産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2003/03/04

グリッド技術に関する国際的標準化会議(GGF)を日本で初めて開催
-グリッド基盤ソフトウェアの標準化ワーキンググループを立ち上げ、日本から情報発信-

ポイント

  • これまで欧米地域で開催されてきたグリッド技術に関する国際的標準化会議(GGF)の日本における初開催を実現
  • 新しい標準化ワーキンググループ(WG)の設立を提案し、産総研グリッド研究センターを中心とした日本のグリッド技術を世界に向けて情報発信する

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)グリッド研究センター【センター長 関口 智嗣】は、様々なグリッド技術の研究開発とその標準化に取り組んでいます。この度、産総研を始めとする日本におけるグリッド研究コミュニティの貢献が高く評価され、「グリッド技術に関する国際的標準化会議(GGF:グローバル・グリッド・フォーラム)」の日本初開催【GGF7:2003.03.04-07新宿京王プラザホテル】が実現しました。( 産総研はGGF7を共催しています )

 GGFは、アメリカ、ヨーロッパ、そしてアジア太平洋地域におけるグリッドのコミュニティが一堂に会し標準化活動を行う場として、2000年11月に設立されました。年に3回行われる国際会議は、これまで北米、およびヨーロッパで400~900名の参加者を集めて6回開催されています。今回、7回目にして初めて日本で開催された理由は、当センターの研究員を始めとする日本の研究者が早い時期からグリッド技術への取り組みを進めていたことと、近年のグリッド技術開発に対する貢献が高く評価されたためです。

 産総研グリッド研究センターでは、グリッド・クラスタ連携技術、基盤ソフトウェア、アプリケーションなどグリッド技術の幅広い分野における研究開発と、その標準化に向けた活動を進めています。本国際会議(GGF7)においても、新しい標準化ワーキンググループ(WG)の設立を目指すほか、その他のWG、プレナリセッション、ワークショップ、チュートリアルでの講演や議論を予定しています。

図 産官学が連携して進めるグリッド技術の世界的標準化
 

産総研におけるグリッド研究のアクティビティ

 産総研研究者のグリッド技術に関する研究内容と、今回の会議で予定されている活動は以下のとおりです。

■グリッド基盤ソフトウェアNinf-G
 「遠隔地の高性能計算機に計算を依頼する」というモデル(Grid-RPC)に基づいて、グリッド上で動作するアプリケーションを簡単に作成し、効率良く実行するソフトウェアNinf-Gを開発しています。
GGF7では、グリッド基盤ソフトウェアの国際的標準化を目指し、日本発のWG設立(BOF - GridRPC)を提案しています。また、ソフトウェアNinf-Gの利用方法についてチュートリアルを開催し、我々の成果の普及を促進します。

3/4 13:30-17:30 Tutorial 3 _ GridRPC
3/5 14:00-15:30 WG - User Program Development Tools for the Grid (UPDT)
3/5 19:30-21:00 BOF _ GridRPC
    *BOF【Birds-of-a-Feather】:GGF内でのWG発足のための準備会合
3/6  8:00-13:00 Workshop - Portals Manifesto

■グリッドテストベッドApGrid
 アジア太平洋諸国の研究機関が自由に参加可能なAsia Pacific Partnership for Grid Computing (ApGrid)と呼ばれるコミュニティを設立して、グリッド技術の国際的な研究開発の促進を図っています。ApGridの目的は、(1)知識、資源、技術の共有 (2)研究成果の相互融合 (3)アプリケーションの研究開発者に対するグリッド利用のサポートと促進 (4)研究交流の場の提供による新規プロジェクトの創出 にあります。
 GGF7では、テストベッドの構築実績に基づいて、運用方法、セキュリティ、資源管理などに関わるグリッドの国際的標準化に貢献しています。

3/4  8:30-12:30 Tutorial 9 - How to Build a Grid
3/5 16:00-17:30 WG - Certificate Authority Operations (CAOPS)
3/6 18:00-19:30 WG - Production Grid Management (PGM)

■グリッドアプリケーション■
 グリッド環境を利用した様々なアプリケーションの開発にも取り組んでいます。
GGF7では、量子化学計算、気象予報プログラムなどの開発事例をWorkshopで紹介します。

3/6 14:00-19:30 Workshop - Applications

■グリッドデータファームGfarm
 大規模なデータを複数の拠点で協調して解析するグリッド技術「グリッドデータファーム」を研究開発しています。素粒子物理学、天文学、バイオインフォマティクスなどの科学技術分野の他、電子政府・電子商取引などビジネス分野においても活用が期待されるファイルシステムです。
 GGF7では、データのアクセス、複製、転送技術に関わるグリッドの国際的標準化に貢献しています。

3/5 12:00-13:30 WG - Data Access and Integration Services (DAIS)
   16:00-17:30 同上
3/5 18:00-19:30 RG - Persistent Archives (PA)
3/5 19:30-21:00 BOF - OGSA Data Replication Services (OREP)

※ なお、会議のプログラムは直前まで変更になる可能性があります。

用語の説明

◆グリッド
次世代インターネット技術として、計算資源、データベース、実験装置、個人携帯端末等を柔軟に安全に共有し問題を解決するための技術のこと。グリッドは元来、電力網(パワーグリッド)に由来する言葉で、電力網により経済的で安定した電力の供給が可能になり電力というサービスを得られるようになったことと同様に、計算資源、ディスク資源などに対する経済的で安定したアクセスを可能とすることにより計算サービス、データベースサービスなどを安全に得られるようにするための基盤技術である。[参照元へ戻る]
◆GGF:Global Grid Forum
グリッド技術に関する国際的標準化団体、およびその団体が開催する国際会議[参照元へ戻る]