産総研【理事長 吉川 弘之】が所有している植物成長調節剤に関する知的所有権及び研究成果を移転したベンチャー企業(株式会社東海グローバルグリーニング【代表取締役社長 景山 英治】)が、平成15年3月12日(水)付けにてAISTベンチャー企業として認定された。これにより、産総研中部センターとして2社目のAISTベンチャー企業が誕生した(産総研全体では13番目)。
同社は平成14年9月10日に設立され、産総研セラミックス研究部門【部門長 亀山 哲也】 植物成長剤開発応用連携研究体長 片山正人が役員兼業の承認後に同社に役員として参加する予定であった。平成15年1月下旬に役員兼業が承認され、同年2月に取締役に就任した。同社は今回のAISTベンチャー企業の認定(成果活用型)を受けることで産総研から様々な支援措置を受け、平成15年度早々より積極的な事業展開を図る予定である。
現在地球環境問題が極めて深刻化し、それに拍車を掛けるように世界の人口も毎年7,700万人増加し、2003年1月現在約62億7,000万人といわれ、西暦2050年には現在の約1.4倍を越える約90億人に達するであろうと推定されている。しかしながら、地球温暖化による耕作地の減少によって穀物生産量が減少することは必至で、現状のままでは90億人に上る食糧供給は不可能であり、同時にエネルギーも現在と同様の消費が続けば、その供給は不可能である。
電力・自動車業界は化石燃料の大量消費に伴う膨大な二酸化炭素の排出に対する防止対策の一つとしてオーストラリア等で大規模な植林を進めており、この二酸化炭素を確実に固定できる植林は、二酸化炭素を減少させる方法として地球に最も優しい方法である。森林は地球温暖化の原因である二酸化炭素の重要な吸収源であると同時に表土流出や洪水の防止、生物種の保護等極めて重要な役割を果たしている。そこで、まず世界各地の植林可能な荒廃地に森林を再生して大量の二酸化炭素を吸収・固定させ、続いてその領域を拡大することによってこれらの問題を解決していくことが可能である。
森林を再生するには、植林するための苗木を如何に効率よく大量に調製することができるかが極めて重要であるが、種子から苗木への生長は長時間を要するのみならず、大量の種子を得ることも困難な場合が多いため、挿し木によって苗木を調製することができれば、その大量生産が可能となる。そのためには、植物の最も重要な器官の一つである根の発生や成長を促進することが極めて重要であり、それらを促進する植物成長調節物質(Plant Growth Regulator, PGR)の開発が重要な研究課題の一つである。
本移転技術である植物成長調節剤、特に発根促進剤及びその処理方法は、植林用苗木を大量に調製することを可能にするものであり、その評価試験等が行われている。発根促進剤の一つが、タイ国農業・協同組合省の所属機関である森林工業機構(Forest Industry Organization, FIO)との共同事業として植林への応用試験が進められている。
ジャイアントアカシアに促進剤を散布処理した例
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植林されたユーカリの森
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株式会社東海グローバルグリーニングは、産総研が所有している植物成長剤及びその処理方法に関する知的所有権及び研究成果を基に、地球環境問題の解決、特に地球温暖化防止を目的として新規な植物の細胞増殖や生長を促す薬品や栄養剤の開発を行うとともに、二酸化炭素の排出処理や緑化事業を推進するために設立された。
同社は以下の5つの事業を柱としている。
1)植物の細胞増殖及び成長を調整する薬品、栄養剤の研究開発及び製造販売
2)二酸化炭素の排出処理に関する研究開発事業
3)緑化事業プロジェクトに関する業務
4)生分解性ポリマー、バイオマス等の環境循環型素材並びに同素材製品の研究開発及び製造販売
5)産総研と共同研究の実施による新規な植物成長剤(材)の開発
・住所:岐阜県美濃市曽代下カヨカ66
TEL:0575-33-3088 FAX:0575-33-4489
・資本金: 1,000万円
・設立:平成14年9月10日
・代表取締役社長 景山 英治