国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)とエアバス・グループの統合研究開発組織AIRBUS Group Innovations【代表 Sébastien Remy】(以下 「AGI」という)、フランス国立科学研究センター【理事長 Alain Fuchs】(以下「CNRS」という)は、2016年1月1日より、空間的制約が厳しい航空機内において、組立製造作業に当たる産業用ヒューマノイドロボットの技術開発を行うJoint Research Project【共同代表者 森澤 光晴 主任研究員(産総研)、Adrien Escande研究員(CNRS)】 (以下「JRP」という)を開始しました。
JRPは、AGIが日本の機関と初めて行う本格的なロボット工学に関する共同研究です。JRPの主要拠点は、産総研 情報・人間工学領域【領域長 関口 智嗣】に設置された、産総研・CNRSの国際共同研究組織である「AIST-CNRSロボット工学研究ラボ(AIST-CNRS JRL (Joint Robotics Laboratory), UMI3218/RL)」【共同ラボ長 Abderrahmane Kheddar(CNRS), 吉田 英一(産総研)】 で、HRP-2やHRP-4などのヒューマノイドロボットを開発のプラットフォームとして活用します。
航空機の組立製造工程にヒューマノイドロボットを導入すると、作業者を困難な姿勢での繰り返し作業から解放し、高度な技能を持つそれら作業者をより高付加価値な作業に振り向けることができると期待されます。人間に似た体形や構造と多能性を有するヒューマノイドロボットは、人間用に設計された製造環境を変更しなくても、さまざまな作業に対応できると考えられます。
JRPでは、航空機内の狭い空間で全身によって行う組立製造作業に焦点を置き、ヒューマノイドロボットによる機内の加工屑などの掃除機を使った清掃やねじ締め、計器類の取り付けなどの作業、組立後の航空機の検査作業の実現を目指します(写真参照)。このために、これまでAIST-CNRS JRLにおいて日仏共同で開発した、数多くの接触を伴うヒューマノイドロボット動作の計画・制御技術や、産総研のヒューマノイドロボット先端技術である全身制御技術(写真参照)を適用します。さらに、これらを発展させ、空間的制約が厳しく、アクセスが困難な環境でのヒューマノイドロボットの高度な作業を実現するための動作計画・制御のための技術開発を行います。
開発された技術は、将来の現場への導入を目指し、エアバス・グループの民間航空機、ヘリコプター、宇宙など異なる部門から提供される導入想定事例に基づき、毎年検証されることとなっています。また、JRPは、EUプロジェクト枠組みHorizon 2020で実施されている、航空機内におけるヒューマノイドロボットによる移動機能を実現するCOMANOIDプロジェクトとも協力して進めていきます。
共同研究開始を記念し、2月12日(金)に産総研つくばセンターにて調印式を行います。
産総研つくばセンターでは、関口 情報・人間工学領域長、Remy AGI代表、CNRS システム工学部門 (Institute for Engineering and Systems Sciences, INSIS) のJean-Yves Marzin部門長が出席し、調印式を行います。調印式後に、本件に関する取材を個別にお受けすることとします。