国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院環境学研究科の道林 克禎 教授、小原 泰彦 客員教授らの研究グループは、国立研究開発法人産業技術総合研究所・海洋研究開発機構などと共同で、東京から約 2,000 km 南のフィリピン海プレート上の深海底にある、地球上最大のメガムリオンであるゴジラメガムリオンの掘削提案書を国際深海科学掘削計画(IODP)に提案していましたが、今般、IODPの科学評価委員会において同提案書の学術的価値が高く評価され、掘削船運用委員会に提出されることになりました。これにより将来的なゴジラメガムリオンの科学掘削の実現に向けて一歩前進しました。
ゴジラメガムリオンの掘削計画では、バックボーン海膨と北テール海膨において、掘削によるはんれい岩やかんらん岩などの深成岩の回収を目的とし、フィリピン海プレートの形成過程への理解が進むことが期待されます。
メガムリオンとは、海底拡大に伴う大規模な正断層によって、海底面にマントル物質などが露出したドーム状の地形の高まりで、その表面に畝状の構造を持つことが特徴です。ゴジラメガムリオン地形区は、東京から約2,000 km南のフィリピン海プレート上にあり、2001年、日本政府による大陸棚画定調査の際、沖ノ鳥島南東方で発見されました。その大きさは、東京都の面積の約3倍、他のメガムリオンの約10倍もあり、現在見つかっているメガムリオンの中では地球上最大のものです。そのため、その巨大さから、東宝の映画の怪獣「ゴジラ」の名が引用され、命名されました。
ゴジラメガムリオンは、この地形区内の特徴的な海底地形を対象に、同地形区をゴジラの身体に見立て、腕(アーム)、脚(レグ)、尾(テール)等、ゴジラの身体の部位の名称が付与されています。これらの名称は、世界の海底地形名を標準化するための海底地形名小委員会においてゴジラメガムリオン地形区として承認されました。
ゴジラメガムリオン地形区は、海洋科学において非常に重要な研究対象です。道林 克禎 教授と小原 泰彦 客員教授は、これまでに産業技術総合研究所や海洋研究開発機構をはじめとした国内外の研究機関と共同研究を進めており、フィリピン海プレートの組成・構造に関する重要な研究成果を得てきました。 それらの成果をふまえて、2018年にゴジラメガムリオンを掘削する科学提案書を国際深海科学掘削計画に提出し、科学評価委員会による審査が継続していました。今般、2023年1月に開催された科学評価委員会において本提案の学術的価値が認められ、高い評価で受理されて掘削船運用委員会へ提出されることになりました。ゴジラメガムリオンの掘削提案では、バックボーン海膨(図のGM-02A)において720 mまで、北テール海膨(図のGM-05A)において250 mまで掘削して、フィリピン海プレートの深部物質の回収を目指しています。これによりフィリピン海プレートの形成過程の理解が進むことが期待されます。
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