国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下、「産総研」という)知能システム研究部門【研究部門長 河井 良浩】スマートコミュニケーション研究グループ 小島 一浩 研究グループ長は、株式会社ミサワホーム総合研究所とともに「つながる住宅環境における協調的複数システム-電気/電子安全関連システムの機能安全-自立生活支援の観点から」の新業務項目提案を国際電気標準会議(IEC)SyC AALに提案し、承認された。この承認により今後、国際標準の開発が開始される。
開発の結果、この国際標準が成立・発行されると、さまざまなスマート化対応機器・システムが、標準に基づいたリスク分析による安全対策を講じた形で提供され、居住リスクの低減が期待される。
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つながる住宅環境における協調的複数システムの例 |
ガス検知システムと空調システムが自動窓制御システムを介して連携している。ガス検知システムがガスを検知し窓を開ける指令を発し、同時に空調システムが窓を閉める指令を発した場合、自動窓制御システムはどちらの指令を優先するかが事前に決定されていない場合、どのような動作をするのかは一般的に不明。このような複数システムの機能安全に関する国際標準を開発する。 |
近年、スマートホーム分野では、エネルギーマネジメントにとどまらず、IoT(Internet of Things)技術を用いる多様なサービス、例えば高齢者の見守りなどが居住者に提供されつつある。一方で、スマート化対応機器・システムを導入していくと、複数の動作の組み合わせや、周囲の状況などにより、思わぬ不具合が生じる可能性がある。
このようなリスクを低減するため、産総研と株式会社ミサワホーム総合研究所は、経済産業省の委託を受け、「IoT社会実現に向けた住宅設備連携における機能安全に関する国際標準化」について検討を行った。この検討結果を基に、日本がIECに新業務項目提案(NP)を行い、この度承認されたため、国際標準の開発が開始されることになった。
今回の提案は、機能安全に関する基本規格IEC 61508(Functional safety of electrical/electronic/programmable electronic safety-related systems;電気・電子・プログラマブル電子安全関連の機能安全)の原則に従って、スマートホームで同時に動作するさまざまな機器やシステムの機能安全について、規定するものである。
具体的には、居住者の種類に十分配慮しながら、主に次の2つを規定する。
①居住者の種類(高齢者、乳児など)を考慮した安全度水準の定義
②上記の安全度水準を用いたリスク評価の手順
また、今回の日本提案に基づいた国際標準が成立・発行されることにより、スマートホーム分野に関して、次の効果が期待される。
①居住者:居住リスク低減
②製造業者:説明責任に対する保証
③サービス提供者:ビジネスリスクの低減
今後、日本を代表とする国際プロジェクトチームにより、作業原案の開発を行う。
知能システム研究部門 スマートコミュニケーション研究グループ
研究グループ長 小島 一浩 E-mail:k.kojima*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)