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お知らせ記事2023/02/28

海底地形にゴジラの名前!?
-フィリピン海プレート上の巨大メガムリオンの掘削の実現に向けて前進-

本研究のポイント

  • フィリピン海プレート上の海底地形である巨大メガムリオンにゴジラの名前が付けられた。
  • ゴジラメガムリオンは、海底拡大時に形成された地球上最大の深海底のドーム状地形。
  • 国際深海科学掘削計画(IODP)でゴジラメガムリオンの掘削提案が科学評価委員会を通過し、掘削の実現に向けて一歩前進した。

概要

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院環境学研究科の道林 克禎 教授、小原 泰彦 客員教授らの研究グループは、国立研究開発法人産業技術総合研究所・海洋研究開発機構などと共同で、東京から約 2,000 km 南のフィリピン海プレート上の深海底にある、地球上最大のメガムリオンであるゴジラメガムリオンの掘削提案書を国際深海科学掘削計画(IODP)に提案していましたが、今般、IODPの科学評価委員会において同提案書の学術的価値が高く評価され、掘削船運用委員会に提出されることになりました。これにより将来的なゴジラメガムリオンの科学掘削の実現に向けて一歩前進しました。

ゴジラメガムリオンの掘削計画では、バックボーン海膨と北テール海膨において、掘削によるはんれい岩やかんらん岩などの深成岩の回収を目的とし、フィリピン海プレートの形成過程への理解が進むことが期待されます。

研究背景と内容

メガムリオンとは、海底拡大に伴う大規模な正断層によって、海底面にマントル物質などが露出したドーム状の地形の高まりで、その表面に畝状の構造を持つことが特徴です。ゴジラメガムリオン地形区は、東京から約2,000 km南のフィリピン海プレート上にあり、2001年、日本政府による大陸棚画定調査の際、沖ノ鳥島南東方で発見されました。その大きさは、東京都の面積の約3倍、他のメガムリオンの約10倍もあり、現在見つかっているメガムリオンの中では地球上最大のものです。そのため、その巨大さから、東宝の映画の怪獣「ゴジラ」の名が引用され、命名されました。

ゴジラメガムリオンは、この地形区内の特徴的な海底地形を対象に、同地形区をゴジラの身体に見立て、腕(アーム)、脚(レグ)、尾(テール)等、ゴジラの身体の部位の名称が付与されています。これらの名称は、世界の海底地形名を標準化するための海底地形名小委員会においてゴジラメガムリオン地形区として承認されました。

ゴジラメガムリオン地形区は、海洋科学において非常に重要な研究対象です。道林 克禎 教授と小原 泰彦 客員教授は、これまでに産業技術総合研究所や海洋研究開発機構をはじめとした国内外の研究機関と共同研究を進めており、フィリピン海プレートの組成・構造に関する重要な研究成果を得てきました。 それらの成果をふまえて、2018年にゴジラメガムリオンを掘削する科学提案書を国際深海科学掘削計画に提出し、科学評価委員会による審査が継続していました。今般、2023年1月に開催された科学評価委員会において本提案の学術的価値が認められ、高い評価で受理されて掘削船運用委員会へ提出されることになりました。ゴジラメガムリオンの掘削提案では、バックボーン海膨(図のGM-02A)において720 mまで、北テール海膨(図のGM-05A)において250 mまで掘削して、フィリピン海プレートの深部物質の回収を目指しています。これによりフィリピン海プレートの形成過程の理解が進むことが期待されます。

図 ゴジラメガムリオン地形区の掘削候補地点

本研究は、日本学術振興会、産業技術総合研究所、海洋研究開発機構、東京大学大気海洋研究所の支援のもと、名古屋大学の主導により行われたものです。

用語説明

国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)
平成25年(2013年)10月から開始された多国間科学研究共同プログラム。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、米国(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を推進している。国内の窓口として、大学と国立研究機関が中心となって設立された日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)が、地球掘削科学の推進や各組織・研究者の連携強化を目的として活動している。[参照元へ戻る]
科学評価委員会(Science Evaluation Panel)
国際深海科学掘削計画の下に設置された、科学掘削の提案書の学術的価値を評価するための委員会。ここで受理された提案書は、上位委員会である掘削船運用委員会へ提出され、実行可能な掘削提案が選抜され、運航計画に組み込まれる仕組みとなっている。[参照元へ戻る]
海膨
周囲の海底から緩やかにかつ全体としてなだらかに隆起している幅広い高まり。地形の規模や成因に関係なく形態で名付けられる。[参照元へ戻る]
海底地形名小委員会
国際水路機関とユネスコ政府間海洋学委員会によって共同で設置された、世界の海底地形名を標準化するための学術的な委員会。世界の海洋底に分布するメガムリオンの中で、その名称が本委員会からの承認を受けて国際的に登録されたのは、このゴジラメガムリオン地形区が初めて。(※海上保安庁プレスリリース参照)。[参照元へ戻る]

※海上保安庁のプレスリリース
ゴジラメガムリオン地形区:https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/kouhou/r4/k220106/k220106.pdf
ゴジラメガムリオン地形区内の各部の名称:https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/kouhou/r4/k230214_1/k230214_1.pdf

掘削提案書

雑誌名:IODP Proposal
論文タイトル:The nature of the back-arc basin lower crust and upper mantle at the Godzilla Megamullion
著者:Ohara, Y., Michibayashi, K., et al.
https://www.iodp.org/docs/proposals/725-941-full2-ohara-cover/file
(Web公開されているのは2020年時点の提案書の表紙のみ)

本件問い合わせ先

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
広報部 報道室
〒305-8565 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第1
E-mail:hodo-ml*aist.go.jp(*を@に変更して使用してください。)