発表・掲載日:2009/02/06

経済産業省ライフサイエンス関連プロジェクトのポータルサイトMEDALSの公開

-国家プロジェクト等の研究データを一括して有効活用できる環境に-

ポイント

  • 経済産業省統合データベースプロジェクトの一環として産業技術総合研究所のライフサイエンス分野の成果物も網羅した公開
  • 提供される情報:
    • 経済産業省の支援により構築されたデータベースやツール(1989年以降)などの情報
    • 経済産業省の支援により実施された研究開発プロジェクトの情報

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)バイオメディシナル情報研究センター【研究センター長 嶋田 一夫、研究顧問 五條堀 孝】分子システム情報統合チーム【研究チーム長 今西 規】、社団法人 バイオ産業情報化コンソーシアム【会長 秋草 直之】(以下「JBiC」という)は、経済産業省関連機関が実施したライフサイエンス分野の研究開発プロジェクト(全155プロジェクト)の成果であるデータベースに関して、情報提供ポータルサイト(METI database portal for life science:略称MEDALS[メダルズ])を構築し、2008年10月より一部の情報を先行公開していましたが、このたび、本プロジェクトに関連する産総研内の全ての公開データベースを網羅した便覧が完成し、さらに英語版のポータルサイトを構築しました。これを2009年2月6日より本格的に公開します。


 新規公開内容:
  1. 便覧データは産総研内の主要公開データベースを完全に網羅
  2. 英語版のポータルサイト
 MEDALSへは、http://medals.jpからアクセスできます。
MEDALSのトップページ画像
MEDALSのトップページ

開発の社会的背景

 ライフサイエンス分野では、自身の研究成果を既に蓄積されている研究成果や研究データと対比することにより、新しい仮説を考案する手がかりが得られたり、効果的な治療薬の開発のための発想が得られたりする可能性があります。このため、国家プロジェクト等により産生された研究データを一括して活用できるデータベースが、産業界や社会から要望されています。

研究の経緯

 産総研とJBiCでは「ゲノム情報統合プロジェクト」(2005-2007年度)を実施し、ヒトの遺伝子とタンパク質に関するさまざまな情報の統合データベースを構築してきました。2008年度からは、ライフサイエンス分野における研究開発の促進に資する国内データベースを統合整備してゆくために、経済産業省統合データベースプロジェクトを開始しています。このプロジェクトでは、経済産業省関連のデータベース等の成果物をまとめて利用しやすくするポータルサイト(MEDALS)を構築しています。これは創薬に役立つ化合物データベースまでライフサイエンス分野を幅広くカバーし、医療分野や健康増進といった産業面への貢献を目指しています。本ポータルサイトは、産総研 生命情報工学研究センターと、産総研 糖鎖医工学研究センターの研究協力をうけて、経済産業省統合データベースプロジェクトによって構築されました。産総研は、各成果物の調査や記述内容の確認作業を中心となって行いました。

 また、産総研ではヒトの遺伝子と転写産物を対象とした統合データベースH-InvDB*http://www.h-invitational.jp)の公開(世界的にトップクラスの情報量)をはじめとした遺伝子や分子の情報基盤の提供を行ってきました。これをベースに分子データの統合を進め研究開発の促進をすすめています。

研究の内容

 本ポータルサイトで対象としているプロジェクト成果物は、産総研、独立行政法人製品評価技術基盤機構、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構等におけるデータベースや解析ツールです。文部科学省委託研究開発事業「統合データベースプロジェクト」との連携を鑑みたコンテンツの選定や、産業界での利用に重点を置いたニーズ調査結果を反映した、データベースとツールの分類を行っています。提供するコンテンツは、データベース便覧、ツール便覧、ダウンロードページ(データアーカイブ)、統合データベース集、サイト内検索、MEDALS開発研究ツールの6つです。MEDALS開発研究ツールでは、世界の主要なライフサイエンス分野のデータベースへのリンクを簡単に設定し、自動更新できる「リンク自動管理システム」や、目的分野の論文を自動的に収集する「新規関連文献お知らせツール(PubMedScan)」を公開しています。

 また、現在も各々開発が進行中のデータベースを統合化するために、ウェブサービス*を使ったバーチャルなデータベース統合のしくみを整備しています。統合の基盤となるH-InvDB、糖鎖遺伝子*のデータベース(GlycoGene Database (GGDB)*)および機能性RNA*のデータベース(機能性RNAデータベース (fRNAdb)*)の間を連携するウェブサービスを新規に開発し、全て2009年2月中の公開を予定しています。

今後の予定

 これからも利用者の意見を反映させながら、さらに便覧データ件数を増やし、より利用しやすいポータルサイトとなるよう拡張を進めていきます。また、経済産業省、文部科学省、農林水産省、厚生労働省の4省統合データベースの整備を見据え、ライフサイエンス分野のデータベース統合化事業を実施している文部科学省「統合データベースプロジェクト」とも継続的に連携しつつ研究開発を進めていきます。

問い合わせ

独立行政法人 産業技術総合研究所
バイオメディシナル情報研究センター 分子システム情報統合チーム
研究チーム長 今西 規
TEL:03-3599-8800 E-mail:t.imanishi*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)

独立行政法人 産業技術総合研究所
バイオメディシナル情報研究センター 分子システム情報統合チーム
研究顧問 五條堀 孝
TEL:03-3599-8800 E-mail:t-gojobori*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)



用語の説明

◆H-InvDB
H-Invitational Database (H-InvDB)はヒトの遺伝子と転写産物を対象とした統合データベースです。ヒトのすべての転写産物の配列をあらゆる手法で解析することにより、ヒト遺伝子の構造、選択的スプライシング変異体、機能性RNA、タンパク質としての機能、機能ドメイン、細胞内局在、代謝経路、立体構造、疾病との関連、遺伝子多型(SNP、マイクロサテライト等)、遺伝子発現プロファイル、分子進化学的特徴、タンパク質相互作用、遺伝子ファミリーなどの精査されたアノテーション(注釈付け)情報を提供しています。
(参照 http://h-invitational.jp[参照元に戻る]
◆ウェブサービス
ネットワークを通じてソフトウェアの機能を利用できるようにした技術の総称です。クライアントのウェブブラウザを介することなくサーバー上のサービスにアクセスすることができます。[参照元に戻る]
◆糖鎖遺伝子
糖転移酵素、糖ヌクレオチド合成酵素、糖ヌクレオチドトランスポーター、硫酸基転移酵素などのように、グリカン合成に関連している遺伝子を含む糖鎖合成関連遺伝子を指します。[参照元に戻る]
◆機能性RNA
タンパク質へ翻訳されずに生物学的に重要な機能を示すノンコーディングRNA(non-coding RNA、ncRNA、非コードRNA)を指します。mRNA様の比較的長さの長いncRNAとmiRNA、piRNA、snRNA、snoRNA、scaRNAといった長さの短いncRNAがあります。ncRNAの全てが機能性RNAではありません。[参照元に戻る]
◆GlycoGene Database(GGDB)
産業技術総合研究所・糖鎖医工学研究センターで独自に測定された糖転移反応に関する基質(糖鎖)、acceptor(糖鎖を受け取る分子)、生成物などの情報についてのデータベースです。
(参照 http://riodb.ibase.aist.go.jp/rcmg/ggdb[参照元に戻る]
◆機能性RNAデータベース(fRNAdb)
新規機能性RNAの発見と機能解析を支援し、ゲノム情報の制御関係を解明するための情報基盤となる機能性RNAデータベースです。
(参照 http://www.ncrna.org/frnadb/[参照元に戻る]