装置類の利用及び、多くの利用者を受け入れることが可能となり、さらなるナノテクノロジー研究の推進に貢献を行っていく予定である。
微細加工や、顕微鏡や分析装置による計測評価を行うクラス10000のクリーンルーム内の写真
シリコン基板上にレジストマスクを形成後、エッチングして得られた構造の電子顕微鏡写真(下はその拡大写真)
Au/GaAs接合によるショットキーダイオードのレーザー顕微鏡像
分子検出用マイクロ電極アレイにマイクロ流路を取り付けた生体分子選別用マイクロフルイディクスの顕微鏡写真
GaAs系の発光ダイオードに強磁性体を組み合わせたスピン偏極電子注入素子をチップキャリアーにマウントし、ワイヤーボンデイングをほどこしたデバイスの写真