産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2024/01/01

2024年 年頭ごあいさつ

年頭所感の石村理事長画像
 

あけましておめでとうございます。
本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

平素は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の活動にご理解とご協力を賜り、誠にありがとうございます。

昨年は、ChatGPTに代表される生成AIが世の中に一気に広がり、世界が生成AIに沸き立った一年でした。ただ、普及と同時にそのリスクも明らかになってきました。国際的なルール整備に加え、透明性が高く安心して利用できるAI技術の開発が望まれています。また、量子技術への注目も集まり続けています。デジタル社会を刷新する可能性を秘めた量子コンピューターをいち早く実用化するため、世界中で開発競争が激化しています。半導体を取り巻く状況もAIの急速な普及や経済安全保障情勢を背景に大きく様変わりしました。海外企業の国内誘致のみならず、次世代半導体の国産化への挑戦が始まっています。

産総研は、これらAl、量子、半導体を国家戦略に基づく主要重点課題と位置付け、新たな拠点設立や主要機関との連携により体制を強化して研究開発を推進しています。昨年7月に「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)」を、10月には「先端半導体研究センター」を設立しました。今年は、産総研のもつ日本最大のAI学習用計算インフラ「ABCI」の大幅な拡張も予定しています。また、AI技術自体の高度化のみならず、それを所内の他分野の研究に応用して効率を飛躍的に向上させるプロジェクトを進めています。今後も、幅広い研究者がそろう総合研究所の強みを生かした先駆的研究をさらに強化し、社会からの期待に応えます。

研究成果の社会実装も、新たな局面を迎えています。私たちは昨年、新法人「株式会社AIST Solutions」を設立しました。産総研の社会実装機能を強化したAIST Solutionsは、現在六つの事業分野において、社会課題起点の事業構想や企業との共同研究を進めています。今年は、連携の大型化を推進するとともに、プロデュース事業も具体的に展開していく予定です。中でも「ABCI」や温室効果ガス排出量把握のためのインベントリデータベース「IDEA」など、産総研のもつ優れたインフラをAIST Solutionsのマーケティング力と掛け合わせることで、新たなビジネス価値の創出に貢献します。また、大きな成長が期待できる企業を組織的に支援する認定制度「AISolスタートアップ」を創設し、数社へのサポートを始めています。今年も、さらなる新事業の創出に取り組んでまいります。

私たちは、日本の中に次々とイノベーションが生み出される仕組み「ナショナル・イノベーション・エコシステム」を構築すること、2030年度以降に自らがその中核となることを将来像としています。イノベーション創出の鍵は、言うまでもなくDiversity(多様性)です。さらに、多様な人材を結集するだけでなく、Equity(公平性)、Inclusion(包摂性)への配慮が十分になされてこそ、多様性はその真価を発揮します。そこで本日付けで、従来の人事部を「DEI人事部」に改組しました。ここでは全研究領域における修士型や女性研究職の採用、総合職等の経験者採用、さらにエンジニアリング専門人材の獲得といった、いままでの産総研に薄かった層の拡充を図ってDEIを確保します。同時に、一人ひとりのパフォーマンスの最大化にも取り組みます。

産総研は今年、第5期の最終年度を迎えます。これからは、これまで行ってきたさまざまな改革を花開かせ、ナショナル・イノベーション・エコシステムのプロトタイプの構築という目標の達成、さらには私たちのミッションである社会課題解決と産業競争力強化に向けて歩みを進めるフェーズです。今年が産総研にとってさらなる成長の年になるよう、役職員一同、尽力してまいります。

最後に、皆様方のご健康とご多幸を祈念いたしますとともに、今年も産総研の活動にご支援、ご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。