産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2004/03/29

平成16年度 産総研・工業標準化研究のテーマを決定
-「産総研・工業標準化ポリシー」に基づき、研究開発と標準化の連携を目指す-

ポイント

  • 産総研は、平成16年度工業標準化研究(「標準基盤研究」及び「エネルギー・環境技術標準基盤研究」)を実施するテーマを決定した。
  • 産総研の研究開発成果を、工業標準化を通じて普及するために必要な研究として14テーマ、経済産業省等行政からの要請に対応した工業標準化のために必要な研究として14テーマ、合計28テーマを決定し、それぞれ実施する。
  • 平成16年度工業標準化研究テーマの決定は、平成15年11月に制定した「産総研工業標準化ポリシー」に基づき、産総研が所を挙げて工業標準化への取り組みを強化していくことの一環として実施する。
  • 本件による工業標準化研究の成果を、日本工業規格(JIS)や国際規格(ISO,IEC)、国際的フォーラム等への提案を行い、世界標準としての採用を目指す。

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)成果普及部門【部門長 古橋 政樹】工業標準部は、産総研の研究成果の普及を促進すると共に、産総研の研究ポテンシャルを活用して、社会的ニーズや行政からの要請に対応し、我が国産業の国際的な競争力強化に資する工業標準化を戦略的に推進するため、所を挙げて工業標準化に取り組むこととし、平成15年11月に「産総研工業標準化ポリシー」を制定した。

 これに基づき平成16年度は、工業標準化研究制度として「標準基盤研究」14テーマ、「エネルギー・環境技術標準基盤研究」14テーマ、合計28の研究テーマを決定した。

 本件による工業標準化研究の成果を基にして、日本工業規格(JIS)や国際規格(ISOIEC)、国際的フォーラム等への提案を行い、国際標準としての採用を図っていく。

注)産総研工業標準化ポリシー概要
 国際標準の獲得が新技術の世界市場での普及に重要な影響を与えるようになっている。我が国の国際競争力強化の観点等から、研究開発と標準化の連携が重要な課題となっており、産総研は研究開発成果普及に資する国際標準化活動について所を挙げて取り組むこととした。

1.標準基盤研究

 産総研の研究開発成果の普及に資するため、社会ニーズ及び行政からの要請を反映しつつ、工業標準(JIS,ISO,IEC、国際的なフォーラム等の規格)の素案を作成することを目的とした研究を行う制度であり、工業標準化の前提となる基礎的データ等の関連情報の収集・蓄積・体系化や、試験評価方法の確立の基礎となる評価データの取得・分析等を行いつつ、JISやISO,IEC、国際的なフォーラム等への国際提案の素案を作成する。

 なお、「標準基盤研究」では、従来は対象外であった国際的なフォーラム規格も対象とし、IT分野など技術革新の速い分野も含めて、幅広い国際標準化に対応することとした。

 具体的には、GGF(グローバル・グリッド・フォーラム)でフォーラム規格の策定を目指す「グリッドにおけるコンピュータ呼出手続き方式」や、JIS及びISO規格を目指す酸化エチレンガスに替わる新しいガス滅菌方式である「C1ラジカル含有ガスによる滅菌方法」の標準化等、新規7テーマを決定した。

2.エネルギー・環境技術標準基盤研究

 エネルギー政策や環境政策の遂行の観点に立った経済産業省のからの要請に基づく標準化テーマについて、産総研の研究ポテンシャルを活用しつつ、工業標準化に取り組むための研究を行う制度であり、工業標準化の前提となる基礎的データ等の関連情報の収集・蓄積・体系化や、試験・測定装置の開発、試験評価方法の確立の基礎となる評価データの取得・分析等を行いつつ、JISやISO,IEC等への国際提案の素案を作成する。(経済産業省からの委託事業)

 具体的には、300℃以上の高温での使用が可能で損失が少ない新しい電力用デバイスとして期待されている「電力用SiC素子の高温状態における電気特性試験方法」や、燃料電池の性能比較に必要な「燃料電池発電効率試験方法」の標準化等、新規4テーマを決定した。

