国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 石村 和彦】(以下「産総研」という)が実施している、中型自動運転バスによる実証実験※1(大津市:京阪バス株式会社※2)において、2020年8月30日(日曜日)14時43分ごろに滋賀県大津市島の関で発生した、歩道柵の支柱とバスの左前部に張り出したセンサーカバーが接触した事案の原因調査結果と対策についてお知らせします。
発生事案と状況
- 2020年8月30日、びわ湖大津プリンスホテル 14時30分発の便において、発車後に大津駅に向かってUターンするため右旋回する箇所で、車体左前のセンサーカバーが歩道柵の支柱部分に接触した。同便への乗客は4名。けが人なし。
- 極低速の自動運転での転回中、転回の完了前に歩道柵との間隔が狭くなるとドライバーが判断し、操舵およびブレーキ操作の手動介入をした。手動運転への移行後、ドライバーは歩道柵との接触が回避できると判断し微速前進したが、接触に至った。
- ドライブレコーダーの映像と制御記録から、ドライバーは接触の約8秒前から操舵とブレーキの手動介入をし、手動運転への移行は問題なく行われていた。なお、GPSは設計範囲内の精度であり、自動運転システムにも異常は認められなかった。
要因分析
- 自動運転のままでは、歩道柵と接触するおそれがあると考えられたため、ドライバーの判断で接触の約8秒前から操舵とブレーキの手動介入をし、手動運転への移行後、極低速(4㎞/h~ほぼ0㎞/h)でミラー等で確認をしながら運転していたものの、最終的には車幅感覚の判断ミスが原因で接触したと考えられる。
- 加えて、当該箇所は、車両の旋回性能を概ね最大(操舵量がほぼ最大)に発揮しないと曲がり切れず、また「曲がる途中」「曲がり終わり」の2か所で、構造物に接近する箇所があるため、手動運転であっても慎重な対応が必要な箇所を、自動走行ルートとして設定していたことも原因と考えられる。
- 本車両では、機械保護のためと、操舵の手動介入代(しろ)を確保するため、自動運転制御上の操舵量の限界値は、車両の操舵量の限界値より若干小さくしている。
- 走行軌道は、当該箇所についても構造物への余裕を考慮した上で設定しているが、位置情報や制御の誤差の状態によっては自動運転制御上の操舵量の限界値でも余裕が不足するような軌道がまれに発生していた。当該箇所で本事案と同様に歩道柵接近のため手動介入したケースは、介入記録からは約4/400回の頻度であった。本事案についてドライバーは接触の約8秒前から車両の操舵量の限界値まで手動介入を行ったが、車幅感覚の判断ミスに起因し、曲がり切ることができず接触に至った。
- なお、当該車両に搭載しているセンサーでは、走路上の車や人は検出・制動するものの、走路外の歩道柵や縁石といった構造物を検出して制動させる機能は搭載していない。また、手動介入中は障害物の検出・制動が機能しない仕様である。
対策
- 大津市の実証地域において、車両と周辺の構造物との距離に余裕が少ない箇所や操舵量の大きい箇所など、車両周囲の余裕距離を考慮して「注意箇所」区間を設定し、当該区間は手動での運転を行うこととする。
- なお、「注意箇所」に関しては、「①空間的余裕の確保が難しい」、「②操舵量が大きい」の2つの観点と、これまでのバス事業者の運行経験に基づく意見等も踏まえて抽出した。
今回の事案では、乗客の皆様、近隣の方々などに多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。今後、このような事案が発生しないように、対策の徹底やシステムの改善に努め、大津市での実証実験の再開に当たっては、「注意箇所」の対応等についてドライバー教育や訓練等が実施されているか等、十分な安全対策がとられていることを確認することといたします。
※1:経済産業省および国土交通省の「高度な自動走行・MaaS等の社会実装に向けた研究開発・実証事業:専用空間における自動走行などを活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」の一環で、産総研が幹事機関として受託しているものです。なお、実証における中型自動運転バスは、先進モビリティ株式会社が産総研からの再委託を受け、中型路線バスを改造し、自動運転化(レベル2)を行ったものです。
※2:大津市、京阪バス株式会社は、中型自動運転バスによる実証実験に係る共同申請者として、2019年10月16日に他の4事業者と共に選定され、本実証は京阪バス株式会社と産総研との役務契約に従って実施しております。
大津市での中型自動運転バスの実証走路と事案発生箇所
本件に対する問い合わせ先
広報部 報道室:佐々木
電話:029-862-6216
関連:産総研公式HPにおける本事案の掲載URL