2016年3月18日 (中央ヨーロッパ時間)、国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】生物プロセス研究部門【研究部門長 田村 具博】生物資源情報基盤研究グループ 宮崎 亮 研究員が、スイス ローザンヌ大学 Philipp Engel博士、アメリカ イェール大学 Alvaro Sanchez博士とともに提案した研究課題が、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム (HFSP) の研究グラント (Young Investigator Grant) に採択されました。
HFSPの研究グラントは、生体が持つ複雑な生命現象の解明を目的とする基礎研究を推進するための国際共同研究助成プログラムです。挑戦的かつ独創的で卓越した国際共同研究を助成し、このプログラムの助成の中から多くのノーベル賞受賞者を輩出しており、ライフサイエンス分野において極めて競争率の高いハイレベルな国際研究グラントとして知られています。
2016年度開始分の研究グラントには世界中から871の研究チームの応募があり、厳選なる一次審査で87研究チームが最終選考に残りました。その後、ピアレビューなどによる最終審査を経て、宮崎 研究員、Engel博士、Sanchez博士のチームを含む32研究チームの研究課題が採択されました。宮崎 研究員はこの研究チームの代表者であり、日本人が代表者を務めるチームは、今年は1チームのみでした。同チームには、3年間の研究費として105万ドルが助成されます。
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写真左から、宮崎 亮 研究員、Philipp Engel博士、Alvaro Sanchez博士 |
研究プロジェクトのテーマは「自然生態系における遺伝子水平伝播の影響 (Impact of horizontal gene transfer on natural ecosystems)」です。
細菌のような微生物は、自身の遺伝子を子孫へ受け渡すだけでなく、異なる種の微生物間でも頻繁に交換し合うことが知られています。このような現象は「遺伝子水平伝播」と呼ばれ、微生物に新たな生理機能を付与することから、微生物の進化の大きな原動力であると考えられています。しかし、実際の自然生態系において、どの程度遺伝子水平伝播が起き、それがどれくらい微生物集団の構造や機能に影響を与えるのかは明らかにされていません。
本プロジェクトでは、ミツバチの腸内細菌の一群を研究モデルとして用い、宮崎 研究員が分子遺伝学とイメージング技術を駆使した解析を、Engel 博士が最先端の1細胞ゲノム解析を、そしてSanchez 博士が理論生態学の観点からデータの定量解析とそれを利用した数理モデルを構築します。そして、遺伝子水平伝播が微生物集団に与える影響をかつてない精度で定量的に記述し、複雑な微生物集団の進化生態学的ダイナミクスの解明を目指します。