発表・掲載日:2005/06/10

関東直下の新しいプレート構造の提案


本文

 5月26日幕張で開催された2005年地球惑星関連合同大会で、従来とは異なる関東直下のプレート構造を提案しました。概要は以下の通りです。詳細については講演要旨をご覧ください。

 従来関東平野北縁にかけて深く沈み込んでいるとされていたフィリッピン海プレートは、実際は東京湾北縁部までしか延びていません(図1)。そのかわり、そのフィリッピン海プレートと太平洋プレートの間にもう1枚プレート(以下、ブロック)が存在します。そのブロックは約100x100km、厚さ25km、深さ30-100kmの範囲で、太平洋プレートに平行に乗った形で分布します(図2)。このブロックの正体は過去に破断され深く沈み込めなくなった太平洋プレートの残存物と考えています(面白いことにブロックと関東平野の形が同じです)。

図1
図1 従来のプレートモデル(左)とここで提案する新しいプレートモデル(右)。それぞれのコンターと数字はプレート上面の深さを示す。

図2
 
東京湾北部では、
 1)沈み込んだ太平洋プレート
 2)ブロック
 3)フィリピン海プレート
 4)ユーラシアプレート
の順でプレートが4枚重なります。
図2 関東直下の新しいプレートモデル
 

 この破断されたプレートは関東直下の地震発生の鍵を握っていると考えています。通常頻繁に発生する茨城県から千葉県北西部を震源とする地震の多くは、このブロックの上面、東端、下面で発生しています(いわゆる「地震の巣」の1つ)。江戸に多大な被害を与えた1855年安政江戸地震(M7.0-7.3)など、関東直下の規模の大きな地震は、このブロックとフィリッピン海プレートもしくは、ブロックと太平洋プレートの接触面から発生した可能性があります(図3)。詳細は現在検討中です。

図3
図3 プレート構造の模式断面図と被害地震の想定震源。従来のモデル(上)と新しいモデル(下)

 プレート境界型地震は通常海域で発生しますが、関東では陸域直下で発生することになります(図4)。また、1枚プレート(ブロック)を余計に挟むことにより、プレート接触面が増え、東北や伊豆以西のプレート境界部分よりも余計に地震が多くなります。また、発生する深さも深くなります。従来プレート内地震と考えられていた地震のいくつかはプレート境界に再解釈される可能性があります(ただし、1987年M6.8千葉県東方沖地震などは従来どうりフィリッピン海プレート内)。

図4
図4 1885年以降のプレート境界型地震の震源の分布(推本、1999)とブロックとの関係。関東地域だけプレート境界型地震が陸域直下で発生する。

 モデルの検証は難しい問題です。地下数10kmの構造を直にみることはできないので、モデルを実証することは基本的に不可能です。ただし、この新しいモデルでは従来複雑な説明を要した現象が、比較的すっきりと説明できます(講演要旨を参照してください)。モデルの正当性は、いかに多くの地学現象を合理的に説明できるかだと思います。

 なお、今後の研究者間での議論や、私自身の再解析・考察によって、モデルが変更・修正される可能性があります。その点はご了承ください。また、国際誌への論文投稿を準備しています。他研究者による審査・批判を受け、論文が最終的に掲載された時点で、再度詳細な点について公表する予定です。現時点で報告書・論文等で引用される場合は以下のように記して頂ければ幸いです。本HP内の図面の無断使用・無断リンクはお断りします(使用を希望される方はメールでご連絡ください)。

●遠田晋次,2005,関東の地震テクトニクス再考:新しいプレート構造の提案,2005年地球惑星関連合同大会要旨CD-ROM。


関連情報

・関東の地震テクトニクス再考:新しいプレート構造の提案 講演要旨(PDFファイル) http://earth2005.jtbcom.co.jp/session/pdf/s045/s045-008.pdf

お問合せ先

遠田 晋次(とおだ しんじ)
s-toda*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)
活断層研究センター