国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)物質計測標準研究部門【研究部門長 高津 章子】計量標準基盤研究グループ 齋藤 剛 研究グループ長、渡邊 宏 主任研究員、松山 重倫 主任研究員は、産総研がインターネットで無料公開している有機化合物のスペクトルデータベース(SDBS,https://sdbs.db.aist.go.jp)をリニューアルし、本日より公開いたします。スペクトルデータとは、有機化合物などを各種の分光学的手法で測定したデータのことで、主に化合物の構造解析や同定に用いられています。リニューアルしたSDBSでは、登録されたすべての化合物の情報とそのスペクトルデータに、URLをワンクリックするだけでアクセスできるランディングページを設置し、データベース内の情報へのアクセスが大幅に容易になりました。
産総研は、1997年にSDBSをインターネット上で公開し、有機化合物の分析(識別・同定)などのために参照できる信頼性の高い標準スペクトルデータを提供し、現在もデータの追加・更新を継続しています。公開以来、全世界から6億8千万件を超えるアクセスがあり、研究開発や製造業などでの品質管理から高等教育までを幅広く支える基盤的なデータベースとして利用されています。これまで、SDBSでスペクトルデータなどデータベース内の情報を見るには、SDBSのトップページから免責事項に同意し、まず化合物を検索してから、そこに登録されたスペクトルデータを表示させる一連の手順が必要でした。また、この手順を省略できないため、一度閲覧したことがあるスペクトルデータであっても、その情報を他の人と簡便に共有する方法がありませんでした。
今回のリニューアルでは、SDBSに登録された約3万4千件の化合物と、これら化合物の約11万件のスペクトルデータごとにランディングページを設けることで、スペクトルデータへのアクセスのしやすさを大幅に向上させました。ランディングページのURLを知っていれば、目的のスペクトルデータへ直接アクセスできるため、スペクトルデータを簡単に参照、引用できるようになり、他の人と情報共有しやすくなりました。また、ランディングページを通じて、外部検索エンジンへ化合物とスペクトルデータの情報提供も開始しました。これによって、例えば、外部検索エンジンで化合物名とスペクトルの種類を検索することでSDBSのランディングページが見つけられるなど、今までSDBSを見聞きしたことがない方でもSDBSのスペクトルデータにアクセスする機会が増えると予想されます。
今回のリニューアルでスペクトルデータの検索や参照・引用が容易になり、SDBSのスペクトルデータをますます広くご活用いただけると期待しています。
SDBSは産総研が提供するスペクトルデータベースで、登録された化合物に対して最大6種類のスペクトル(※)を収録しています。1980年代(産総研の前身である工業技術院時代)からデータ測定を開始し、1997年からインターネット上で公開しています。現在、全世界で公開されているスペクトルデータベースの中でも古くからあるものの一つです。SDBSは産総研内で評価した多くのスペクトルの画像データと特徴的なピーク、化学シフト値などの数値データを提供しています。その数は現時点で、有機化合物を主とした約3万4千件の化合物の各種スペクトル約11万件に上ります。
SDBSは、インターネット普及の初期の頃から情報発信してきたため、その知名度は高く、国内のみならず全世界からアクセスがあります。2017年度は世界192か国・地域から延べ4225万ページビューのアクセスがありました。企業の研究開発、製造業における品質管理などの現場から高等教育機関まで幅広いユーザーがSDBSを利用しています。
(※)質量スペクトル、赤外吸収スペクトル、核磁気共鳴(NMR)スペクトル、ラマン散乱スペクトルと電子スピン共鳴(ESR)スペクトル
リニューアルしたSDBSでは、同データベースに登録された化合物とスペクトルに対してそれぞれランディングページを公開しました。化合物とスペクトルのランディングページのいずれにも、そのURL、化合物やスペクトル情報の概要、関連情報、免責事項が表示されます。また、ランディングページ上に表示される免責事項に同意する緑色のボタンをクリックすると、データベース内にある、目的の化合物情報あるいはスペクトルデータのページへ移動できます。公開したランディングページの特徴と内容を図1および図2で紹介します。
ランディングページは、外部の検索エンジンの検索結果が示すリンク、論文、Webサイトなどの引用文献、引用データのリンクなど、SDBSの外部にあるリンクをクリックしてアクセスしていただくことを想定しています。
以下にリンクの具体例を示します。
URLはランディングページ上で確認できるので、ユーザー自身がこのようなリンクを貼ってデータの参照、引用に活用していただけます。また、化合物を識別するSDBS番号、あるいはスペクトルデータを識別するスペクトルコードがわかっていれば、ユーザー自身でURLを作成することも可能です。
産総研では、今後も、リニューアルしたSDBSで公開するスペクトルデータの収集や整備を継続します。
今回のランディングページ公開を機会に、日頃SDBSを利用されている皆さまと意見交換、情報交換を行い、さらなる利活用促進方法を検討することを目的とした研究会を本年10月以降に開催する計画です。研究会に興味がある方はぜひこちらをご覧ください:
https://unit.aist.go.jp/mcml/rg-mi/sdbs/