新型コロナウイルス感染による影響が続く中、安全にイベントなどを開催するために、さまざまな取り組みが続けられております。特に東京ドームのような大規模施設におけるイベントには、一度に多くの観客が集まることから入場者数、マスク着用の有無、入退場時の人の滞留の程度、応援方法の違いなどが感染予防の効果に影響します。これらの対策が適切な効果を発揮するためには、対策の実施状況把握(例えば、人の滞留が生じていないか、マスクが着用されているか)が重要ですが、人の目では人の滞留の程度やマスク着用率などを定量的に把握することは困難です。
これまで、産業技術総合研究所(以下「産総研」という)では、さまざまなプロスポーツの球場、スタジアム、アリーナなどにおいて、観客・選手やスタッフの感染予防のための調査を進めてきました。
これまでの知見を生かして、2021年度のプロ野球の開幕に際して、読売新聞社、読売巨人軍、東京ドームと連携し、東京ドーム内にカメラ、レーダー等を設置し、入場者間の平均距離、マスクの着用の有無、応援方法などの行動、ロッカーなどでの選手・スタッフの社会的距離を把握、また、東京ドームに設置するCO2濃度計測器のデータを活用し、東京ドーム内のCO2濃度の変化などを評価することで、東京ドームが実施している対策の効果を評価してまいります。
産総研が蓄積してきた知識をもとに、東京ドームにおいて継続的に計測を実施することで、東京ドームのどこで人の滞留が発生し、どのように行動しているか、東京ドーム内の各場所における密接、密集、密閉とどのように関係するかの分析や、観客のマスク着用率の時系列変化など、東京ドームが実施している対策の効果を把握します。さらに、継続的に調査を実施することで、試合展開や観客数、開催日、さらに気温や湿度等に応じた密状態や観客行動の違いを把握することが可能となります。
これらの結果から、東京ドーム内の密状態を把握できるようになれば、今後、より安全に大規模イベントを開催するための指針づくりに協力できると考えています。
なお本調査は、エネルギー・環境領域 安全科学研究部門リスク評価戦略グループ、情報・人間工学領域 人工知能研究センター社会知能研究チームおよび地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門地圏化学研究グループの3領域の連携により実施します。
- 人間の領域の矩形。拍手、万歳、ハイタッチなど10種類程度の行動の推定。マスク着用率およびマスク不着用の状況の把握。
- 映像、レーダーなどによる人間の位置。ソーシャルディスタンシング。
- 測定場所のCO2濃度。
- マイクロホンアレイによる観客席の応援状況などを把握。スタジアム環境下では、観客の応援音声だけでなく、鳴り物やアナウンスなどさまざまな音が計測の妨害音として存在するが、このような環境下でのアレイ信号処理の技術的な適用可能性の探索。
処理イメージ:左はレーザーレーダーの点群データの処理例。右はCO2濃度の変化のイメージ図。
個人が特定できない解像度によるカメラ画像を用いることにより顔の認識や個人の特定はいたしません。観客の皆様のプライバシーにかかわる情報や個人のデータを取得することも一切ありません。
また、マイクロホンアレイは、個々の音声ではなく喧騒の計測のために用い、個々の人の声についての音声認識や会話記録は行いません。なお、本研究用途以外に使用することはありません。
本調査をもととした研究成果は、読売新聞社、読売巨人軍、東京ドームと連携して、ホームページなどにて一般の人たちに分かりやすく報告します。 得られた知見は、今後の東京ドームの運営に役立てていきます。
また、詳細な研究成果については論文などで学術的な発表を行う可能性があります。 ホームページや論文などで研究成果を報告する際には個人が特定できないように加工したデータおよび統計情報を利用します。
広報部報道室
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