平成16年度全体の実施テーマは以下のとおり。

I.「標準基盤研究」の実施テーマ

(継続テーマ)
 ・火薬類及び火薬原料危険物の火災等に対する安全性評価試験方法
 ・グラファイト及び炭素材料の結晶構造の評価試験方法
 ・全リン、全窒素、全水銀分析の前処理法
 ・土壌中の有害金属の簡易分析技術
 ・難燃剤のリサイクル性
 ・PM2.5測定装置
 ・有効視野と視認性評価法

 

(新規テーマ)

 ・生体材料の切り欠き感受性評価方法
 ・高齢者による低周波音の不快度評価方法
 ・C1ラジカル含有ガスによる滅菌方法
 ・高性能ころがり軸受部材の転動疲労特性評価方法  
 ・質量計のロードセル及び指示計
 ・グリッドにおけるコンピュータ呼出手続き方式
 ・二次基準太陽電池モジュ-ル

II.「エネルギー・環境技術標準基盤研究」の実施テーマ

1.新エネルギー・省エネルギー関係

 ・ハイブリッド自動車の燃料消費率試験方法(ステップ2)
 ・燃料用ジ・メチル・エーテル(DME)の品質基準
 ・環境調和型建材
 ・簡易型水素センサー
 ・超電導フィルター用薄膜材料の表面抵抗測定方法
 ・微細結晶粒制御の軽量金属材料の評価方法

 

 ・燃料電池発電効率試験方法(新規テーマ) 

 

2.環境対策関係

 ・生分解性高分子材料の標準物質
 ・温室効果ガスの発生源インベントリー計測方法
 ・石炭中微量元素の分析方法
 ・フィルターの耐久性能試験評価方法

 

 ・木製サッシの性能試験方法(新規テーマ) 

3.電源開発促進対策関係

 ・電力用SiC素子の高温状態における電気特性試験方法(新規テーマ) 
 ・大面積超電導膜の臨界電流密度とその分布の測定方法(新規テーマ) 

※四角囲いが平成16年度新規テーマの名称

用語の説明

◆産総研工業標準化ポリシー
産総研が所を挙げて工業標準化に取り組むことを内外に示すために制定した産総研ポリシーの一つ。この他、パテントポリシー、技術移転ポリシー等がある。 [参照元へ戻る]
◆JIS
日本工業規格の略称で、我が国の工業標準化の促進を目的とする工業標準化法(昭和24年)に基づき制定される国家規格。 [参照元へ戻る]
◆ISO
国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)の略称で、世界各国の代表的標準化機関から成る国際標準化機関であり、電気及び電子技術分野を除く全産業分野(鉱工業、農業、医薬品等)に関する国際規格作成を行っている。[参照元へ戻る]
◆IEC
国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)の略称で、各国の代表的標準化機関から成る国際標準化機関であり、電気及び電子技術分野の国際規格の作成を行っている。[参照元へ戻る]
◆国際的なフォーラム
関係するメーカー、団体、個人などの関係者により構成される組織をフォーラムといい、国際的に広く開放されたフォーラムを便宜上「国際的なフォーラム」と呼んでいる。また、そこで作成される民間の標準のことをフォーラム標準という。フォーラム標準を作成している国際的なフォーラムとして、例えば、インターネットフォーラム(インターネット関連技術の標準化)、ITS America(ITS(高度道路交通システム)の標準化)等がある。[参照元へ戻る]
◆GGF
Global Grid Forumの略称で、グリッドコンピューティング技術の標準化を行う国際的なフォーラム。[参照元へ戻る]
◆グリッド技術
グリッド技術は高速ネットワークで接続された多数のコンピュータを必要に応じて共有することを可能とする次世代の情報基盤技術。[参照元へ戻る]
◆C1ラジカル
炭素数1の化合物において、炭素上あるいは酸素上に不対電子を有する化合物を総称して「C1ラジカル」という。この研究では、ヒドロキシメチルラジカル、メトキシルラジカル、アシルラジカル、アシルペルオキシルラジカルなどがある。[参照元へ戻る]
◆SiC
シリコンカーバイト(SiC)は、シリコンよりさらに絶縁破壊電界強度、熱伝導率、許容動作温度などの物性値が高い、つまり、電力用デバイス材料としての性質が優れており、大電力を扱う素子に向いている。[参照元へ戻る]