独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)が、かねてより「つくばセンター・つくば東」に建設中であった「 MEMSビジネス棟 」がこのほど竣工致しました。
MEMS( Micro Electro Mechanical Systems )とは、日本語では「 微小電気機械素子 」や「 マイクロマシン 」と呼ばれる「 微小な動く機械 」を意味します。本施設は、産総研のMEMSに関わる研究ポテンシャルと技術シーズを産業界の技術やニーズに連携させ、MEMS分野における産学官の頭脳の結集や連携強化、創造的な人材の育成を期すための施設であり、今後、MEMS研究開発の中心拠点のひとつとして積極的に運用してまいります。
これまでに実用化されたMEMS技術としては、自動車・医療用の各種センサやインクジェットプリンタヘッド、反射型のプロジェクタ等が知られています。今後、MEMS技術を利用した様々なセンサやアクチュエータが開発されることによって、光通信・モバイル機器への応用、計算機の周辺機器への応用、更にバイオ分析や携帯用電源への応用へと展開することが期待されており、MEMSは我が国の産業に活力を与える次世代産業と位置づけられています。
我が国の製造業の競争力を増すには、開発のスピードを強化するとともに、すぐにはまねできない独自技術、特に研究開発に長期間を要する材料技術の強化の必要性が指摘されています。産総研では、シリコンに加え、これまで独自に培ってきたガラスやカーボンの「3次元微細加工技術 」、センサやアクチュエータに用いられる「 高機能薄膜材料技術 」を駆使して、産業界との連携を更に密にし、次世代のデバイスをスピーディーに開発してまいります。主な開発テーマとしては、次世代の高周波通信で用いられる「 RF-MEMS 」、光通信、情報提示素子用の「 光MEMS 」、バイオ分析で用いられる「 流体MEMS 」等が挙げられます。これらは我が国の工業製品を高機能化し、大きく差別化するための技術として大きな期待を集めているものです。
くわえて、本施設では、とかく技術者の層が薄いために実現できなかった他分野へのMEMSの応用を目指して「 高度で創造的な技術者の養成 」にも寄与する所存です。
本施設の主な設備は、ナノ領域の加工ツールである「 高加速電圧電子線描画装置 」、段差等を有する構造上に高い精度でパターンを描画する「 MEMS専用長焦点深度ステッパ 」、MEMSで多用される「 高アスペクト比ICPエッチング装置 」、ナノ構造を工業的に安価に製造する「 ナノインプリント装置 」から構成されています。また、これら特色ある装置群に加え、通常、MEMSで用いられる「 加工装置群 」「 計測装置群 」もオールインワンで使用できる環境を整えて産業界の研究開発ニーズに応えて参ります。