産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2023/01/01

2023年 年頭ごあいさつ

年頭所感の石村理事長画像
 

あけましておめでとうございます。
本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

平素は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の活動にご理解とご協力を賜り、誠にありがとうございます。

年頭にあたり、まずはいまなお続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により健康被害にあわれた皆様、また、この全世界的な流行に伴う経済・社会活動の停滞によりご苦労されているすべての方に、心からお見舞いを申し上げます。

2019年から始まったCOVID-19のパンデミックは、その勢いをさらに強め、昨年は日本国内で過去最大の感染者数を記録しました。一方で、ワクチンの普及などにより致死率は低下し、本格的な「ウィズ・コロナ」時代の在り方が模索された年でもありました。適切な対策を講じた上で、社会の機能を回復させていく試みが、世界的にも多く見られました。 産総研では、パンデミックを取り組むべき社会課題の一つと位置づけ、さまざまな技術を社会に提供しています。人々の安全・安心のためには、科学的なエビデンスに基づく対策が不可欠です。たとえば、産総研の群衆シミュレーション技術やリスク評価技術は、Jリーグやプロ野球などのスポーツ観戦の現場で観客の安全確保に活用されています。

また昨年は、国際秩序が大きく揺るがされた年でもありました。ロシアによるウクライナへの侵攻は、その地で暮らす人々の生活を破壊するのみならず、サプライチェーンの分断と制裁の応酬を引き起こし、世界的な経済活動に深刻な打撃を与えました。石油・天然ガスなどのエネルギー、半導体などの戦略物資、量子コンピューターなどの先端技術を確保する手段は、経済安全保障の観点から抜本的な再検討を迫られています。志を同じくする国家同士の連帯がこれまで以上に重要性を増しています。
国立研究開発法人である産総研は、政府と綿密に歩調を合わせつつ、世界規模の課題解決への貢献と経済面で互恵的な関係を築ける国際連携を戦略的に推進します。

このように、2022年も新たな課題が噴出した一年でしたが、私たちは、「社会課題解決」をミッションの一つに掲げる国立研究開発法人として、いますべきことを着実に進めてきました。

その一つの結実が、新組織「社会実装本部」の設立です。私たちが目指す「社会課題解決」と「産業競争力の強化」は、産総研だけで辿り着けるものではありません。研究成果を製品やサービスの形で社会実装することではじめて達成できます。この意味で、社会実装は私たちのミッション達成のために不可欠な、そしてより強化が必要な機能といえます。
こうした事情を背景に、昨年7月に最高執行責任者直轄の組織として社会実装本部を設置しました。これまで産総研は「研究」と「運営」の二本柱の組織体制を組んできましたが、ここに三本目の柱が立ち上がりました。産総研に分散していた社会実装の機能をこの組織に統合するとともに、社会実装の加速に必要な「事業構想」、「実証プロジェクトの実施」、「組織取組型スタートアップの推進」の3つの新機能を導入しました。

そしてこの社会実装本部は、今年4月、さらに大きく飛翔します。上の3つの新機能をはじめとする企業と産総研との連携におけるコアの部分を、産総研から独立した新たな法人とします。研究成果を確実に社会実装へとつなげるには、研究の専門家だけでなく、マーケティングなど必要な分野のプロフェッショナルを集めて速やかにチームを編成する機動力が必要です。外部法人として独立させることで、さまざまな制度上の柔軟性を確保できます。この新法人と産総研の一体的な連携により、社会実装の実効性が格段に高まることが期待されます。行政機関の一部ではなく民間の立場となった外部法人が、日本社会にイノベーションを生み出す推進役として十分に機能を発揮できる体制を構築します。

産総研は、日本のなかに継続的にイノベーションを生み出す仕組み、「ナショナル・イノベーション・エコシステム」を早期に実現し、自らがその中核となるべく、革新的な技術シーズの社会実装に、よりいっそう踏み込んでいきます。
私たちはいま、外部法人の設立も含め、新たな成長期にあります。第5期中長期目標期間を超えて、事業を質・量ともに大幅に拡充することを経営方針の目標に据えています。そのためには、研究職や総合職の拡充のみならず、実証研究を支えるエンジニアやマーケティングの専門家をはじめ多様なスキルをもった人材の採用・育成が必要です。すでに、そのための人事制度改革にも取り組んでいます。これからも、私たちの価値観に共感し、ともに挑戦してくれる仲間を増やしていきます。

刻一刻と変化し続ける世界情勢のなかで、日本の社会にとってより良い形を探りながら、産総研はこれからも変わり続けていきます。私たち産総研のビジョン「ともに挑む。つぎを創る。」は、外部法人を含んだ私たちの新たな姿、「産総研グループ」全体のビジョンでもあります。今年は、共通のビジョンをもつ2つの組織を両輪として社会実装をいっそう加速させる年にしたいと思います。

最後に、皆様方のご健勝をひとえに祈念いたしますとともに、今後とも産総研の活動にご支援、ご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。